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ファイル69王立図書館の妖精と秘密の依頼③

よろしくお願いします

 エドガーへ協力を依頼する手紙を送ったアイリーンだったが、数日後に返事が届いた。

 彼からの返事は直接理由を説明せよという内容だったので、アイリーンはエドガーに会いに行くことになった。


(どうやってエリ様のことを誤魔化したらいいのかしら?)

 いつもエドガーの追及には苦悩しているので、今度はどんな追及が来るのか、秘密を守り切る方法を考えていたアイリーン。


 しかし、実際に会ったエドガーは、「それはいいね。館長には私から言っておくから」とあっさり許可を出したのだった。その状況にアイリーンは拍子抜けし不思議に思ったが、それと同時にレティシアの秘密を守れたことに安堵した。


(さて、ニック達に参加できる子を集めてもらわないと。マギーにも少し手伝ってもらいましょう)


 翌日、アイリーンは王立図書館へ向かい館長と詳細を話し合った。王立図書館の館長は、エドガーから話が伝わっていたこともあってか、あっさりと門番として立つ子供たちを受け入れてくれた。


 話し合いの結果、毎日四人の子供が門の前に立つことに決まった。

 午前午後の交代制で、二つの入り口に二人ずつとなる。王立図書館は中立区にあるため、入口が平民街側と貴族街側にあるのでこのような配置となった。


 館長はとても優しいおじいさんで、孤児院の子供たちにも親切な素晴らしい人だ。

「ほほほ。未来の司書騎士達が見られるとは、大変楽しみです」

 ふさふさの口ひげをさすりながら穏やかに笑う館長にアイリーンはしっかりと礼を伝えるのだった。


 子供達の準備はと言うと、ニック伝いにガーネットチルドレンだけでなく、孤児院の子供たちの中で将来司書騎士になりたい子や興味のある子を募り、十数名が名乗りを上げた。

「よし! 準備は整っているわね! それでは、ガーネットチルドレン! 出動!!」


「はいはい、おー」

「おー!」

 アイリーンが司令官らしくびしりと出動宣言をすると、ニックの生返事を筆頭に子どもたちは元気に各自の持ち場に散らばっていく。


 子供たちを見送った後、アイリーンは後ろに控えたマギーを見る。

「さてと、私たちも参加するわよ!」

「はい。では、お嬢様が貴族街側。私が平民街側を担当でしたね。司書騎士と護衛も隠れて付いておりますが、お気をつけてください」


「ええ。マギーもね!」

 アイリーンは実際に見て捜査したいと、空いた時間に少し参加することにしていた。

「ジル、コニー! よろしくお願いするわ」


「おお! よろしくお願いしますよ!」

「久しぶりっすね!」

 以前に図書館の妖精の話を教えてくれた若い司書騎士ジルとコニーが、今日の貴族街側入口担当だ。


「入館したい人が来たら、入館証があるか確認して、ない人はあっちの窓口に案内。ある人は通ってもらってください」

「分かったわ!」


 アイリーンと子供たちは、元気に返事をすると一緒に入り口付近に並んで入館者を待った。

 貴族街側の入口なので、入ってくるのは貴族や身なりのいい商人ばかりだ。アイリーンも子供たちも礼儀正しく丁寧に対応していく。

「ご機嫌よう。入館証はお持ちですか?」




「ごゆっくりどうぞ」

 かわいらしいドレスに身を包んだ令嬢と両親と従者数名の入館を見送ったところで、アイリーンは、休憩がてら館内に戻る。


(ふむ。今のところ怪しい人はいないわね。一部は司書騎士が顔を覚えているような人もいたように見えた。親しそうに世間話をしている人もいたわ。図書館だし、貸し出しと返却の二回は必ず来るのだから、やっぱり頻繫に通っている人も多そうだわ)


 休憩室でぼんやりと思考を整理していく。

(人数が多そうだから、これは今後の長期戦になるわね。だけど、レティシア殿下の出国までは一月しかないし、あまり時間はかけられない。客に関してはほぼ毎日のように来ていそうな人を重点的に調べる様にして、もう一つ……)


 アイリーンは気付かれない様にそっと周囲を見回す。休憩室の中は、数名の司書騎士がいる。

(今回の事件、暗号の主は本を熟知し、王立図書館に詳しい人物……そうなると、ここで働く司書騎士が一番怪しいわ。司書騎士だけでもかなりの人数がいるはずよね。でも、利用客よりは絶対少ないのだから)


 アイリーンは、それとなく騎士達に聞いてみることにした。一番近くにいた司書騎士に話かけてみる。

「休憩中にごめんなさい。少し聞きたいのだけど」

「はい。何でしょう?」


「ここの司書騎士の皆に挨拶したいのだけど、誰が今日の当番か分からないの。司書騎士の名前と勤務日の分かるものはないかしら?」

「ああ。それなら、あそこに貼ってある紙が勤務表です。」


 アイリーンは司書騎士に礼を言って立ち上がって勤務表を探す。壁に吊り下げられた板に勤務表が挟んであった。


(良かった。どこに誰が勤務しているのかも書かれているわ。これを借りて全員の顔を見に行きましょう。私の予想が正しければ、図書館の妖精に会ったことのある司書騎士は、館長だけではないはず……特に、あの黒髪の司書騎士とか)


 アイリーンは、黒髪の司書騎士を思い浮かべる。

 黒髪の司書騎士はアイリーンがエリに会いに行く最中に、必ずすれ違う司書騎士だ。端正な顔に見えたが何故か記憶に残らない不思議な印象だとアイリーンは思っている。


(あの人はいつもエリ様のいる時にすれ違うのだから、エリ様を見たことがあってもおかしくない。むしろ、暗号を見つけているか確認に来ているのではないかしら? とりあえず探してみましょう)


 アイリーンは勤務表を持つと「館長! 皆の名前を覚えたいから勤務表を借りていいかしら?」と断りを入れてから、館内の司書騎士を把握に向かったのだった。


読んでいただきありがとうございました!

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