The killer of paranoid Ⅳ 2
呪術捜査官が全国各地にあると言えばそうでもなく、数は極めて少ない。近畿圏で言えば、京都しか存在しないので遠方まで赴く事もざらである。役割があり、呪術師を直接相手にして戦闘・捕縛を行う者、呪術を感知し追跡捜査を行う者、感情の選別や念視痕を一般の人間に分かり易く可視、またはグラフや資料で確認出来るように魔法省から派遣された科学技術を駆使する魔術師が居る。元々陰陽庁の中にも様々な役割があり裏方の中に結界師や感知者も居るのだが、相手が妖怪か人間かの違いである。呪術師を追って拘束するだけの権限と捜査権を得る為の組織であり、荒事に巻き込まれるのが常な部署でもある。それと呪術師に関する事件が一切起きない場合は普通に捜査第一、捜査二課の補佐を任される事もあり、刑事事件を別の形で捜査協力を行っている。
「霧島令二君、ちょっといいかな」
そう言われて、少年は廊下を歩いていた所で後ろからの声に呼び止められた。声のする方を向くと、捜査第一課の古株の刑事の顔があった。
「何でしょう、古谷さん。今、ちょっと忙しいんですが」
これから、捕らえた呪術師の取り調べを行う予定だ。しらを切るのが大半だが、近年の魔術師の介入によりようやく念視捜査は発展が進んだと言える。ともあれ、一般的な人間への理解を深める為に行っているのは半年に一度の念視による試験であり、精度と信頼を損ねる結果が出た場合、日を改めて追試となり、そこでも芳しくなければ感知捜査から外されるが今のところそのような事例は無い。古谷と呼ばれた男は元々は呪術捜査官だった。長い間ベテランではあったが、霊感能力は一切無い一般人である。数人程度、そういった人間を入れて一般の警察官との架け橋になる人材を作りたいという陰陽庁と歴代の呪術捜査官達の思惑によって引き入れられた者が居り、古谷という男もその一人であった。警察署内でも呪術捜査への理解を得られているかと言えばそうでもなく、懐疑的な声も大きい。
「知ってるよ。4月の事件の規模になるって話もこっちに流れて来てる。陰陽庁と連携して自衛隊も動くかもって話だ。まぁ、実際に事件が起きたところでこっちは動きようがないからなぁ」
「今から取り調べを行い、先の呪術師との関係性が無いか徹底的に調べます。顧客をシェアしているケースもありますから、パソコンの方も解析して貰っています」
「連中が何をしようとしているか掴めればいいんだがねえ」
令二は、古谷に情報を共有してから取り調べ室へと向かった。
白崎千鶴は、数ヵ月前から感じる異常な数の人々の強い妄執の念がある事を感知していた。自分の扱う事件とは一切関係は無いし、接点も無いので放置していたが、不気味に感じ取ってはいたのだ。それは、自分の同僚や先輩も同じであるらしく、その件に関しては陰陽庁に関係者を持つ先輩から陰陽庁がすでに何か掴んでいるという噂を耳にした程度。それが12月に陰陽庁から話を伺い、不気味な念が何であるか確認する事が出来た。思いを暴走させる夢の世界の住人と結託して、人々の思いを暴走させ大きくし、そのエネルギーを盗む者達が居る事、そしてその背後に呪術師が潜んでいる可能性を陰陽庁は告げて来た。双方で情報を共有し、恐らく次に動きを見せるのは2月14日であろうと予測も立てられていた。
それまでは出来るだけ多くの情報を調べ、備える方針との事。
(本当に、2月14日まで何も動きないのかなぁ)
千鶴は、警察の窓から街を見下ろしている。目を閉じれば、感知出来る人々の様々な思いの中に
幾つかの一際大きな妄念を、千鶴はその身に感じ取っていた。




