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The killer of paranoid Ⅲ 14

 現場の近くでは、ワゴン車に乗った陰陽庁関係者が頭を悩ませていた。これだけ人が密集してしまうと、情報の拡散は免れない。陰陽庁の支部で報告を受けた京子は即座に警察と自衛隊に連絡を入れる。ある程度人払いをしてからでないと動きようがない。または妖怪がその場を移動してくれると助かるのだがそれもなさそうだ。先程から紅葉からラインが入っていて、非番の紅葉と早苗の呼び出しはないと通達した。


「時間との戦いになりそうですね。上手く夏樹さんが処理してくれると有難いですが、彼女に押し付けるのも筋が違いますし」


「ははは、なんや悩んどるようやなぁ」


兄が、プレゼントボックスを机に置いて、京子を労う。


「誰かさんが出張ってくれれば一件落着なんだけど。それより、何かあの子も出てくるかもしれないんでしょ?」


「こんなしょーもない案件俺が出るまでもないて。それに緊急時とは判断されへんやろな。後、あの子は多分来ーへんわ」


とある家の中の風景。


「洵ちゃん、私の携帯が無いんだけど知らない?」


「知らないわよ。それより、あんたの番なんだから早くしなさいよ」


机の上には、ケーキやお菓子、飲み物、それと二人で対戦中のオセロの盤面が置いてある。今日はクリスマスのお泊まり会。綾乃がお風呂に置いたかもと浴場へ向かった後、洵が自分の座布団の下から携帯を取り出す。時間は23時半頃。24日が終わるまで後少し。


「初めましてじゃないわね。朦朧としてたけど、何となく覚えがあるわ。うちの学校の有名なカボチャの妖精さんよね?」


「だったら?」


「理由があるってさっき夏樹から聞いてるけど、私は遠慮しないわよ。あんたの被害者だし、実際襲われる所だったしね」


運よく、陰陽庁関係者が駆けつけてくれた。霞が、自分の精神体を彼女に向かわせ、捕らえようとしたが回避される。今度は、彼女がランタンを取り出して、炎を霞に向けたが、構えた盾で凌ぎきる。


「どうして、思いを集める必要があるのか聞かないの?」


「興味ないかな。私はあんた達に興味ないし。大事な人の為に、恩を返したいだけだから」


「そっか、何か似てるねえ、私達!!」


後ろからの鎌の一薙ぎを、槍で受け止める。連撃を捌いて、霞も攻撃すると一撃を受け止められる。上へ向かう夏樹を心配しながら、返答する。


「⋯⋯かもね!!」


上空では、追い付いた海人が嫉妬の権化を弱らせる為に戦闘が繰り広げられている。


「フハハハハ!!少年、何が君をそこまで駆り立てるというのだ!!クリスマスを楽しみたまえ!!」


「お前をキューブにしたら、心の底から楽しむさ。言われなくてもな!!」


空中で、悪魔に成り果てた海人が嫉妬の権化に襲いかかる。組み合いになり、尻尾で顔を強打、不意をつかせて、蹴りで後方へ飛ばし、自分も先回りして再度蹴り飛ばす。上空でパンチ、下から突き上げる蹴りで再度上へ戻す。空中サンドバッグ状態になり、最後にそびえ立つ建物へ向けて顔を殴る。勢いよく吹き飛んでいき、ガラス窓が割れて嫉妬の権化は奥まで飛ばされ、どこかの営業部署でデスクや机、パソコンが散乱する形となった。


「ハァ、ハァ、やったか?」


割れた窓から様子を伺う。ガラガラと音を立てて、嫉妬の権化は割れた机の中からゆっくりと立ち上がる。ゴキ、ゴキ、と左右に首を鳴らして彼も、呆れた様子で呟いた。


「真っ赤な青春、弾ける若さ、よかろう受け止めよう。そして少年も受けるが良い。私のクリスマスの思いをな!!」


瞬時に胸ぐらを捕まれ、天井へと放り投げられる。叩きつけられて、バウンドして落下した所で腹に拳が突き刺さる。


「ゲェ!!!」


そのまま、また天井にめり込み、嫉妬の権化も左右のパンチラッシュで上の階層まで貫いた。埃と、バチバチという導線の火花が散る。悪魔の姿から、紳士の服装に戻った海人。すでにボロボロで、仮面が半分割れており、頭部からは血が流れている。髪を鷲掴みにして、嫉妬の権化は持ち上げる。


「メリー⋯⋯クリスマス。さらばだ少年」


その瞬間、窓を突き破って何者かの侵入が現れる。嫉妬の権化はそちらを振り向くと

巨大なハンマーを肩に乗せている金髪の少女が立っていた。油断と抱えていた少年の事もあり、重い一撃が脇に刺さる。嫉妬の権化もそれまでの余裕の表情から苦痛に顔を歪ませる。


「理由があるにしろ、無いにしろ、とりあえず、こいつを片付ける」


ぽい、と海人を捨てて、嫉妬の権化も夏樹に目を向ける。


「嘆かわしい、若人よクリパせよ」


「ああ、うん。もうそれは十分楽しんだから」


夏樹がハンマーを握り締めて、嫉妬の権化へ駆け出した。


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