ヒジョーにエッチな殺人事件 名探偵ちんちんと愉快なおバカたち
※グロいというわけではありませんが、返り血をたくさん浴びたおっぱいのイラストが出てきます。血が苦手な方は頑張って読んでください。
ドカーン!
「キャーッ!」
名探偵ちんちんの1日は〈おは尿〉から始まる。
朝目覚めると、ちんちんのちんちんはなぜか上を向いていることが多いのでそのまま放尿し、口でキャッチするのだ。
睡眠は疲れた身体を休め、成長を促す素晴らしい行動であるが、1つだけ欠点がある。水分補給だ。眠っていた12時間、ちんちんは一切の水分を摂っていない。ゆえに、起きたらすぐに水分である尿を摂取する必要があるのだ。
おは尿を終えると、ちんちんは顎に手を当てて考えた。
「そういえばさっき、爆発音と女性の悲鳴が聞こえたような。というか、それで起こされたような⋯⋯」
ブーッブーッブーッブーッ
ちんちんのちんちんが震えている。寝ている間はマナーモードにしてあるのだ。
「もしもし、ちんちんです」
『もしもし俺だ! 朝早くからすまないが、事件が発生した! 至急××××××まで来てくれ! 頼んだぞ!』ガチャ
腐れ縁の刑事からだった。この男はいつもちんちんの返事を待たずに電話を切ってしまうので、彼は少し苦手意識を持っていた。
「××××××かぁ⋯⋯ってこの住所、隣じゃないか!」
ちんちんは顔も洗わず、歯も磨かずにフリチンで家を出た。
前の道に出ると、隣の中田家の前に人だかりが出来ていた。
「お! ちんちん、もう来たのか! こっちだ、早く!」
大きなコートを羽織ったフリチンの中年男性がそう叫んだ。彼が先ほどの電話の主、落地 吸曜日である。
「もう来たのかってビックリしてくれたと思ったら直後に『早く!』って言われたよ⋯⋯なんなんだよアイツ」
ちんちんはボソッと呟きながら人混みをかき分け、中田氏の豪邸の前まで歩いた。
落地と向き合うちんちん。落地のほうが若干背が高く、少しばかり威圧感がある。
と、ちんちんのちんちんがピコンと動いた。
それに合わせるかのように、落地も年季の入ったちんちんをピコンと動かした。
ちんちんのお辞儀である。
フリチンが基本のこの地域には、すれ違った時や人に会った時にはちんちん同士で会釈をするという習慣がある。当然本人たちは会釈をせず、ちんちんだけピコピコ動かして挨拶するのだ。
「今さっき起きた事件なんだがな、ここの家主の中田 獅子捲さんが何者かに爆殺されたんだ」
「えっ、爆殺!? 爆殺ですか⋯⋯もしや、さっきの爆発音が!?」
「なんだ、知ってるのか?」
「家隣なんで。それにしても、中田さん家のご主人の下の名前、『ししまくり』だったんですね、ヤバ」
「いやいや、俺なんか『すいようび』だぞ」
「確かに、ぎゃはは」
「おい、あんま人の名前バカにすんなよ? ⋯⋯で、お前の聞いた爆発音ってのはどんなだったんだ?」
ちんちんはちんちんを弄りながら考えた。
「うーんと、確かドカーン! って聞こえて⋯⋯あ、その後女性の悲鳴も聞こえました!」
「なるほど⋯⋯彼女達の証言通りだな」
「達、ですか?」
「ああ、その時中田氏は愛人達と4P中だったそうでな」
「4Pて⋯⋯」
まだ女性を知らないちんちんは驚きを通り越して呆れ⋯⋯も通り越してただ遠くを見つめてちんちんをピコピコ動かしている。
「で、その愛人達は彼が突然爆発した恐怖から、訳も分からず叫んだって言ってたんだ」
「いや、人が突然爆発するなんてありえませんよ。恐らくその中に犯人がいますね。とりあえず家の中に入れてください。寒くなってきました」
桜の咲く季節ではあるが、まだ朝は寒いのだ。そもそもこいつフリチンだし。
「あ、警部! たった今中田さんの死亡が確認されました!」
