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陰陽庁怪異対策課京都支部 12

 京子と紅葉は支度を整え急いで体育館へと向かった。非常時用に巫女服と武器類も一応学校に備えてあり袖を通した状態で少し人目につかないか気になった。紅葉が女の子をおんぶして、京子が先回りして使用されていないか確かめる。誰も使っていない事を確認して体育館の中央に寝かせ京子は札を取り出して五枚の札の中心に携帯を置く。印を組むと、光輝く五房星の魔方陣を出現させた。


「どんな奴が出るか分かんないんだから、無茶は止めてよね!」


紅葉が前の死神の一件を思い出して言った。


「手に終えない相手だったら直ぐに手を引くわ」


聖なる気に当てられ、中の物が姿を現す。黒い障気と共に一つ目の妖怪が姿を現した。先程二人を睨んでいた存在に間違いない。全身毛むくじゃらで、空中にふわふわと浮いている。髪の毛をざわつかせて、京子に襲い掛かった。紅葉がすかさず、横から空中に札を浮かせて妖怪に飛ばした。それに気づいて妖怪は急に上へと上昇し、まずは髪の毛を伸ばして札を破る。次に髪を伸ばして紅葉へと向けた。横から炎が出現して髪の毛が燃え上がる。一つ目の妖怪はその炎に視線を移すと、火の形をした鼠が自分にまとわりついている。髪の毛で覆う前に燃やされ、ちょこまかと妖怪の体を走り回る火の鼠の炎が髪に付き燃えていく。好機と見て二人は小太刀と刀をそれぞれ構えて妖怪に掛けた。二人して一太刀浴びせると、血の涙を流して怨嗟の声を上げる。怒り狂った表情で紅葉に突進し、紅葉も小太刀で受け止めたが勢いは止まらず、妖怪と一緒に空中へと浮かんだ。


「ちょっ!!鬱陶しいから離れなさいっての!!」


もがけばもがく程髪の毛が絡み付く。気づけば火の鼠も消えていて自力ではどうにもならい。飛翔と旋回を繰り返し、紅葉の目が回り始める。さながらレールの無いジェットコースターになっている。


「京子、何とかしなさいよおおおおおおおおおおお!!」


「ちょっと雑な助け方になっちゃうけど、いいよね?」


「雑って何よおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


空中に札を大量に散布して浮遊させると一気に妖怪へ飛ばした。妖怪もそれに気づいて、髪を伸ばして紙を破るが幾らは防げず体に張り付く。京子も取り込もうと正面から強襲しようとしたが京子が印を組んで爆発させると、妖怪が地面に落ちて転がった。紅葉も吹き飛ばされてゴロゴロと体育館の床に転がり振り回された事と急な爆発に巻き込まれて目を回している。


「あんた、覚えておきなさいよ」


「雑になるって言ったじゃない」


妖怪が携帯の中に戻ろうとしているので、京子は刀で切り伏せると消滅して黒い障気と共に霧散した。


(倒せない事はないけど、数が増えたら捌けないか)


除霊可能な事は分かった。辛そうに寝ていた女の子から吸われていた生気が戻り、衰弱していた体が元に戻っている。彼女を救えた事に安堵して京子も緊張の糸が切れて床に尻餅をついた。この一件を京子は上に報告をしてから数日が経過し、ある事実が浮き彫りになった。紅葉と二人でその後の経過を女生徒から話を伺うといじめていた女の子達が目覚めていないというのである。彼女は改めて助けてくれた感謝と自己紹介を済ませゲームにのめり込んだ経緯を二人に説明した。彼女の名前は早川紗世はやかわ さよという。誰も居ない放課後で3人は紗世の携帯を見る。


「あれから、もう数日が経過するけど、あの子達まだ来てないの。大丈夫かな」


「目が覚めるのにちょっと時間が掛かるとか?」


紅葉が京子に視線を移すと、眉をひそめた。


「どうかな。あれがただの一部なら本体は生きてるかも。私もこのゲームをやってみたけど何も起こらなかったし」


適当に兄の顔写真を撮ってやってみたが、クリアしても画面に何も出なかった。その事で陰陽庁幹部も首を傾げていて、報告にあった事と一致しないと疑念を抱いている。特定条件が必要という事であれば探す必要があるが京子は牛の刻参りの一件で見当がついていた。あの一件も相手を殺す為の死神を召喚する生け贄として呼び出した本人を犠牲にしている。


「ちなみに、あのいじめていた人達に対して怒りと殺意はありました?」


急に言われて、答えに詰まったが、紗世は力強く頷いた。


「勿論、何度も【殺した】わよ。あのゲームでね」


「そうなるとやっぱり、思いの強さが鍵なんだわ」


単純にゲームをクリアしただけでは呪いは発動しない。一定以上の本物の殺意があって呪術として発動する仕組みらしい。そして呪った本人を贄にして呪いが発動する。呪い(まじない)の種類によっては、ある動作や言葉を発した瞬間に発動するものも存在する。スポーツ選手のよくある集中する為に行う初動作や、幾重にも自身に誓約を課す事で能力や集中を引き上げる物。陰陽庁の幹部でも、報告にあったアプリの検証や調査が進められていた。紅葉の父、寛治はゲームを起動して彦磨呂の顔をゲームキャラとして登場させて指でスラッシュして首を跳ねて遊んでいた。寛治は元々家の後継者では無かったが、兄の代わりに神社を継いで父の後を継ぐ形で陰陽庁の幹部になった。そこまでは良かったが、才能のある兄とは違って秀才止まりの彼が周囲の者との実力が掛け離れている事に気づくのにさして時間は掛からなかった。修行を積めばいいと兄に言われたが剣術、召喚術、式神術、そのどれも兄に遠く及ばないばかりか最近幹部に入った幼い子供にも遥か遠く及ばない。それ故いつの間にかそれがコンプレックスになっており周囲にそう囁かれる度にストレスを感じざるを得なかった。


「うははははははははは!!見よこの指捌き!!時間内にクリアすればゲームクリアだ!!」


最後の一人の首を跳ねて見事ミッションコンプリートし携帯に一つ目が寛治を凝視した後あの文字が現れる。


呪いは発動されました


人を呪わば穴二つ


貴方の命も後7日


「キャー!!大変よ!!彦磨呂様が急にお倒れになったわ!!」


個室で休んでいた彦磨呂の世話役の声が響きそれを聞いた寛治は思わず鼻水が飛び出て慌てふためいた。



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