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The killer of paranoid VI 6

テラメアを運営する事務所にノックをして、扉を開ける。すると机に椅子を並べてパソコンで仕事をする男達の姿が見受けられた。


「何でしょうか?営業の方ですか?困るんですよぉ~ちゃんとアポ取って貰わないと」


「呪術捜査官だ。ネットで呪殺の依頼を請け負っているな。それと拘置所での呪殺を被害者遺族から受けている事も分かっている」


「え?何の事ですか。じゅ⋯呪殺?うちはホームページ作成を請け負うベンチャー企業ですよ。何かの間違いでは?」


全員が初めて知った様な反応を見せる。呪術捜査において名乗り出た場合殆どの呪術師が同じリアクションで返してくる。捜査官は札を取り出して、式神を召喚した。白銀の狼が出現して男達の背後に回り込む。表情、視線を式神にしていないかを確認する。複数人が普通の人間には見えぬはずの狼に視線を向けた。


「化かしあいは無理筋ですね」


「ったく、穏便って言葉ご存知ないすか」


青葉がそう言うと、床から影が伸びて明野が呼び出した悪魔の腕が白銀の狼を貫く。捜査官が銃を掲げて発砲しようとしたが、それより早くに青葉の手勢が銃の手を取り発砲した。頭に命中して絶命する。銃声を聞いて扉の付近で待機していた捜査官が慌てて中へと発砲する。


「呪術捜査官の数ってご存知ですか?」


「いやぁ、旦那は知ってるんですかい」


「ええ、近畿と関東を合わせて15名程です。全国に40名。加えて普通の捜査官に呪術捜査官は務まらない」


「ここで返り討ちにしてしまえばってんでしょ?おい、急いで現金とデータの回収だ。すぐにずらかるぞ!!」


扉の傍で銃を構える捜査官が、中に乗り込もうとした刹那に子供が彼の袖を掴んだ。


「何をしているの!?危ないから離れなさい!!誰か、子供が紛れ込んでる!!すぐに保護して頂戴!!」


「分かりました!!お嬢ちゃん、こっちへおいで!!」


「神への冒涜は許せません」


「何を言って⋯」


「テラメアに逆らう者に死を」


目が怪しく光り、髪の毛が逆立っている。彼女の背中に、獰猛な山羊の顔と悪魔の体を持つ存在が顕現する。犯罪現場に子供でしかも犯罪に加担している等と完全なるイレギュラーな存在が現場を混乱に陥れる。悲鳴を上げる捜査官複数名を悪魔は容赦なく嬲り殺しにした。壁に頭を叩き付け粉砕、その後ろに立っていた捜査官を悪魔は持っていた大きな斧で体を切断する。


「お嬢ちゃん、大丈夫かい」


「ええ。心配は結構です」


「いや、まぁ俺も道を外した身だからなぁ。けどもう後には戻れねえぞ」


外を覗いた明野が萌に声を掛ける。


「私は身も心も捧げるとテラメア神に誓いました。その代わりに私の願いを叶えて下さったんです。あの時あの瞬間に斎藤萌という存在は消えました。今の私はそれ以外の何かです。神が戦えと命じるなら私は従います」


「あのおっさんにそう言われたんだろ?」


「はい」


「⋯⋯⋯」


「弟子に妙な事を吹聴するのは関心しませんね」


「あんたが幼女趣味じゃ無かった事が唯一の救いだな。それよりどうするんで?まさかこのまま抗戦する訳じゃないでしょ」


「囲まれていて逃げ切れると思ってます?」


窓が割れて一発の銃弾が仲間の眉間にヒットして倒れる。全員身を屈めて射線から逃れる。反対側の建物の窓からとヘリの音が聞こえて空からも狙われている。


「アブねえ!!全員伏せーーーーーー」


仲間が次々と倒れて死んでいく。銃声とガラスが割れる音が鳴りく。


「ここで全滅させるしかないんですよ」


空中に白い肉体を持つ禍々しい人の形を模した者が出現した。ヘリコプターの前に現れ、狙撃を受けるもその皮膚は弾丸を受け入れる事なく弾き返した。拳一つでヘリを破壊して地面に叩き付ける。外には式神が4体出現していた。大きな蛇、大猿、鎧武者、空に浮かぶ美しい深海魚。それぞれ同時に攻撃を仕掛ける。大猿は壁を上ってそこから跳躍して殴り付けようとするも逆に返り討ちに合い消滅、鎧武者は巨大な弓で射抜くも、矢を手で止められ後、矢を投げ返されて粉砕された。蛇は待機しているが深海魚が大気中の水を集めて打ち出す。水は細く鋭いレーザーになり敵の式神を斬るつもりだったがシャワーを浴びたように水に触れても貫通はしなかった。すぐに距離を詰められて深海魚は胴体を千切られてしまう。現場の呪術捜査官も敵の式神の異常な強さに戦慄し、状況を確認する。普通の人には何が起こっているのか理解出来ないが、ヘリが地面に落ち、警官が銃撃戦を行っているのを目撃して声を上げて逃げ散らかしている。野次馬を他の警察官が取り押さえ後ろへ下がらせているだけで人数が減らされる。


