The killer of paranoid Ⅶ 18
それぞれ、バクの出した足場を通じて巨大な木の魔物に近づいていく。巨大な木が手足を持ち、動き出している。手の部分の指らしき所から枝を生やして、夏樹達に襲いかかってきた。それぞれの武器で応戦して木の枝に対処する。今度は口らしき部分が動くと、夏樹達の周囲に木々が生え、急速に成長して蔓や枝で邪魔をしてくる。
「木の魔物トレントって感じね」
霞の聖騎士が剣で蔓を斬り、優理も鎌で木の枝を伐採する。
夏樹が木々毎ハンマーを叩いて消滅させていく。姫はトレントの枝に捕らわれているのが見える。
「トレ⋯?」
「夏樹は知らないか。にしても大きいわね」
「一気に上から消しちゃう?」
夏樹の提案にバクが難色を示す。
「止めた方がいいっすね。姫さんが中に居る間は巻き込む可能性が」
夏樹のハンマーの威力が高すぎて姫の精神まで消滅させかねない。
「海人君、手を出して!!」
「夏樹はいつでも攻撃出来るように上空で待機してて。私も援護に行ってくる」
「分かった」
優理が箒に乗って空中に浮かび、海人の手を取って真っすぐに捕らわれている
姫の元へと向かう。木の蔓や枝を回避して、霞も援護して枝を盾で防ぎ、斬り伏せる。姫の捕らわれている場所に辿り着くと、海人を残してトレントの顔の前まで一気に飛ぶとランタンで火を繰り出す。巨体が大きく揺れる中、海人は妹の無事を確認する。
「大丈夫か?今助けて⋯⋯!?」
だらんとしていた姫が活発になり木製の人形へと変化し、海人に抱きつき捕らえて来た。霞の聖騎士が剣で薙ぎ払い、海人も聖騎士の肩へと避難する。聖騎士は空中に漂いながら周囲を確認した。
「大丈夫?海人君」
「ありがとう御座います」
「それより、状況が良くないわね」
トレントの体からどんどんと枝が生えて、捕らわれの姫らしき存在が増殖している様に見える。霞にはどれが本物の姫なのか見分けがつかない。
「今度は何?何が起こってるの?」
加えて、地響きが鳴り響いて城や城下町が崩れていく。気づけば世界が赤く染まっていき、夕暮れの様に太陽が沈んでいく。夏樹もトレントの上空で姫の精神世界の崩壊を目の当たりにして異常を感じていた。
「バク、これどういう状況?」
「姫さんがこの状況に耐え切れずに体が瀕死の状況っすな。早くしないと姫さんがこのまま死んでしまう可能性も・・・陽が沈むまでがタイムリミットかと」
バクにそう言われて焦りか思わず手が震える。
世界がガラリと変わり陽が完全に沈むまで10分も無い。
「⋯⋯⋯っ⋯⋯今やれば⋯⋯」
「姫さんもろともの危険があります。助かる可能性もありますが」
姫の精神世界を救うのが先か、姫の体が死ぬのか先か。
思わず唾をのみ込む。待つのは性に合わない。
いつだって行動を起してきた。危機感が夏樹を襲い思わず、焦り始めて眼下を見下ろす。
トレントの枝から派生した姫を模した大量の木製のダミー人形が量産されていた。
霞も、海人も、優理もこの状況に困惑して動いていない。
今トレントを破壊してしまうかの瀬戸際に立たされる。
「姫ちゃん返事して!!お願い!!」
「姫!!僕だ!!どこに居るか何でも良い!!声を聞かせてくれ!!」
「姫ちゃん!!」
3人が上空を飛び回り、トレントの攻撃を回避し、凌ぎながら声を掛け回る。
すると、一斉に捕らわれの姫が動き出して3人を捕らえ飲み込んだ。
「霞ーーーーーーー!!」
陽が沈み始めて世界の崩落が始まる。