落地を警部と呼ぶこのフリチンの青年は、いつも落地と行動を共にしている期待の新人・小柳健 角毛だ。
フルネームが長いので周りからは苗字だけ取って小柳 健、または小柳と呼ばれている。
「角毛くん、さっき落地さんから中田さんはちょっと前にはもう亡くなってたって感じで聞いたんだけど?」
ちんちんだけは下の名前で呼んでいる。
「すまんすまん、実は救急車で運ばれた頃はかろうじて生きてたんだがな、まぁ無理だろうなと思ってもう死んだって伝えてた! そのほうが話進めやすいし!」
「⋯⋯マ?」
小柳が唖然としている。
「んでちんちん、こちらの3人がさっき話した4Pしてた方達だ⋯⋯ってあれ? 増えてね?」
落地の目線の先には、血で真っ赤に染まった大きなベッドの上に座る血まみれの全裸の女性と、服を着た若い2人の女性と、クローゼットの前に立つ3人よりは少し歳上と思しき寝間着姿の女性と、その隣に全身青タイツの若い女性の姿があった。
「おい小柳、何があったんだ? さっきまでベッドの上の3人だけだったろ」
今にも脳天からニョキニョキと疑問符が生えてきそうな顔で落地が聞いた。
「えっとですね、あの寝間着の人はクローゼットに潜んでまして、あっちの青い人は押し入れで見つけました」
「ドラえもんかよ!」
「ウケる〜」
悪びれる様子もなく、自分が落地にドラえもん扱いされたことを笑う青い女性。
「ということは、容疑者が増えたということですね」
冷静に状況を見るちんちん。
「とりあえずひとりひとり話を聞いていきましょうか。まずはツッコミどころだらけの真っ赤なあなたからお願いしたいところですが⋯⋯その様子を見るに、おそらく事件の恐怖で精神に異常を来たしてしまっていますね、服も着れないほどに」
ちんちんの話し中にもかかわらず小柳が手を挙げ、口を開いた。
「いや、お腹にダイイングメッセージが書かれていたのでそのままでお願いしてるんです」
「ダイイングメッセージだと!?」
「なので彼女は元気ですよ。いや、元気ではないか、目の前で人爆発してるし。とりあえず話せる状態ではありますよ」
「なるほど⋯⋯」
ちんちんは女性に近づき、その身体をまじまじと見つめた。
「彼、爆発した時に必死に何かを言おうとしてたんですけど声が出なかったみたいで、私のお腹にこう書いたんです。血で」
女性は悲しそうな顔でそう説明した。
「うーん⋯⋯」
首とちんちんをかしげるちんちん。
「難しいな⋯⋯ギリシャ文字のω(オメガ)に、なんだこれ、『年』か? ん〜⋯⋯あ、年じゃなくて、4と5が重なってるのか。2つだから4545⋯⋯だとしてもなんだこれ」
ちんちんがちんちんを弄りながら考えていると、落地が後ろからトントン、と彼の肩を叩いた。
「ちんちん、また増えた⋯⋯」
落地がめんどくさそうな顔をしている。
落地の後ろを見ると、幸薄そうな顔つきの小柄な男性が立っていた。
「台所にいたらしい」
「あなた、なんで台所にいたんですか?」
ちんちんが詰め寄った。
「うぅ⋯⋯うぅ⋯⋯すみませんでしたぁ!」
男性が土下座の体勢になり、そう叫んだ。
「なんだ? こいつが犯人か?」
キョトンとしている落地。
「⋯⋯あなたが中田氏を殺害したんですか?」
ちんちんが確認する。
「えっ!? 殺害? なんのことですか!? 僕はただ勝手に穴を掘ってこの家の地下に住み着いてただけですよ! ビール取りに来たらちょうど警察の人に見つかっちゃって⋯⋯」
「なんだコイツ」
落地が呆れている。
「それにしても、中田さんが殺されたなんて⋯⋯犯人探してるんですよね、僕にも協力させてください!」
「ダメに決まってんだろ! それに今日はちゃんと名探偵がいるから、お前みたいなのは要らねーの!」
