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The killer of paranoid Ⅳ 9

 午後5時半頃、学校には帰宅者も多く下校を始めている。優理と海人はあれから学校に残っている人が少なくなってから、行動を開始する事にした。海人はすでに異常発達した者の思いを数名キューブに変えているらしく、把握出来ている者は手で数えられる程しか居ないという。そのうち一人が友人であり、もう一人があの模型部部長だったらしい。優理は海人に友人を後回しにする様に頼み込んだ。告白して結果が出ればどのみち変化する。成就すれば安心感からか少し落ち着くようで、振られた場合は瞬時に消える事もあるらしく、どちらにせよ異常発達した思いに変化は生じる。


「ハク、あの世界って入った時間と出た時間って同一?」


「同じですね。3日も入れば衰弱して死に直結するでしょう」


「やばいじゃん。巻き込まれた子大丈夫かな」


「妙な出来事に巻き込まれる前に、僕らでキューブ化しちゃえば問題はないさ」


「キューブ化したら解放されるの?」


「思いの世界が瓦解する事は間違いないので、その可能性は高いでしょうね」


優理はそれを聞いて安心した。力を解放してカボチャの妖精のイメージを自分に重ねる。


「さって、久しぶりに狩りにいこうかな。どこに居るか分かる?」


「テニス部顧問だから、多分テニスコートじゃないかな」


「あー⋯あのエロ教師で有名な九射先生ね」


英語の教師兼テニス部顧問。学校の間では有名な話で、曰く女生徒の盗撮疑惑が浮上した事がある。その時は証拠不十分で、免れたがその後も続けているのではないかとの専らの噂。海人もタキシードと仮面の格好を取り、二人で空を飛んで上空からテニスコートを眺める。


「先生一人しか見えないけど」


「とにかく、行ってみよう」


ゆっくりとテニスコートに降りると、どうにも様子がおかしい。目は虚ろで焦点が定まっていない。


「女生徒⋯覗き⋯⋯女生徒⋯覗き⋯⋯」


うわ言の様に、言葉をぶつぶつ並べている。

二人が先生に対峙すると、彼の代わりに水晶の中の目玉と目が合う。


「思いが育ちすぎて乗っとられてますねえ」


「じゃあ枯れる前に回収と行こう」


「そういえば、皆どこ行っちゃったのかな。吃驚して今日はもう皆帰ったとか」


「いえ、恐らく巻き込まれてますね。あの教師の夢の中へ」


彼の頭上には、巨大な水晶に大きな目玉が映し出されている。ひび割れ、青い水が溢れ出すと一気に洪水の様に怒濤の勢いで周囲に広がった。


「ちょっと、これあん時のーーーー」


二人が気づいた時には、外に居るはずだったにも関わらず、また廊下の中に立っている。模型部の時はロボットに変化したが、今度はカボチャの妖精のままだ。


「あれ?何ともない?前の時はロボットになったのに」


「その姿でいる限り、この夢の世界でも彼に干渉される事はありません。存分に暴れて下さい」


「そっか、ありがと。でも、だとしたらあの人って一体⋯」


赤い髪の女の子の事を考えていると女生徒の悲鳴が聞こえて来た。声がした方に向かうと教室の中にテニス部の格好をした生徒が捕まっている。何人もの女生徒が隅に寄って恐怖で震えている。青い鬼の様な不気味な存在が、先生の指示で女生徒を捕らえて締め上げているのがみえた。


「ちょっと!!、止めなさいよこの淫行教師!!」


優理が扉を開けて、思わず教室の中に入った。すると秒で捲し立てて反論される。


「誰が淫行教師だボケ!!俺はな、何にもしてないの!!目が何かやらしく見えるって理由でここまで噂が広がっちゃって、今嫁さんと別居中にまでなってんの!!お前らなんか大ッ嫌いだバーカー!!!死ね!!!」


「⋯⋯⋯⋯⋯え」


優理の目が点になる。勢いよく振りかざした正義の鉄槌という名の大鎌の動きがピタリと止まった。



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