The killer of paranoid Ⅶ 12
浦美を紹介され、彼女が妖怪だと言う事に夏樹と霞は驚く。和服姿の自分より背の低い少女ーーに見える存在。ゲ〇ゲのあれにちなんだ存在とはとても思えない。夏樹の知る妖怪と言えば大抵言葉も話せぬ魑魅魍魎。
「陰陽庁って妖怪を討伐する組織なんだよね?」
「ええ、ですが彼女は妖怪として明治から陰陽庁として働いて貰ってますので」
と、パソコンを携帯から証拠を見せる。
彼女の在籍証明が冗談でも何でもなく明治以降になっている。
「他にも陰陽庁で働く半妖や生粋の妖怪の方はいらっしゃいますよ」
「私は呼ばれた時に、時々力を貸しているの。そうしないと私を狩ってくるから鬱陶しいのよね仕事がやり難いったらなかったわ」
と当時の陰陽庁の手練れを返り討ちに殺してきた事を話す。
「仕事って?」
「死んで尚恨みを果たしたい者の願いを聞き入れ代わりに果たしてあげるの。借金を押し付けられて首を吊った男性に体を貸して押し付けた相手に復讐を果たさせたり、パワハラ上司に鬱になって自殺した女性の代わりに復讐したり。浮気してた事にショックを受けて自殺した女性の復讐に手を貸したり・・・色々ね」
「復讐を果たしたって事は相手も死んでるわよね」
「当然よ」
霞の質問にあっけらかんと答える浦美に唖然となる。
「えぇ⋯」
「言いたい事は分かりますが、彼女は貴重な陰陽庁の協力者です」
「晴野浦美。ウラミちゃんって呼ばれてるわ。私の事は好きに呼んで頂戴」
「にゃあ」
「あら、社長さん。お元気そうね」
「夏樹さん、紹介遅れましたがウチのマスコット兼社長の黒猫の土地神様です。二股の妖怪ですが賢く危険はありませんので」
黒い猫がひょいと椅子に座る浦美の太ももに乗る。にゃあと久しぶりの挨拶を交わして黒猫は満足そうに浦美に背中を撫でられた。
数時間後になり、海人に接触する方向で会議は纏まった。怪盗の少年の持つ人々の思いの結晶であるキューブの返還は必須事項。交渉の際には夏樹、霞、優理、浦美、そして京子で臨む。ただ、代わりの対価を示す事が出来なければ交渉は上手くいくはずもない。国家権力を傘にして無理矢理接収案もあったが夏樹と霞、優理の意見を尊重して京子が却下した。自分達が代わりに何を提示出来るのか悩んだ末誰も思いつく事が出来なかった。京子を除いては。数時間が経過して誰も居なくなった局長の部屋で携帯で連絡を取る。
大きく息を吸ってから、吐く。
それから自分の兄の連絡のボタンを押した。
「もしもし?お兄ちゃん?」
「おお、京子か。何やこんな時間に」
「ちょっと欲しい物があって、お兄ちゃんのカード使わせて貰っていい?」
「もうそんな年頃か。服やろ?分かっとる分かっとる。好きなもん買ってええで。京子が強請るんも珍しいしな」
「ほんと?ありがとう!!」
言質は取ったと口元が緩む。
「いつ買いにいくんや?」
「明日にしようかとは思ってるんだけどね。色々悩んじゃうかな」
ブラックジャックやドクターXはどこに居るのかなと、京子が真剣に悩んでいるのは国内や海外在住の心臓外科医のスーパードクターや権威と呼ばれる者達をピックアプして貰った名簿のリストであった。




