プロローグ
初めまして、ニレノ木です。
宜しくお願いします!
1429年、5月4日正午
フランス、オルレアン______
男達の雄叫びと共に、フランス軍はイングランド軍が立てこもるサン·ルー砦へ攻め寄せた。
「急ぎイングランド軍を撃破せよ!なんとしても敵の増援が来るまでにサン·ルーは落とさねばならん!」
ジャン·ド·デュノワ___フランス貴族兼フランス軍指揮官
「弓隊は攻撃を開始せよ!」
フランス弓兵はその合図で一斉に矢を放つ
矢が雨のようにルー砦内に降ると、イングランド軍の悲鳴が聞こえた
「イングランドの守備隊が引いたようです、突撃なされますか?」
「いいやまだだ、弓兵による攻撃を続ける」
(相手はあのイングランド……早まってトゥーレルの二の舞になることは防ぎたい………)
「デュノワ様、サン·プエール砦から敵の援軍が出たとの情報が……」
「そうか…遂にお出ましか」
北側に位置するサン·プエール砦から、ここ東側のルー砦にイングランドの援軍が迫るとの情報だった。
「おい!"ジャンヌ"はどこだ?」
「『ジャンヌ・ダルク』ですか」
「ここは一つ、救国の少女様にお助け願おうじゃないか」
デュノワは嫌味気味に言った
「それが……彼女は眠ってしまって、天幕から一向に出て来ないと………」
それを聞いてデュノワは微笑んだ
「はは、勝利の女神もうたた寝くらいはするだろう」
「しかし、まだ16歳ですよ……流石に応えるものがあったのではないでしょうか?」
「だから女など戦場には合わんと言っただろう」
「ですが…彼女のお陰で我が軍の士気が向上しているのも確かです」
「君も見ただろう?あの華奢な体では槍もまともに振れまいよ」
そんな彼の背後に迫る影一つ
「っ!でゅ…デュノワ様!」
「綺麗な身体が傷ついてしまっては彼女とて追々困ることだろう……初めて見た時から思うのだが、やはり彼女には農作業がピッタリだと……そうは思わんか?」
「ええ、父が立派な農家ですから」
「そうだろう?やけにしっくりくる…な……と…………」
デュノワが振り向くと、そこには彼を冷ややかな目で見下す"彼女"が立っていた
「じ、ジャンヌ!いつからそこに……!?」
「デュノワ殿が私の身体を気遣って頂いたところ、でしょうか」
デュノワの額を冷や汗がなでる
「は、はは……よく眠れたかね預言者殿…」
「戯言は止しなさい……それよりも、現在の戦況は?」
ご機嫌斜めなジャンヌを横目にデュノワは戦況を語りだす
「……サン·ルー砦はあと3時間もあれば落ちるだろう、問題は北のサン·プエール砦から敵の援軍が来ているということだ」
「……サン·ルー砦は1時間で落としなさい、サン·プエールの敵軍は私達が受け持ちましょう」
「1時間で!?……無茶言うな!」
作戦参謀の一人が言う
「なぜです?1500の兵を有しながら、半分以下の敵軍を殲滅するのに何故3時間も掛かるのですか?」
「侮るなジャンヌよ、相手はイングランドだぞ?」
デュノワは言う
「10年前のアジャンクールを知らんのか?フランス軍はイングランド軍の3倍近い兵士を有していながら圧倒的な敗北を喫したのだ」
アジャンクールの戦い―――
1415年フランス、アジャンクールにて発生したイングランド軍とフランス軍の一大決戦。
約2万の大軍勢を率いたフランスは、己の3分の1程のイングランド軍に完膚なきまでに叩きのめされた。
現在のフランス軍の劣勢はこれが根源である。
「焦るのは分かる、しかし数任せで突っ込んだところでどうにかなるものではない、どうにか流れを見極める必要がある………………」
「フランス軍が何故大敗したのか、理由は簡単です」
デュノワはそれに答えた
「何故だ?3倍の兵を持つフランスはなぜ負けた?」
ジャンヌは言う
「それは、イングランドの戦術が優れており、我が軍の戦術が貧弱だったからです」
「なんだとッ!?」
ジャンヌの回答を聞いて、それまで黙っていたフランス参謀達が一斉に火を吹いた。
「お前のような生娘に戦争のやり方など分かるものかッ!」
「………そんな調子では勝てる戦いも勝てないでしょうね」
「なにを〜ッ!?」
「……もう止めよ、先ずは目の前の標的に注力するのだ」
デュノワが参謀達をなだめる
「ではジャンヌ、君には作戦があると?」
「………はい、デュノワ殿」
「少なくとも、戦況は今よりもマシになる筈です」
「ほう……一体どういう作戦なんだね?」
デュノワがそう尋ねる
「………私達がオルレアンに来て2日がたった日の夜、私はオルレアンの森である者達と出会いました」
「それは、全身を"草色の服"に見を包み、"まるで大岩のような巨大な箱"を自在に操る者達です」
「………なんだと?」
その話を聞いて司令部はざわめく
「それだけではない……見たこともない"小型の大砲"や、あの"アーキバスと酷似した銃"らしき物まで………」
「彼らは…携えていたのです」
デュノワは首をひねる
「ううむ……俄には信じれんな……彼らとはそもそも何者なんだ?」
「どこかの国の兵士かね?それとも、資金のある盗賊か?」
すると、ジャンヌが答える
「………彼らは自らをこう、称していました」
「Force d'autodéfense………」
『自衛隊……と』
つづく
近いうちにまた投稿します。
今後とも宜しくお願いします!