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The killer of paranoid Ⅷ 12

 葵は符術が得意ではない。剣術に特化した修行を行ってきたせいで遠距離でのやりとりとなると少し分が悪くなる。空に浮かぶ大量の式神には手が出せない上に、斬っても斬ってもすぐに代わりが降下して来て、助けた人々に再び憑りつく。ゾンビの様に復活しては式神を除去する作業に没頭する。黒い猫が自分の何倍もの速度で式神を処理してくれたお陰でこの周辺のクリオネは減少傾向にあるものの、まだ終わりは見えてこない。幾つか理解出来た事は建築物を無理矢理破壊しようとはしていない為、建物に避難する事が出来ればある程度の安全は確保出来る。


「妖怪か?何でもいいや。本当に猫の手も借りたかったし」


自分の他にも別の区画で人々を守っている同志が居るのだと思えばこそ葵の刀を握る力も漲ってくる。誰かがゆっくりとこの状況の中で歩いてこちらへ向かってくるのが見え、葵は大声を張り上げた。


「こっちにくるな!!洗脳されるぞ!!どこか建物の中に避難を!!」


「ーーーえ?」


少女の頭上にクリオネが憑りつく。言わんこっちゃないと葵が頭上の式神を斬り伏せた。消滅して向き直ると、赤毛の少女がきょとんとした表情で葵を見る。憑りつかれた人々に囲まれ、頭上の式神を斬って少女の安否を確かめた。自分と同い年くらいの美少女に見える。この状況にも動じておらず、逃げる様子もない。寧ろ今までどうやって無事だったのか疑問でさえある。


「大丈夫か!!」


「大丈夫、ありがとう。でも貴方は?どうして刀なんか持ってるの?動きが凄く早くて吃驚しちゃった」


どうやったの?とまるで手品を初めて見た子供の様な無邪気さ。小さい頃からの地獄の様な修練の積み重ねとしか言いようがない。クリオネが見えているなら一般人とも言い難い。猫の手も借りたい現状葵は少女に声をかける。


「倒れた人を建物の中に一緒に運んでくれないか。この周囲の安全は確保出来ると思う。大分減ってきてると思う」


「ん、分かった。じゃあこの周辺の宇宙人消しちゃうね」


「ん?いやそんな事が出来るなら」


葵は苦労していないと言いかけたその瞬間、少女の髪が赤毛から緑へと変色する。それから、少女は浮遊して空を浮かんだ。葵はぽかんと少女を見上げると外敵に反応したのか少女の周りに無数のクリオネが旋回して警戒してくる。見れば彼女の頭上には、普通の人が1匹に対して、群れで数百匹降りて来ている。それぞれクリオネが懸命に少女を洗脳しようとしているが、上手くいっていない様に見えた。少女が上を見上げて、不敵に笑みを浮かべながら、緑の光を周囲に広げた。無数のクリオネが微弱に緑に光輝いたかと思えば次の瞬間には綺麗に消え去った。一面の青空が目に映る。


「はあああああああああああああああああああああああ!?」


その光景に葵は理解が追い付かず目を飛び出して大声を叫んだ。


ゆっくりと、空から降りて来て少女はにこりと微笑み


「宇宙人は暫く増えないだろうから、これでゆっくり避難出来るね!!」


「ーーーそうだな、うん」


(いや、どう考えても地球外生物はお前の方)


一体目の前の少女が何者なのか思案するよりも先に葵は麻痺した頭を働かせて、二人で倒れた人々を建物の中へと移動させる事にした。



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