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The killer of paranoid Ⅲ 12

 「姫ちゃん、メリークリスマス!!」


「優里さん、サンタさんの格好可愛い!!」


「フフフ、そんな嬉しい事を言ってくれる姫ちゃんには、優里サンタからプレゼント」


袋から、人気の高いクマのぬいぐるみを手渡すと、姫も喜んでそれを受け取る。


「優里さん、ありがとう!!大切にするね!!」


「ありがとう、わざわざサンタのコスまで⋯」


「いいよ気にしなくて。それより海人君、ちょっと話があるんだけど」


優里に呼ばれるまま、屋上へと向かった。肌寒い空の中で優里が話し始める。


「最近、キューブが取れそうな人が居なくなってるの気づいてる?」


「⋯⋯どういう事」


「種を巻いたら頭に水晶が出るんだよね。個人差はあるかもだけどここまで日数が経過して何も起こらないって、何か変な気がしない?」


「ハク、どういう事だ」が沢山居るんでしょ?」


「じゃあ、姫はどうなる!?死神の告知は今の分で回避出来るのか!?」


「いえ、難しいでしょう。だからと言って怪しい人物との接触は止めた方が良いと思いますが」


「随分他人事みたいに言うんだな。元々ハクが持ちかけて来た話だろ!?」


「姫さんが、悲しまない方法を模索すべきと忠告をしているんじゃありませんか」


「だったら、他の方法を教えてくれよ!!どうすりゃいいんだよ!!」


「ちょっと、何の話か知らないけど二人共熱くなり過ぎだって!!今日はクリスマスなんだよ!?戻って姫ちゃんと楽しい時間過ごすんでしょ!!」


「⋯⋯⋯」


「除去と言っても、全部は無理な筈です。それと、今日は幸いにしてクリスマス。人の感情の発露が最も多い日です。高いエネルギーの妖怪が生まれるはず。今日を逃せば次はバレンタインしかありません」


「分かった、大物を狙えば良いんだな」


「ほら海人君、姫ちゃんとこ戻るよ!!」


優里が海人の手を引いて院内へと戻っていく。


「姫さんを助けたいと接触をしたのは間違いだったかもしれない。それでももう後に引く事は出来ない。せめて彼等を守らなければ」


ハクはそう呟いて、自身も姫の元へと戻って行った。




夏樹の家では、クリスマスの飾り付けと盛り沢山の料理がテーブルに並んでいる。特に焼けた七面鳥の肉の色艶が輝いて見える。


「ちょっと頑張った」


ぶい、と霞がピースサインして笑顔を見せる


「すごいね、料理得意とは聞いてたけど」


「今度一緒に作らない?」


「同じもの作れる気がしないかな」


「夏樹さん、不器用っすからねえ」


「バク、うっさい」


「最近落ち着いてるけど、進展はあったの?バクさんの妹さんの件」


「こないだようやく上に掛け合ったっす。めっさ怒られたんすが・・・協力して貰って植えられた種は除去してもらえるようになったっす。もし妹の目的が思いを集めて、何らかの祈りや思いを増幅する為に動いているなら行動を移すとしたらクリスマスの今日っすね。」


「つまり、今日であんたともお別れね。ようやく解放されるかと思うと涙が」


「ちょっとは寂しいとかないんすか」


「あると思う?」


「あっハイ」


準備も整った所で、パーティーが始まりクラッカーを鳴らす。


「メリークリスマス!!」


霞の家族との親睦会も兼ねたクリスマスパーティーは事の他上手く行った。霞の少ない思い出の写真を母親と一緒に眺めて霞も嬉しそうにしている。クリスマスプレゼントの交換もして、盛り上がった。お酒を飲める両親達は酔った状態で酩酊している。時間もそこそこに過ぎた頃合いになって、陰陽庁から連絡が入って玄関へと向かう。


「気を付けてね」


「ん、ちょっくらバクの妹さん達に会ってくる。絶対今夜でケリつけるわ」


夏樹はそう返して現場へ急行して行った。


ガラス張りで煌めく高層階の夜景の見えるレストランで、男女二人が向かい合ってワインで乾杯する。


「メリークリスマス」


「メリークリスマス、こんな所に連れて来ていいの?奥さん居るんでしょ?」


「なーに、帰ったらサンタになるから大丈夫」


「まぁ、いけない人。ここのレストラン高いんでしょ?」


「ああ、期待して良いよ」


ウェイターが、巨大なクリスマスケーキを二人の前に置いて、二人はきょとんとする。


「ちょっと、ウェイターさん間違ってるよ。まだ前菜すら来てないんだが・・・!?」


ウェイターの服を着た者の顔を見て男性はぎょっとする。目から血の涙を流した覆面マスクの巨漢が立っているのだから無理もない。


「カップルは滅すべし!!!」


二人の頭を押さえて巨大ケーキにめり込ませるテーブルが壊れて食器類が音を立てて地面に落ちる。そのレストランに居た全ての者が視線を巨漢に移した。


「リア充は爆発すべし!!!」


指をパチンと鳴らすと、カップル客が全員軽い爆発が起きて髪の毛が焦げている。


「しか~~~し!!!クリスマスにぼっちな奴とファミリーと子供は楽しんで良し!!!子供よ、ケーキをあげよう。フハハハハハハ!!!ではさらば!!!」


ガラスを割ってその場を去っていく。彼こそはクリスマス限定の嫉妬の化身。目から止まらぬ血涙を流す人の業を背負う者である。



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