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陰陽庁怪異対策課京都支部 11

 初めのうちは、ストレス解消に一役買っていた事もありてるてる坊主の首を切り落とす作業が少女には痛快に思えた。現実に起こっている自分との環境を思えば、仮想的な下剋上を実現させていたからでもある。小学校の頃はいじめられる子が居たら無視を決め込んで火の粉が自分に降りかからないようにしていた。いざ自分がそうなって初めて彼等の気持ちが良くわかる。暴れ出したい激しい激情と、その後に身に起こる世間体、教師への評価の下落、周囲の反応、その他上げればきりがないが、ここで抑えなければ結果的に損をするのは自分だという戒めが彼等を増長させていく。それに暴れれば気が済むが報復が待っているかもしれない恐怖もあった。葛藤がストレスになり結果ゲームで仮想的な下剋上だけでは物足りなくなる。同じ教室なので彼女たちの顔写真をこっそり撮影する事はそう難しくはなかった。彼女達がキャラクターになり、憎悪を向けて首を切り落としていく。ある日、自分の教室の机に落書きが書かれてあった。教師が来る前に何とかしないと、そう思って慌てて雑巾を取りに廊下に行って戻って来ると、今度は鞄がどこにもない。そっと窓を見ると外に放り出されている。クスクスと周囲が笑った。いじめのリーダー格の女生徒が、こちらを見てゲラゲラ笑っている。それ以外の者は我関せずを貫いてる。出会って間もない者同士、それも当然とも言える。


(そうだ、私も無視してた)


あの日、あの時、勇気があればと後悔する。ふと、昨日の女の子達を思い出した。


「顔は覚えたから、次何かあったら私に言って。二度とあんな事出来ないようにボッコボコにしてあげるから」


「停学食らう事になりかねないので、その前に私に一言お願いします」


ひょっとしたら、あの二人は力になってくれるかもしれない。でも、巻き込みたいとも思わない。結局、窓から外に出て鞄を取るとそのまま授業に臨んだ。自分の中で収まらない怒りがゲームに向いて学校の帰りでゲームコンプリートする。敵が出て来なくなる代わりに一つ目が自分を覗いた。ギョロリと目が合い、思わず携帯を落とす。次に携帯を拾った後、次の様に書かれていた。


呪いは発動されました


人を呪わば穴二つ


貴方の命も“後7日”


最初は、冗談だと思って過ごしていたが、3日が経過して異変が起こった。首を切り落とした生徒達が病で倒れて入院したという。その子達が居ない机が妙に少女に印象に強く残った。何が起こっているのか流石に寒気を覚えて帰りの公園のベンチに座り携帯を見ると日数が変化している事に少女は愕然とした。


貴方の命も“後4日”


「いい気味だと思ったけど、笑えないわ」


アンインストールしようと携帯をタップしたがアプリの削除が出来ない。配信元のレビューの欄を見ると真面目に評価している人の中に、明らかにこのアプリについて危険を訴えている人が多数居る。


『これやっちゃ駄目だ、マジで呪いのアプリだから!!友人昏睡状態だよ』


『俺後一日って書いてあるんだけどマジ怖えェ』


『知り合いから聞いた話だと人を呪わば穴二つって書いてあるように呪った相手も、自分も7日後に死ぬらしいぞ』


『お前らそれマジで言ってんのかよwwwww』


『ゲームにマジになりすぎいいいいいいいいいいいいいいい』


『そんな事言われたら試さざるを得ない!!』


『スマン、呪いの手順で普通にクリアしたがそんな画面は出なかった』


「冗談、だよね」


たまたま、偶然いじめていた連中が昏睡状態になっただけ。そう思っていたが、徐々に少女に変化が現れ始る。段々と虚ろになり、生気が無くなり、5日目を迎える頃には色白で唇まで白くなっている。具合が悪くなって保健室に行こうと廊下を歩いていると途中で力尽きて壁にもたれる。通りかかった女生徒がその様子を見て慌てて駆けつけてくれる。少女に見覚えのある女の子だった。


「大丈夫??⋯⋯って大丈夫じゃないわね。顔色悪いわ」


「私も手伝うわ、半分肩貸して」


紅葉と京子が少女を担いで、保健室へと連れて行く。保険の先生も驚いた様子で狼狽していた。少女は携帯を取り出してこれまでの経緯を説明すると、冗談としかいいようのない話を二人は真剣に耳に傾けた。


「最近、妙に大人しいと思ったらこういう事か」


「確かに、この方法なら大量に被害者を増やせるわ。すぐにお兄ちゃん達に話を通さないと」


二人は表情を変えてその携帯を見つめている。大きな目玉が生きているかのように二人を睨む。目玉が消えると、文字が浮かび上がってきた。


呪いは発動されました


人を呪わば穴二つ


貴方の命も“後2日”



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