「分かりました⋯⋯しょぼん」
しょんぼりした様子でちょこちょこと歩いて外へ向かう男性。
「おいどこ行くんだ! お前も容疑者なんだぞ!」
「えぇーっ! だって僕はただの⋯⋯あれ、なんていうんだろ。刑事さん、僕ってなんていう犯罪者ですか?」
「は? そりゃおめー住居侵入罪だし窃盗犯だし⋯⋯いろいろだよ! とりあえずそっちに立っとけ!」
「はい」
落地に叱られ、他の容疑者と並ぶ男性。
「それでは仕切り直して、ダイイングメッセージのあなたからお願いします。お名前は?」
「十宝 笛良千代です」
「マジですか」
「マジです」
ちんちんの目玉が飛び出し、何を想像したのかちんちんのちんちんは赤べこのような動きをし始めた。
「事件が起きた時の状況を教えてください」
「私達3人は中田さんの愛人でして、4人でエッチしてたんですけどね」
「ふむふむ」
「そしたらなんか爆発して死んじゃったんです」
「なんか爆発て、ふふ、ふほ、ふほへへっ」
笛良千代の説明に少しツボってしまったちんちんは、ちんちんをつねって自分に喝を入れた。
「多分お腹に爆弾か何かがあって、それが爆発したんだと思います。お腹が爆発して色んなものが出てきて、多分喉も焼けてて声が出せなくて、それで私のお腹にダイイングメッセージを残したんだと思います」
「アリバイはありますか?」
こういう場面で探偵や刑事がアリバイを聞くのは定番である。
「いや、ないですよ。ここにいたって言ったじゃないですか。でも私は犯人じゃないですし、多分この2人も違うと思います」
「なぜそう思うんです?」
「だって私達、中田さんのことが大好きだったから⋯⋯」
笛良千代がそう言うと、2人が静かに泣き始めた。そんな2人を見てか、しばらくして笛良千代も涙を流し始めた。
「では次、あなたお願いします」
ちんちんはそう言って泣いているうちの1人にちんちんを向けた。
「ひぐっ⋯⋯えぐっ⋯⋯私は、尾満 勲と言います⋯⋯」
それを聞いたちんちんは「ん? この声⋯⋯」と声を漏らした。
「勲兄さん、無理しないで、あたしが言うから」
隣で泣いていた女性が勲の肩を抱いて言った。
「兄さんということは、勲さんは男性なんですね?」
「そうです。兄は昔から女装が好きで、周りから嫌なことを言われてもずっと女装を続けてきました」
「小桃、ありがとね。もう大丈夫だから、自分で話すよ」
「では、お願いします」
ちんちんが続きを話すよう声をかける。
「学生時代に特にバッシングがひどい時期がありまして、その時の私はいつ壊れてもおかしくないような状態でした。そんな時に出会ったのが中田さんなんです。彼は私を可愛いと言ってくれて、よく会ってくれるようになりました」
「なるほど⋯⋯」
尿意を催したので、その辺に落ちていた洋服を拝借して、音がしないように、静かにおしっこを染み込ませながら頷きながら話を聞くちんちん。
「小桃が中田さんに会いたいと言うので会わせてみたら意気投合しちゃって、それから私達兄妹は中田さんと仲良しになりました。いつもお小遣いもくれましたし、本当に大好きでした」
「うぅ⋯⋯つらかったね、つらかったねぇ」
涙を流しながら何度も頷くちんちん。ちんちんから出る真っ黄色の涙もまだ洋服を濡らし続けている。
「ちんちん、俺らちょっと昼休憩行ってくるわ」
そう言って落地が小柳を連れて屋敷を出て行った。長くなると踏んで昼飯を食べに行ったのだろう。
「では次、あなたお願いします」
ちんちんはそう言ってクローゼットの前に立っている女性を指した。ちんちんで。
「赤井手 瑠奈よ。私も犯人じゃないわ。クローゼットの中に勝手に住み着いてただけよ」
「え、あなたもですか? ここってそんなに住み着きやすいんですか?」
