The killer of paranoid VI 8
煙草の煙が空を漂う。ある墓の前で古谷が当時を掘り返しながら、黙祷する。青葉達の事件を思い出していた。古谷に撃たれた凶弾は内臓を傷つける事無く貫通していた。気が付けば見知らぬ天井で、体には手術の後と包帯が巻かれてあった。
「気が付いたかい?」
側には白衣を着た少女が腰かけている。
「何故ここにいるんだって顔だね。あの後どうなったか知りたいだろうと思ってね」
古谷は自分が倒れた後の事を知らされた。自分以外の捜査官は全て死亡。数多の一般人の死者にビルの崩落。しかし何故かニュースにもならない。
「君一人しか救えなかったのは申し訳無い。だがそれでも全滅は免れた。もし彼に相談しなかったら今でも青葉達はこの世に解き放たれていただろう。それだけは確かな事だよ。特に斎藤萌という少女さえいなければ現場があれ程混乱する事は無かったし、青葉を確保出来ていた可能性は十分にあったとも」
「⋯⋯⋯」
「気休めにもならないだろうけど、彼は君たちを信頼してたのさ」
本当に気休めにもならない言葉を貰った後で、彼女が去った後古谷は年甲斐もなく泣き崩れた。当時のメンバーの顔を思い出しては自分の無力さを呪った。後進を育成して見届けた後、捜査1課へ転属。そこでも色々と経験したが、あの一件程の大事件には巡っていない。それでもその事実が世界はまだ平穏なのだと安心も出来た。青葉の拘置所脱走の話を聞くまでは。
「また、あの惨劇を繰り返す訳にはいかない」




