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The killer of paranoid VI 1

挿絵(By みてみん)



 青葉の家系は霊感の強い一族であった。故に先祖は陰陽庁で勤めていた事もあったが青葉の祖父は三男坊であった事から、別の道を進んだとされる。父の代にてその力を呪術に活かし、呪術師を生業として生きていたが、ある日捜査官との攻防にて死亡している。呪術の基礎を教え込まれたが故に、青葉自身もその道を行くのに躊躇いは無かった。当時ネットワーク等は無く、仕事はプロフェッサーと呼ばれる仲介者によって紹介され、仕事を引き受けていた。自身で請け負うよりも遥かに高額で、安全性が高い。アンダーグラウンドの世界の裏稼業。先に居る相手は大金持ち、政治家、マフィアに変人奇人の類である。幾度も仕事を引き受け、高額な報酬と共にその道での名声も高まっていった。表では、大学の講師をしていた。脳波に関する分野の狭い門ではあったが授業には生徒も聞きに来ていた。


「テレパシーという言葉が誕生したのはいつかご存知の方は?」


「⋯⋯⋯⋯」


多くの生徒が目を点にして、お互いの表情を探っている。


「1882年、深層心理学の研究家であり、心霊研究も行なっていたフレデリック・ウィリアム・ヘンリー・マイヤース教授によって名付けられました。多くの人はテレパシーは超能力の一つで人間には使えない力の様に思うかもしれませんが、近年の研究の成果によってそのイメージは根本から違うと断言出来るでしょう。脳波というものは常に人間の体から放たれているものです。近未来的には脳波の波形を熟知出来れば例えば手足を失った代わりの義足を付ける事が出来るようになったり、コンピューターと脳波を繋げて思い通りにパソコンで作業出来る日が来るかもしれません。すでにフィクションの中では脳波コントロール技術がいずれこう成熟するであろう機械や設定が出てきています。夢物語やフィクションだけの世界になるかは我々、そして貴方達の中から技術を継承させていった先にあるものと信じて、技術を更新させていかねばなりません」


黒板に文字を描き、脳波に関するページを幾つか読んで30分が過ぎた頃

退屈そうにしている生徒に青葉は溜息を吐く。


「今日はこの講義に来てくれた貴方達の為にガンツフェルト法という余興をしようかと思います。これは2人の人が全く別々の部屋にいる状態で、1人の人はもう1人にテレパシーでイメージを送信して、もう1人が受け取ってどのようなイメージだったかを描くというものです」


青葉の前に机と椅子が並び、真ん中には白い板でお互いが見えないようになっている。


生徒を二人選別し、一人が紙に描いた落書きのイメージを向こう側の人間が思考を受け取るという。何人かにやらせてみたが、全員失敗した。その後青葉自身が参加した事により、成功率は格段に上がった。全員が驚く中で、その光景を懐疑的に見る生徒が手を伸ばす。


「一つ提案がありますが、いいですか?」


「どうぞ」


「正直、テレパシーなんて超常現象信じられないんで。どっかに鏡とか設置したりして見てるんじゃないですか?」


「そう思いますか?」


「歴史的に見てもこういった手品じみた実験って裏があるじゃないですか。ピンホールカメラだったり、屈折現象とか・・」


「それでは目隠し、お願い出来ますか」


生徒の間で笑いが起きる。これで、化けの皮が剥がれるだろうと生徒は思ったが


「逆に成功したら貴方には、後で実験に参加してもらいますよ」


と軽くあしらわれる始末。目隠しをしても成功率に影響は無かった。実際には呪術で影の中に一つ目を作り出し後方の壁から覗いていた。後日その生徒を呼び出し、参加希望者と共に午後6時に大学のグラウンドに集めた。総勢27名である。それぞれが初めて会う顔見知りばかりで戸惑いも見てとれる。そのうちの何人かには頭に装置を取り付けて貰い、高い次元で意識を共有する事で脳波がどう活性するか調べるという建前の下行っている。勿論目の前の人たちは実験の事よりもUFOを目撃する、宇宙人と面会する事を夢見ている者達であって、実験は二の次である。青葉のスタッフが計測器の準備が終わった。科学実験実験と称して、呪術的実験を行う為に幾度か被験者を募っている。この職業は自分の趣味と実益を兼ねた表家業にうってつけと言えた。


「いいですか、ここに集まったのはUFOを見たい、会いたい、交信したい者達です。他人ではありません。仲間です。そう認識を改めて下さい。成功率は貴方達の思いの強さ、フォースなのですから」


フォースと聞いて笑いが起こる。有名な映画の力の名前だ。全員が言われるまま、手を繋いでサークルになる。半信半疑の者も居るだろうが、場は高い緊張感に包まれる。30分もその状態が続くとやがて、頭上に光が差した。


「そんな馬鹿な!?」


信じていなかった者達も驚きを隠せない。悲鳴も上がった。脳波の計測器も測定不明の振れ幅が出ている。驚きと恐怖に包まれた場はやがて形を失い光もすぐ様無散した。また同じ実験を1時間掛けて行ったが二度と同じ事は叶わなかった。UFOを呼び出した体験を得て興奮して帰路へ着く者。恐怖体験をして鳥肌を立って帰る者。2極に別れる形となった。無論これはUFOではない。人の思いが共振され、大きな塊となって現れた物。実験の真相はUFOを呼び出す事ではない。青葉は自分の研究の成果に満足する結果を得た。


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