ちんちんが思わず訊ねた。
「いや狭いしいつ開けられる分かんないから常にドキドキよ」
「なんだお前」
ちんちんの本音が漏れた。
「次お願いします」
全身青タイツの若い女性にちんちんを向けるちんちん。
「間出 市子だ。ボクも中田は殺してないよ。勝手に押し入れに住み着いてただけだから」
「あのあなたたち、殺人さえしてなければ何を暴露してもOKだと思ってません? この後中田さん殺害とは別件で普通に捕まりますからね? ⋯⋯はぁ、やれやれ」
やつれたちんちん。
「最後、あなたお願いします」
疲労によって萎びたちんちんを地下に住み着いていた男性に向けるちんちん。
「玉木越 慎吾です。さっきも言いましたけど僕は中田さんを殺していません。中田さんがいなくなって困るのは僕なんですから」
「まあそうだろうね」
ちんちんはちんちんを抱えた。犯人に繋がる手がかりが中々得られないからだ。
「それにしてもこのダイイングメッセージはなんなんだ。オメガに4545⋯⋯一体どんな意味が隠されているんだ⋯⋯」
ちんちんはまたちんちんを弄りながら考えている。
「ハッ! もしや、このωはオメガではなく、おっぱいのことを表しているのでは!? 4545はつまりシコシコ! おっぱいでシコシコするのが好きな人間、つまりパイズ⋯⋯エッフン、ゴホン、が好きな人間が犯人だぁーっ! ⋯⋯ってそんなわけないよな。それにそうだとしてもこんなの誰にも言えないわ⋯⋯はぁ」
大声で独り言を言うちんちん。
「お〜〜い戻ったぞぇーぃ!」
その声に反応してちんちんが部屋の入口を見ると、そこには真っ赤な顔をした落地が立っていた。
「酔っ払ってんじゃねーか!」
ちんちんは激怒した。大噴火と言ってもいい。ちんちんのボルケーノ。
「ちょっと警部どいてください! ほら! もう! あ、ちんちんさん! この人見てください! さっき玄関で拾ったんでぇ〜す! ヒック!」
小柳が60代くらいの男性を引きずりながら部屋の中に入ってきた。
「角毛くんも飲んだのか⋯⋯その引きずってるの誰? 関係ない人に迷惑かけてないよね?」
ちんちんが呆れて言った。
「離し⋯⋯て⋯⋯ください」
引きずられている男性が口を開いた。
「ふん、ほらよ!」
そう言って小柳は男性をちんちんの前に放り投げた。
「大丈夫ですか? あなたは誰で、なぜ玄関にいたんです?」
「私はこの屋敷の執事の大梨 力です⋯⋯今日は寝坊してしまいまして、起きてきたら旦那様が殺されたと騒ぎになっていて、そしたらいきなりあの人に殴られて⋯⋯ぐふっ」
口から血を流して辛そうにしている大梨。
「ここの家の方だったんですね。角毛くん、すぐに病院に連れて行ってあげ⋯⋯ダメだな、後で僕ちんが連れて行きます。すみません大梨さん、そこで少し休んでいてください」
ちんちんが部屋の隅に大梨を寝かせると、玉木越と赤井手と間出が大梨に暴行を加え始めた。
「なにしてるんだ!」
ちんちんが怒鳴っても彼らの暴行は止まらない。顔や腹を殴る蹴るのオンパレードだ。
「やめんかこの海坊主どもがーーーーっ! ⋯⋯お猿さんのヒトデ型のお尻から無限に出るホイップクリームは激苦」
酔っ払った落地が回転しながら突っ込んできたおかげで3人はそれぞれ部屋の隅に吹き飛ばされた。
「⋯⋯3人とも、なんで大梨さんを殴ったんですか」
ちんちんが静かに言った。
「ぐ⋯⋯分かってますよ、私に喋られると困るんですよね、あなたたちは⋯⋯」
大梨が苦しそうに言った。
「大梨さん、彼らの弱みを握っているんですか?」
ちんちんがちんちんを輝かせて聞いた。
「こいつァまさに、生きたシーラカンスじゃあ!」
相変わらず訳の分からないことを言いながら跳ね回っている落地。
「なんか美味そうな響きだなオイ」
