The killer of paranoid Ⅷ 6
「陰陽庁の面々には悪ィが、ここは俺に譲っちゃくれねえか。代わりにあの死人の相手も纏めて面倒見てやるよ」
襲い掛かって来た僵尸を拳で殴って吹き飛ばす。勢い良く燃え上がり、すぐ様消滅した。急に現れた人狼に、この場を任せろと言われても困惑している中、銀次を知る上官が拒否した。
「断る。我々にとっては君も侵入者に過ぎん。が、元牙王の肩書を持つ君の実力は知っている。提案だが共闘は出来んかね」
「構わねぇが、巻き込まれて死んでも文句言わねぇならな」
銀次は体を怒りに任せて、全身を赤い人狼へと変化させた。王禅と呼ばれた男は彼にうんざりした様子で悪辣な言葉を返す。彼の言葉の通りに、急にこの場の温度が跳ね上がった。溶岩でも噴出しているかのような熱気に上官も舌を打ち、晴嵐で結界を張って熱波を守り、全員銃を構え直す。
「全く、まだ彼女を救出出来ると思っているんですか。あれから何年経過していると。彼女は今では敬謙な信徒の一人に育っていますよ?早く邪神様と結婚したいとはしゃいでいる程なんですが。独り善がりは嫌われますよ?」
「抜かせ。あいつがそんな殊勝な事言う玉かよ。今でも扱いには苦労してんだろ?たまに従順な振りして脱走したりすんのも数多いんじゃねえか?」
まるで見透かしているかの様に銀次は語った。
「あの時折角拾った命を、ここで捨てる事になりますが」
「あん時ゃ俺も若かったんだよ。お前に媚びを売るくらいにな」
赤い人狼と、王禅の間に緊張が走る。王禅は邪神の力を解放して周囲に黒い靄が発生して呪力を剣の形へ変える。そして尚も尽きる事なく呪力が王禅から発生する。それらが他の死焔の者達にも集まり、不死身ですら厄介な面々が強化されたのが分かる。死焔の一人が後方で結界を張る陰陽庁を狙って邪霊召喚を行った。飛頭番と呼ばれる顔が空を飛ぶ妖怪。それが10頭。結界から射撃を行うも結界を死焔の蹴りで壊され、飛頭番が何名かの肩や足に噛り付いた。悲鳴を上げながら、それでも連携を持って刀や銃で飛頭番を討つ。銀次も提案をした手前飛頭番の半分を炎で焼き殺した。それだけなら済んだが、強化された死焔が止まらない。体術と呪術を織り交ぜた攻撃を繰り出しており、受ければ体に変調を来す。気づけば陰陽庁の人員も負傷者だらけになっており、まともに対応しているのは上官のみとなっている。銀次も王禅との攻防を繰り広げており、剣を振り回している者と、回避しながらその隙を突いて拳や蹴りを繰り出す応酬となっている。
「勝てないと分からせて上げますよ。今の我々には邪神の加護がある」
そう言った矢先、死焔の一人が上官によってアッパーを食らって天井を突き破る。更にそれを引き抜いて、鯖折りを食らわせると骨が歪に折れる音が聞こえて響き渡る。
「舐めるな。かつて巨悪や邪神を討ち滅ぼし、世の為に戦った役小角様。その最強の式神前鬼、後鬼より生まれし5人の一人、五鬼義継の力お見せしよう」




