大きい後輩と小さい先輩
思い付き短編です。
身長差ラブコメを書いてみたかっただけです。
よろしければお楽しみください。
兎有高校体育館裏。
不良風の生徒が気弱な生徒を壁に押し付けていた。
「なぁ、持ってんだろ……? 二千円でいいんだよ……。ちょっと貸してくれよ……」
「ま、また……? ま、前に貸したお金も返してくれてないのに……」
「ごちゃごちゃうるせぇな! 痛い目にあいたいのかコラァ!」
「やってみろオラァン!」
「!?」
響き渡る声に、不良風も気弱も驚いて顔を向ける。
そこには太陽を背にそびえ立つ、二メートルを超す大男。
不良風はあっさりと戦意を喪失した。
「俺のシマで何してんだオラァン!」
「ひ、ひいぃ……! ご、ごめんなさい……!」
「ごめんで済むと思ってんのかオラァン!」
「も、もう二度としません!」
「それだけかオラァン!」
「い、今まで取った金も返します!」
「ちゃんと返せんのかオラァン!」
「ば、バイトします! だ、だから勘弁してください……!」
凄まじい圧力に半泣きになる不良風。
そこに駆けてくる小さな足音。
「待ちなさい! 風紀委員です!」
「あぁ!? 何だオラァン!」
「何をしてるんですか!」
「カツアゲしてた野郎をシメてたんだよオラァン!」
「た、助けて……!」
不良風の半泣きの声に、風紀委員の少女は大男との間に駆け込んだ。
身長百五十センチに満たない小柄な女子生徒が、精一杯身体を大きく見せようとするコアリクイのように両手を広げる。
「風紀委員がカツアゲしてた奴をかばうのかよオラァン!」
「たとえ悪事を働いた人だとしても、あなたが個人的に罰を与えたら、それは私刑と一緒です!」
「死刑!? し、死にたくなぁい!」
「じゃあお前ら風紀委員ならそいつの悪事を正せるって言うんだなオラァン!」
「全力を尽くします!」
「……」
大男は風紀委員の言葉にしばらく黙った後、地面を蹴るようにして踵を返した。
「……ふぅ、何とか引いてくれたわね……」
「た、助かった……」
「でもカツアゲは犯罪よ。先生達に報告して、そこの彼にもちゃんと謝罪してもらうわ」
「勿論です! もうあんな怖い奴に目をつけられたくなぁい! 優、今までごめんなぁ!」
「う、うん……」
不良風が気弱に泣きながら謝るのを見て、風紀委員は嬉しそうに頷くのだった。
「やー! ばっちりだったねー小正路君!」
「どうも……、大岩先輩」
風紀委員の部屋で、小正路と呼ばれた大男と大岩と呼ばれた風紀委員はハイタッチを交わした。
もっとも身長差が五十センチ以上あるので、小正路的にはロータッチとなる。
テンションと同様に。
「あの、これで本当に友達できるんですか? 何かビビられてむしろ避けられそうなんですけど」
「最初はそんなもんよ! でも小正路君の活躍で学校が平和になったら、絶対人気者になるって!」
「本当かなぁ……」
先程までの威圧は何処へやら。
大岩の明るいノリに、小正路は首を傾げる。
「任しときなさい! あたしの言う通りにしてたら人気者のモテモテよ! それでも万が一うまくいかなかったら、その、あたしが責任取るからさっ!」
「せ、責任!? そ、それって……」
高角度の視線がぶつかった。
そこに熱が生まれる……、かと思いきや。
「長身で巨乳の女の子を紹介してくれるって事ですか!?」
「……」
一瞬ですうっと冷えた。
「あれ? 先輩、どうしたんですか?」
「うっさい馬鹿! いいから次行くよ!」
二人の距離はその身長差のように、まだまだ遠い……。
読了ありがとうございます。
こう、ぐいぐい引っ張る低身長女先輩が、鈍感な高身長男後輩にやきもきしながらあれこれアプローチする話、いいですよね。
頑張れ大岩先輩。
楽しんでいただけましたら幸いです。