それを追いかける小柳。
「弱みというか、動機ですね。赤井手さんと間出さんは旦那様にお金を借りています。そして玉木越くんは⋯⋯ぐはっ!」
そう言いかけて大梨は血を吐いて気を失った。
「大梨さん!」
「大丈夫ですよちんちんさん! 峰打ちです!」
小柳が楽しそうに踊りながら言った。タコのように身体をくねらせている。
「信用出来るか! すぐに救急車を!」
「私医者なんですけど、大丈夫だと思いますよ」
笛良千代が言った。
「そうなんですか!? けっこうヤバそうに見えるんですけど!?」
「は〜眠っ」
パニック状態のちんちんを他所にマイペースに横になるドラえもんもとい間出。
「あー私うんこしてこよー」
そう言って部屋から出ようとする赤井手。
「そういえばビール取りに来たんだった、危ね危ねー」
台所へ向かう玉木越。
「自由すぎるだろなんなんだお前らーーー! ⋯⋯はぁ」
怒鳴りながらその場にへたり込むちんちん。
「もう疲れた⋯⋯少し休憩だ」
ちんちんが間出の隣に寝転がると、彼女がなにやらボソボソ独り言を言っているのに気がついた。
「一生ポチだろう猫。後ろダチョウっぽい猫。脱法チョロいウシ猫。ねちっこいだろうウシぽょ。仕打ち代行ネロっぽょ⋯⋯中々やるな蜜柑プラム」
「なにそれ」
「ああ、ボク実は『猫大長老七宝』って名前でネット活動してるんだけど、去年友達が送り付けてきたボクの名前のアナグラムを見つけてね、ちょっと見返してたの」
「アナグラムって?」
「単語の文字を並び替えてまた別の単語とか文章を作る遊びだよ。面白いでしょ。特にこれとか、猫なのにポチって言ってるし」
仲間を見つけたような生き生きとした顔で話す間出。
「ああ、確かにポチって犬のイメージあるもんね。その『ネロっぽょ』もなんか可愛いかも」
「でしょでしょ! ちなみにボク、間出 市子のアナグラムに『でかいちんこ』っていうのがあるよ!」
「でかいちんこ!? ヤバっ!」
だんだん楽しくなってきたちんちん。
「ふースッキリしたぁ⋯⋯あれ? あんた達めっちゃ仲良くなってない?」
うんこから帰ってきた赤井手が言った。
「赤井手 瑠奈⋯⋯で、か、い、⋯⋯あなる! 『でかいあなる』が出来るよ!」
嬉しそうにちんちんに教える間出。
「ちょ、『でかいちんこ』に『でかいあなる』て! 勘弁しちくりぃ!」
笑い転げるちんちん。
「グビグビグビ⋯⋯くぅ〜っ! この喉越しがたまんねぇなぁ!」
アサヒスーパードライのロング缶を片手に部屋に戻ってきた玉木越。
「玉木越 慎吾⋯⋯たま、きん、きんたま⋯⋯『きんたまごしごし』だ! きんたま、ごしごしだ!」
「ちょwもうやめてww死ぬwwwww」
笑いすぎてネット民のようになるちんちん。
「きんたまごしごして! きんたまてwww⋯⋯ハッ!」
何かを閃いたような顔のちんちん。
「そうか、ごしごしだ! 4545じゃなくて、5454なんだ!」
周りの皆は首をかしげている。
「ちんちん⋯⋯なにがごしごしなんだ?」
酔いが覚めた落地が困ったような顔で聞いている。
「きんたまですよ!」
「きんたまだと!?」
「ダイイングメッセージですよ!」
「ダイイングメッセージだと!?」
「いえあ!」
まだよく分かっていない落地とハイタッチを決めるちんちん。
「だから落地さん、この『ω』はオメガでもおっぱいでもなく、きんたまだったんです!」
「は? これがきんたま? どこがだよ」
「落地さん知らないんですか? ちょっとページ出しますね⋯⋯あった、これです! この記述です!」
『人という字は、「ω」の真ん中をちょっと引っ張った形をしています。
ということは、「ω」は人の源。つまり、祖先なのです。
これ、たまたまだと思いますか?