「突入班、第二陣いけるか!!外で敵の式神が暴れてる!!呪術師を取り押さえれば大人しくさせられるはずだ!!」


「分かりました。急ぎ取り押さえます!!」


古谷も第二陣に参加していた。銃を手に握り感触を確かめて神に祈る。彼は呪術捜査官ではあっても多少霊感がある普通の人間と変わらない。呪術師とまともに戦える術は無い。それでも仲間の為に援護は出来る。階段から上に登り、廊下を確認して状況を確かめた。廊下には複数名の捜査官が死体となって転がっており、古谷と傍にいた坂巻が息を飲む。他の呪術師が式神を出現させて小型のロボットを出現させた。フォルムは2足歩行。胴体にセンサーとカメラがついていて手足が有る。手にはガトリング仕様になっており、何かを掴む様には出来ていない。一見自立歩行型の機械に見えるがこれもれっきとした式神である。想像し、確率させて創造してその存在を維持する符術と呼ばれる術。生物は生み出す事が出来ない。それらが10機で事務所の方角へ攻め入る。地面に影が伸びており、そこから黒い三角錐が出現して大半が紙へと戻される。4機が残り、更に事務所へと近づくも、山羊の悪魔が待ち構えている。4機の動きが止まり、全員の手が回転し始めて弾を発射する。山羊に被弾して怯んだ隙に、古谷達も角から様子を伺い近づく。銀弾による援護射撃を命中させて山羊が消滅していく。影が形を持ち、ゴーストの様に半透明になったと思うと、自らを起点として影を地面に広げた。その場の全員が身動きが取れなくなり、事務所から2人の男性と少女が姿を現した。


「何だこの影は!?坂巻どうなってる!!」


「呪術による縛りかと・・・恐らく我々の影とこいつの影が同化すると足止めを食う物。術式としては危険度は低いですが今この場においては⋯」


傍に居る近接戦闘が得意な呪術捜査官は刀を手にして悔しがっている。もう一人の男も呪術の解除を始めたが焦りからか上手くいっていない。


「解除は可能か?」


「やってみます!!」


扉が開かれる。外から轟音が響き、窓から隣のビルが崩落する瞬間が見えた。同僚、一般人を巻き込んで阿鼻叫喚の地獄と化している。


「表はどうにか一掃出来ましたね。後はこいつらを片付ければ⋯」


「青葉、それに明野だな。呪術犯罪容疑で逮捕する」


「威勢がいいねえ。まぁ俺もそっち側だったから同情はするが運が悪かったな。俺の呪術はそう簡単には解けねえよ」


「呪術犯罪容疑⋯はて、この国にそんな法律は存在しませんよ。それに逮捕ではなく終身確定の生涯拘束か即殺害の2択しか我々には選択権が与えられていない。誰だって御免被ります」


古谷は動く上半身で砲身を青葉に向けて発砲する。青葉は呆れて吐き捨てると、自分の目の前に白い人型を模した存在を出現させた。手の平に銃弾を受け止められ、弾を返され古谷は凶弾に倒れた。残る捜査官も一矢報いようと奮い立つが影に足を止められた状態ではどうにもならない。恐怖の顔が顔に滲み出る。


「じゃあ、そろそろ死ぬ準備は宜しいですね?」


青葉は表情を変える事もなく、テラメアを捜査官に差し向けた。それから5分後、廊下には捜査官の死体の山が出来上がった。明野は捜査官の血の海を眺めながら、煙草を吸って煙を吐いている。


「静かんなったなぁ。表も何が起こったか分からんくらいにグッチャグッチャ。ははは、テラメアが疑似神ってのも頷けるな」


パトカーは転倒して炎上。巻き添えを食った一般市民も数知れず。周囲の建物は半壊しており、隣のアパートに至っては上層階が崩れている。包囲していた警官も逃げる様にこの場を離れておりここからもう少し離れた所で人の抑制をしているらしい。自分たちが逃げるには十分な時間と状況が揃った。


「ではいきますか」


青葉がそう言うと、血の海の廊下に誰かの人影が見えた。


「また、派手にやってくれたなぁ。自分等ちょっとやり過ぎとちゃうか」


「ーーーーーーーー!?」


世界が暗闇へと侵食されていく。気づけば建物の中ではなくどことも知れぬ異空間へと閉じ込められる。和服を着た青年の背後には、青白く光る巨大な龍の姿が闇の中から出現した。


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