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橘紅葉の回想目録 5



  開始の合図と共に、由紀さんは真正面から潰しに来た。


「何人揃っていようが、私一人で十分よ!!」


「それは、どうでしょう」


早苗が空中に人型を模した紙を空中に散布させて浮遊させる。その数は以前戦った時よりも遥かに多い。小さなその紙の群体を由紀さんに放つと、立ち止まって二つの小太刀で切り伏せ始める。しかし、その紙の群体の中に一つ、二つ早苗が途中で変化させた手裏剣が軌道を変化させて後ろへと回った。


(作戦は良いわね、良く練られているわ)


瞬時に前にある物が全て紙である事を確認して全て無視する。体に張り付いてくるがそれだけだ。背後に回って来た手裏剣を叩き落とす。その動作に乗じて、葵が間合いへと入った。由紀も一瞬ぞくりと背筋を凍らせる。


(速い―――まさか私がやられる!?)


由紀が覚悟を決めた刹那、一撃が入る寸での所で雷の一撃が葵に襲い掛かった。


「あhdgdshhdgfh!!!!!」


「葵君!!」


「葵!!大丈夫!?」


声にならない叫びを響かせて、痙攣してばたりと倒れる。


「グハハハハハ!!ざまぁみさらせ継守!!」


「ありがとう御座います、白虎様」


「この く そ ど ら」


よろよろとゆっくり立ち上がって、葵は再度構えた。その間に由紀さんは距離を取って再度構えている。白虎はは大声で吠え、葵に突進していく。札を飛ばして、白虎の体に貼り付けて爆発させると、効いてはいないが動きを止めた。


「役割、代わって欲しいんだけど!!」


「すまんな、紅葉」


「なるべく早く終わらせるから、紅葉頑張って!!」


「ちょこざいな!!」


白虎が自身の体から発した雷で紅葉を攻撃をしてくる。結界を張って防いだ隙に、4匹の低級な精霊を呼び出した。小さい馬の様な体をした火の精霊、竜宮の使いと良く似ている魚の水の精霊。土の体を持つ人形の様な精霊、そして巨大な鷲の風の精霊。


「そんな雑魚を幾ら召喚した所で、わしには勝てんぞ!!」


「それはどうかしら!!」


白虎が巨大な雷を紅葉に食らわせる前に4匹に結界を作らせた。攻撃は得意としなくても、出来る事はある。雷と結界がぶつかって攻防が始まる。


「んぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!!」


正直、武士を想定していたので守護聖獣相手に何分持つのか分からない。役目が時間稼ぎなだけに私の踏ん張りは結構重要だ。


「どうしたどうした!?こんなものか!!そんなヤワな結界すぐに壊してくれる!!」


「まだまだ!!皆、頑張って!!」


それぞれがこくりと頷いて、己が役目を果たす。作戦は短期決戦。結界が壊れたらどうしようとぞっとしない目の前の雷の攻撃を私は全力で持ち堪える。葵が予期していなかった雷のダメージを負ったが、由紀さんが距離を取って警戒してくれたお陰で回復が出来た。今度はこちらの番とばかりに葵が攻勢に出る。捌かれてはいるが、それほど余裕も無さそうだ。木刀と木刀の打ち合う音が響き渡ってお互いに攻撃し合う。


「私が居る事もお忘れなく!!」


再度、早苗が紙を空間に浮かばせて、由紀さんに飛ばす。今回も数の中に一つ二つ、手裏剣を忍ばせている。思わず由紀さんも後退して距離を取ったが明らかに紙よりも目の前の葵を警戒している。


「驚嘆に値するわよ、その若さでその腕は。貴方一体何者?」


「爺ちゃんに、毎日しごかれてるだけです」


早苗が放った紙の群体が由紀さんに向かって、葵を追い越して由紀さんへと先に辿り着く。そして綺麗に目の前に一列に並んで空中で正方形が出来上がり彼女の視界を遮った。由紀さんは慌てて邪魔な紙を左手の木刀で横薙ぎで視界を確保するが、その一瞬の動作が致命的になった。紙を突き抜けて現れた早苗の小太刀二刀による一撃が由紀さんの右の木刀に防がれる。それでも、虚を突くには十分だったようで。