タマタマだと思いますか?
そうですよね、タマタマに似ていますよね。
人類はタマタマだったのです。』――〈七宝の書・「人」という字の成り立ち〉より引用
「ということで落地さん、きんたまごしごし、つまり玉木越 慎吾さんが犯人です!」
「そ、そんな高度なダイイングメッセージを死の間際に!? しかも爆発というやばい状況で!? すげーな中田氏!」
「ちょっと待ってください!」
玉木越が叫んだ。
「勝手に話を進めないでください! 僕には動機がありませんし、爆発物なんて触ったこともありませんよ!」
「動機ねぇ⋯⋯恨んでたんじゃねぇの? さっき大梨さんも何か言いかけてたし、なんかあるんだろ? 疑われるような材料が」
玉木越の肩に腕を回して静かに語りかける落地。その姿はまさにベテラン刑事そのものであった。
「でも、中田さんを恨んでる人なんているとは思えないけどねぇ。私達は確かにお金を借りてるけど、1度も催促されたことなんてないわよ」
でかいあなる、もとい赤井手 瑠奈が言った。
「そうです。僕は中田さんがいないと生きていけませんからね。なんたってこの地下に住んでるんですから」
少し笑みを浮かべて反論する玉木越。
「どうだちんちん? 我々全員を納得させることは出来そうか?」
心配そうに落地が言った。
「それは分かりませんが、少なくとも中田氏が残したダイイングメッセージの人物は100%玉木越さんで間違いないと思います」
自信満々の表情のちんちん。心なしかちんちんも少し上を向いている。
「分かりました。100億歩譲って僕に動機があったとして、爆発物はどう説明するんです? 時間差で起動する爆弾を本人に気付かれずに飲ませたとでも言うんですか? どうなんですか名探偵さん!」
「まぁ、そうなんじゃないですか? 時限爆弾飲ませたんでしょ? もう白状しましょうよ」
「だから僕は⋯⋯!」
言い合いが始まるかと思われたその時、部屋の隅から「うぅ⋯⋯」と唸るような声がした。大梨が目覚めたのだ。
「大梨さん目覚めたんですね! 良かった!」
「あーよく寝た。さっきの続き、玉木越くんは以前旦那様に婚約者を寝取られています」
「ということは、玉木越さんには中田さんを殺す動機が十分にあったわけですね」
「いや、別に気にしてませんよ」
玉木越が口笛を吹きながら言った。
「なわけないだろ」
ちんちんが怒りの表情でちんちんを向けた。
「とにかくな、ダイイングメッセージの意味が分かった時点でお前でほぼ濃厚なんだよ」
落地がポッケから犯人を捕まえる輪っかを出しながら言った。
「待ってくださいよ! ダイイングメッセージが全てだって言うならなんでもありじゃないですか! 事件には全く関係ないけど恨んでいた相手とか書いておけばその人を捕まえられるんですか!?」
必死に主張する玉木越。
「確かにそうか⋯⋯」
ちんちんがまたちんちんを抱えた。
「いやでもコイツ犯罪者だぞ? 絶対逃げようとしてるだけだって。どう考えてもコイツだよ。動機は十分、ダイイングメッセージも一致、どっかのタイミングで時限爆弾飲ませたんだろうよ。決まりだ」
落地が玉木越の右腕を掴みながら言った。
「あ、でもそういえば」
何かを思い出したように話し出す執事の大梨。
「私の知り合いに、旦那様に婚約者を寝取られ、両親を殺され、全財産を奪われ、大学を退学させられ、暴力を振るわれ、腕と顔を移植されて阿修羅にされた人がいます」
「なんでそんな奴がいんだよ。動機の塊じゃねーか」
信じられないといった表情の落地。
「あとなんで忘れてたんだよ。それに、中田氏は誰にも恨まれないような素晴らしい人間なんじゃなかったのか?」
