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創作落語 カニかま

作者: ヨッシー@

創作落語「カニかま」


江戸っ子ってのは、せっかち仕方がねぇ、

何でもかんでも略して喋っちまう。

困ったもんだ…


てえへんだー

てえへんだー先生〜


何だい、朝っぱらから、

やぐらの半鐘が鳴るような大声を出して、

てえへんなんですぜ〜ハアハア、

落ち着け、落ち着け、

まあ、お茶でも一杯飲んで(お茶を差し出す)

へい、すんません。

ゴクゴクゴク、プハーッ、美味い!

じゃあ、ご馳走さん。(帰ろうとする)

こら、ご馳走さんじゃないよ、どうしたんだい、いったい、

あっ、そうそう、

カニかま〜、カニかま〜

カニかま?何だい、それ、

カニかま、ですぜ〜

カニかま、って何だい?

カニかま、っていったら、カニに噛まれた、ですぜ〜、

カニかま、って言うから、カニの蒲鉾かと思ったよ。何でも略すりゃいいってもんじゃないよ、お前さん。

へ〜い、言いやすくて、つい、

そうか、ところでカニに噛まれたって大丈夫だったかい?

ブルブルブル(顔を振る)あっしじゃ、ありませんぜ〜

うちの幹太が、カニかまなんですぜ〜

何か、ややこしい会話だな。まるで、幹太がカニの蒲鉾に、なったような言い方だよ。それで、

へい〜、今朝、幹太が一人で浜に遊びに行った時ですぜ、波うーぎーで楽しく貝拾〜していたら、

波うーぎー……波打ち際、貝拾〜……貝拾いだな、

そうそう、

すると、大きな、大きな、カニが現れた。

そりゃ大変だ。どのくらい大きかったんだい?

へい、こーのくらい、大きかったんですぜ〜

こーのくらいっても、解らんよ。

こーーーのくらいですぜ、(両手をめいいっぱい広げる)

こーーーのくらい?

こーーーのくらい、

こーーーのくらい?

こーーーのくらい、

解らんなー、

幹太が、こうやってたんですぜ〜先生〜

まあいいや、で、

いやいや、でいじょうぶじゃないんですぜ〜

うで赤〜うで赤〜!

うで赤〜?……腕が真っ赤だな、だんだん慣れてきたぞ。

しかしね、先生〜うちの幹太は、たいそう肝が座った童でね、その大きなカニ立ち向〜

カニ立ち向〜?ああ、カニに立ち向かっただな。

そうそう、

大したもんだ、お前さんところの幹太はよ〜

幹太は、飛び掛かって来るカニを、掴投〜掴投〜、

掴投〜掴投〜?……掴んでは投げ、掴んでは投げ、だな、どっかで聞きたことあるような台詞だがまあいい、それで、

へい〜、幹太が必死にカニ戦していると、奥から大きなカニが、ブーブーとやって来た。

ブーブー?さて、何の略かな?

ブーブーてのは、音ですぜ。

面倒くさいなぁ、略の仕方が解らん。そりゃ、泡のことかい?泡はブクブクだけど、ああ、その略か!

で、そいつはカニの親分だな、

そうですぜ、そのカニ親が羽広で襲いかかって来た!

羽?

カニって羽が生えてたっけ?

知らないんですか、昔から生えてますぜ〜

そうだったかな?

私の知っているカニは、羽なんか生えて無かったような、

甲羅のどっかに隠れているのかな、まあいい、それで、

へい、カニは長口を掲げて、幹太に飛び掛!

長口?

カニの口って、そんなに長かったっけ?

知らないんですか、昔から長いですよ〜

うーん、私の知っているカニの口は、小さくて目と目の間にあったような。あの口は口じゃなくて本当は別の所にあったんだ。そうかそうか、それで、

追い詰められたカニ親は、幹太の腕ガブ噛〜!

ええっ、そりゃ大変だ、

カニ親、幹太の血ドク吸い始〜、

血を吸う?

へい、あいつは吸血鬼ですぜ〜

吸血鬼?何だが、けったいなカニだな〜お〜怖、

お父〜、

……

お父〜、

……

幼い子供がやって来た。

おお、幹太!いいとに来た、こっち来い。

おじちゃん、こんち〜

こら!こんち〜、じゃねぇだろう、こんにちは、だ!略するんじゃねぇ、

お前さんが言えるのかよ!さっきから略しまくりじゃないか。

こんち〜、

すんません〜困った奴で〜

まあ、子供だから仕方がない。ところで幹太、噛まれた腕は大丈夫かい?

だいぶ〜、

大丈夫の意味だな。何か、もう完全に慣れた。ちょと見せて見ろ、

幹太は、ほいっと袖を巻くって腕を見せた。

腕には、小さな腫れがポチッと赤く一つあった。

それか?

そ〜、

そうか、大した怪我じゃなくてよかったな。

ところで幹太、歳はいくつだい。

み〜

三つか、

すいやせん。まだ、言葉もあやしくて〜

そうか、

おっ!!

先生は、腕を組んで思いついた。

幹太、「なにぬねの」っていってみな、

へ〜い、なにぬねの〜

あんたじゃないよ、幹太だよ!

おおっ、すんません〜

な・に・ぬ・ね・の、ほい、幹太。

な・ぬ・ぬ・ね・の、

なぬぬねの?

幹太は、まだ「なにぬねの」って言えないんですぜ〜特に「に」が言えなくて〜

なるほど、

お前さん、さっきから聞いていた話だが、幹太が噛まれたのは、カニじゃなくて、蚊じゃないのかい?

えっ、

幹太、カニじゃねぇのかい?

うん、カニかま〜

略するんじゃねぇ〜こら、

うん、カにかまれた〜

カ〜カニ、カニ〜カ?

カニかま、カに噛まれた、蚊に噛まれた、カニに噛まれた、

おおっ、幹太!お前、


「に」って言えるじゃねぇか〜



おしまい。

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