The killer of paranoid Ⅲ 11
京子は後を追うよりも、紅葉を心配して病院へと向かった。病室の中、傷だらけで、包帯をしてベッドで寝ている紅葉の側に寄る。うっすらと目を開けて、そして紅葉も京子を見つめた。
「紅葉、助けてくれてありがとう」
告げると、紅葉は名前の通り紅潮し、そっぽを向いた。
「別に、これくらい当たり前でしょ」
私達の間なら、と言葉には続かない。それから少しずつ、お互いに言葉を重ねて、この数ヶ月の空白を埋めるように語り合った。その中で、今年のクリスマスは紅葉の家で行う事になり、二人の溝は縮まったように京子は感じた。事情を知る者達にお願いして本当に誘拐された事にし、紅葉の話に合わせて貰った。その日の夜、案の定陰陽庁の本部に呼ばれて足を運んだ。幹部と祖父、兄が居て銀杏の件であろう事は察しがついていたが、橘 咲という女性がニッコリ微笑んで怒りを露にしている。その隣には、見慣れぬ黒いスーツをした者達が数名。施設の地下にある建物の畳の間は今ではすっかり元に戻っている。
「力を使った場合は貴女を拘束、監視する事になりますと言ったんですが覚えてますか」
「⋯⋯ですよね」
「まあ、その事なんやがまず京子、式神をここへ」
言われた通り、銀杏を呼び出すとその場の全員から感嘆の声が上がった。
「京子の扱い次第で最凶と呼ぶべき存在や。迂闊に置いとく訳にはいかん」
次に祖父が声を上げる。
「うむ、この子には眠って貰う他あるまい。四聖獣と同じ封印を施し、封印の解除は同じく晴明の承認を必要とする」
晴明が銀杏を封印し、銀杏が燭台の炎となっていく。
「次に、我々魔法省からの提案ですが、即刻術式の再封印を提案致します」
咲さんがそう言うと、晴明は頭をかいて、
「それなんやけど、もうちょい待って貰えませんか。総理には許可貰ってまして」
紙がひらひら舞って、咲の前に辿り着く。
「根回し良すぎですね。何か謀でも?」
「いややわ、謀やなんて。うちらがどうこうより総理近辺が『もう1つの禁書』について思う所があるようでして」
「ではせめて簡易の封印を施させて頂きます。これは世界の為引いては妹さんの為と思って頂きます。2、3日はこちらで拘束させて頂きますよ」
「ま、やむなしかの」
水蓮が言うと、咲の隣のスーツの少年が手を上げる。
「あのー、すみません。僕ら警察の者なんですが、拘束の前に事情聴取させてもらっていいですか。呪術師が絡んでるって聞いて来たんですけど」
「バカ!!じっとしてろ!!」
隣の女性はぎょっとして、もう一人の男性は
慌てて口を塞いだ。陰陽庁の中で、京子は簡易の封印を施して貰った。封印、というものではなく、術式を使うと電気が体を走ると言われ、死にはしないが痛い目に合いたいならどうぞと言われてしまった。次に捜査第四課という立ち位置で設立されている呪術捜査官の3人から、彼等の特徴や遭遇した場所等を細かく伝え、ようやく長い1日が幕を閉じた。翌日から3日間の監視と魔法省への聴取も終わり、クリスマスがやってくる。