「確かに旦那様は素晴らしいお方でした。ですが、全員に優しくしていてはストレスは溜まっていく一方。そこで旦那様ははけ口を探したんです。それで見つかったのが彼でした。彼を呼びますね⋯⋯」
そう言って大梨は電話をかけた。皆それを見て唖然としている。
ほどなくしてその男はやってきた。大梨の話の通り阿修羅だった。
「大梨さん、なんの用ですか? ⋯⋯え、なんですかその血は!?」
阿修羅の男がベッドの血を見て驚いている。
「彼が真犯人です」
大梨が指をさして言った。
「えっ!? なんの話です!? えっ!?」
状況が掴めず、パニック状態の阿修羅。
「やっぱこいつじゃないんじゃないか? こんなパニックになってるし。もう玉木越でいいって」
どうしても玉木越を犯人にしたい落地。
「そう見せかけてるだけですよ」
どうしても阿修羅を犯人にしたい大梨。
「いやでも⋯⋯あ、そうだ! ダイイングメッセージの件があるだろ! それはどう説明するんだ!」
落地は冷や汗を流し、「危ねぇ危ねぇ」という顔をしてニヤッと笑った。
「君、刑事さんに名前を教えてやってくれ」
大梨が阿修羅の男に言った。
「タマキン・ゴシゴーシです」
「なんだお前ぇぇええ!!」
タマキンに掴みかかる落地。
「ふざけんなー! なに人だお前!」
落地の怒号が止まらない。
「ちなみに彼、爆弾会社勤務です」
「なんだよ爆弾会社って! せっかくまとまりかけてたのに出てくんじゃねぇよ! こっちは他の事件もいっぱい抱えてんだよちょっとはこっちの事も考えろーーー! アホーーー!」
怒り狂う落地。
「もういい、関係ない! コイツを連れていく!」ガチャッ
そう言って落地が玉木越に手錠をかけた。
「警部! それは違うと思います!」
酔いが覚めた小柳が立ち上がって言った。
「真実を無視して無実の変態の未来を潰すつもりですか」
「おい誰が変態だ」
「だってこんな後出し⋯⋯ダメじゃん」
口を尖らせ、べそをかく落地。
「警部、ドラマの見すぎですよ。せっかく真犯人を見つけたんですから、さっきまでの容疑者にこだわる必要はないんです。謎解きとか関係ないですから」
「だってさ、今までさ、せっかくさ、推理頑張ったのにさ、こんなさ、いきなり出てきてさ! 意味分かんないことをさ! 言い出してさ! うぅ⋯⋯うぅ⋯⋯!」
下唇を突き出し、今にも泣きそうな震え声の落地。
「推理してたの僕ちんですけどね。あんた達昼間っから飲みに行ってたでしょ」
「チンチンがビンビンになる薬だと偽って大きめのカプセルに入れて飲ませました。まぁ彼は気づいてたみたいですけど」
突然キンタマがそう言った。
「ワァーーーーーーーーーッ! なんでいきなり自白すんだよ意味分かんねぇよもうヤダァァァァアアア! 手錠1個しか持ってないから阿修羅なんて捕まえらんねぇよもう刑事なんてやめてやらぁうああああああああぁぁぁぁーっ!」
狂ったように号泣しながら屋敷から出ていく落地。
「それじゃあ角毛くん、彼に手錠を」
「いいんですか? ちんちんさんは。あいつみたいに騒がないんですか?」
小柳が不思議そうに言った。
「あいつて、上司なのに⋯⋯。いいよ、僕ちんは謎解きゲームをしに来たんじゃないから。中田さんの無念を晴らすために真犯人を探していただけだからね。真実が分かってなによりだよ」
「探偵の鑑じゃないっすか」
「えへへ」
そう。大事なのは真実であり、謎解きを楽しむことではないのだ。被害者の無念、遺族の苦しみを少しでも軽減させるため、真実を追求し、例え後出しみたいなぽっと出のキャラだろうとしっかり逮捕する。それが最も大切なことなのである。ほらそこ、適当に畳んだ言い訳とか言うな。殴るぞ。
面白かったら感想ください!
面白くなかったら書かなくてOKです!
またね!