「しまった!!」


攻撃に合わせて葵が彼女の左小手を払い、次いで早苗が右の小手を払って木刀二本が手から離れて地面に転がった。ひらひらと紙が舞う中で、溜息を吐き


参りました、と彼女は降参を認めた。


かくいう私は白虎の雷撃に耐えられずに結界が破られ


電撃を食らって目を回し、大の字になって空を見上げて倒れていた。



「そこまでじゃな」


水蓮様が目の前に私たちを集めてそう告げた。負けた由紀さんは、申し訳なさそうにして謝罪する。気づけば周囲には陰陽庁に関わる人々で溢れており、長らく居なかった守護聖獣の契約者が2人も現れたとなって騒ぎになったのだ。私も葵もお姉ちゃんも周囲に見られて落ち着かない。


「面目ありません、水蓮様。私が至らぬばかりにこんな事になってしまい・・・」


「何、お主のせいだけではないのう白虎?」


「なんだ、俺に落ち度があったとでもいうか」


「バリバリありまくりじゃろ?お主が本来使役者の従者としての勤めを果たし、由紀に協力しておれば3人纏めて相手をしておっても負ける事は無かったじゃろう。意味のない結界崩しに熱中して本丸である由紀を放置した結果がこれじゃ。守護聖獣が聞いて呆れるの」


「ぐぬぬぬぬ」


「ともあれお主が交わした約束は約束じゃ。二人ともこれを受けとるが良い」


早苗と紅葉に、守護聖獣専用の召喚札を睡蓮から受け取った。


「ああ、永く続く伝統を私が汚してしまうなんて」


「よいよい、守護聖獣も使役して世の為にあればこそじゃ。封印して世に出さん方が勿体ないというものよ。朱雀も良いな」


「ふむ、それは構わんがな」


燭台の炎が揺れて何か意味あり気に答える。


「そういえば、たちばな 鉄心てっしん殿は息災かの?」


水蓮がそう尋ねると、葵が答えた。


「ええ、今でも剣術道場で子供相手に元気にやってますよ」


「やはりそうか。橘一刀の正統が京都に戻ったとちらほら聞いてはおったが」


それを聞いて、由紀も表情を変える。


「そうか、橘一族の正統継承者だったのか。鉄心殿の仕込みならば納得もいきますね」


「えーっと、その事なんですが」


守護聖獣さえ手に入れば自分はお役御免です、と言おうとした瞬間


「ええ、ようやく兄が決心してくれまして。ええ、ええ、いずれ葵君がうちを継いでくれますので!!」


人に囲まれながら、私のお父さんが周囲に大声で吹聴しており


再び葵と私は石化して固まった。


「ま、守護聖獣の使役者二人と正統の帰還となれば橘家の未来も明るいの。頑張る様に」


そう言って去る水蓮様の一言が止めになって私と葵は心が折れて体が脆く崩れる様な錯覚に陥ったのだ。


試練が終わって、私と葵もとりあえず今の状況を一旦受け入れて日々を過ごした。葵は別段普段と変わらない様子ではあったが流石に気落ちしている様子も見られた。残念ながら掛ける言葉が私には見つからない。頑張って、なんて言えないし何か言えば何の言葉であれ葵の心に刺す様な気がして。ため息を吐いて部屋で学校に行く準備を整えていると、ガチャと扉が開く

音が聞こえて振り返った。


「紅葉、縁さんがーーー」


葵は一瞬にして凍りついた。何故なら私は着替え中だったから。

私は怒りを露にして声を出した。


「ノックくらいしなさいよ!!やっちゃえ白虎!!」


「くたばれ継守!!」


「ごめnsdghfhgfjsdgf!!」


その場に小型の白虎を呼び出して、白虎の雷を葵に食らわせた。




橘紅葉の回想目録 FIN


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