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The killer of paranoid Ⅳ 6

 優理は翌日の朝、学校で明らかに異常を感じ取った。頭上に出現している水晶の塊の発生件数が異常なのはすぐに理解した。犯人が誰であるか探すまでもない。風子の事が気になり教室まで様子を見に行くと、頭上の思いは消えていなかった。妖怪を生むまで恐らく様子見するつもりに違いない。丁度、階段を上って海人が廊下を歩いている。


「おはよう、花咲さん。何かあった?」


「海人君でしょ、学校に種を蒔いたの」


「そうだよ?もっと早くこうすれば良かったって後悔してるんだけどね」


「約束したよね、周囲の人には手を出さないって」


「したね。だからもう協力してくれなくて良いよ。後は一人で頑張るからさ。今までありがとう」


「ちょっと待ってよ!!」


「いいの?花咲さん。そんな大声出して、誤解されるよ?」


それじゃ、と言い残して海人は教室へと入っていく。妹の命が掛かっているのだから、彼の言い分も理解出来る。ただ、優理にも身近な人の考えを180度変えられる程の覚悟はない。自分の行いで、さんざんしてきた事に今更罪悪感を覚える事もないが境界線はあるつもりだった。他人だから心を変えても平然としていられた。朝の朝礼が始まり、ホームルームの第一声と共に、事態は自分が感じている以上に深刻であると悟る事になった。


「昨日の夕方から、うちの女子生徒が2名行方不明となっています。幸いこのクラスではありませんでしたが、警察は何か事件に巻き込まれた可能性もあると見ています。何か事情を知っている者は一度先生の所にまで来るように。分かっていると思いますが、誤った情報や、興味本意でネットに書き込み等しないようにお願いしますよ」


 先生がホームルームを早目に切り上げると、女子生徒が行方不明になった件で教室の中は騒ぎになった。他の校舎や教室からも同様の声が響き渡っている。皆の興奮が収まらない中で、一限目の開始のチャイムが鳴り響いた。昼にもなれば、粗方携帯やパソコンを通じて情報が纏められていた。一人は1年3組の本永康子というサッカー部マネージャー。エースの山田君と仲が良いという噂がある。もう一人はもうすぐ卒業する3年生、明本加奈子。昨日はサッカー部を応援に見学に訪れており、サッカー部の誰かと付き合っているのではないかというもっぱらの噂。どちらもグラウンドに午後5時まで目撃例はあるが部活が終わった午後5時半以降、姿を消している。学校中が予想や推理を当て嵌める中、下らない二人のゴシップの様な噂も目立つようになった。その中で、サッカー部に来ていた女の子の目撃例の中に、風子の名前が挙がっていた。


その時間に風子が居たのなら2人を見かけた可能性もある。優理は放課後、連絡して彼女に教室に残って貰う事にした。


「ごめん、急に呼び出して」


「いいけど、何があったの?」


「昨日、風子山田君の後を追ってたんだよね?失踪した二人を見なかった?」


「また、その話?さっき赤い髪の先輩に呼び止められて全く同じ質問されたばっかりなんだけど。誰かと校舎に入って行ったきり見てないわ。ずっと山田君の後追いかけてたのもあるけど、ごめんなさい。」


他には何も見ていなかったと、それならそれで仕方が無い。


「一緒に入って行った生徒は男性か女性かわからない?」


「確か、男性だったんじゃないかな。背格好からして女子っぽくは無かったし。覚えているのはそれくらい。優理はどうしてそんな事を探ってるの?」


「え、いやぁ⋯興味本意でちょっとね」


本音を言えば、彼女の関与が怖かった。嫉妬や嫌悪で二人を殺害なんて事になってなければいいが、彼女の瞳からは何も分からない。ただ、そんな恐ろしい事をして平然と日常生活が送れるタイプでもない。真相は恐らく全くの別のものだろう。時間を置けばストーキングいていた彼女が一番に怪しまれる可能性もある。風子と別れた後、優理は校舎の中にある文化系の教室を当たってみようと廊下を歩いていた。2棟の校舎は廊下で繋がっていて行き来が出来る。部室棟の方まで廊下を歩き、階段を上ろうとすると上から青い水が流れ込んで来た。


「青い水!?」


周囲一面を覆うと、その水が壁や天井にも染まっていく。明らかな異常に気づいたのは、自分の姿形すら変化していた事だろう。一歩階段を上ると、ガシャンという機械音が聞こえた。鉄で出来たフォルム。人造人間ですらない、本物のロボット。制服やスカートは完全に消えている。


「何これ、どうなってんの!?」


間接が自在に回って手首が360度回転が出来てしまう。女性の声が響き渡って、優理は思わず上を見上げる。階段を上る決意を固めて急いで声のした3階へと階段を上った。上まで到達すると闘技場の様な場所に躍り出る形となった。同じようなロボット同士が争っているように見えるが、一方的に片方のロボットが、もう片方をなぶっている様にしか見えない。


「僕の作ったロボットこそが最高なんだよ!!」


歓声が渦巻く中、闘技場に唯一人、人間でいる少年の下へ優理は歩き始めた。

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