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ファイル65悪徳商会摘発事件③

よろしくお願いします

 アイリーンは真面目な表情でドアをノックする。

「エドガー殿下。失礼いたします」

「リーン、よく来たね」


「うっ」

 相変わらず美麗なエドガーの微笑みにアイリーンは、どきんと胸が高鳴るのを感じた。彼女の愛称を呼ぶ声が甘く聞こえるのは気のせいなのだろうか。


 聖なる日の茶会以降、エドガーの好きな人捜査は完結しており、定期報告の際も恋愛の話は出ていなかった。

 ここ最近いつも通りの報告会が続いているのだが、アイリーンの報告を楽しそうに、時に心配したような様子で聞いてくれるエドガーに、彼女は慣れるどころか、回数を重ねるごとにキラキラが増しているような印象を受けていた。


(なんて美しいのかしら。素敵すぎるわ。流石怪盗プリンスね)

 ぼんやりと見惚れるアイリーンに気付き、エドガーは満足げに笑う。

「それで、今日はどんな報告をしてくれるの?」


「あっそうでしたわ。実は、平民街のブティックマダムローズと宝飾店パールラントのことについてなのですが――」

 アイリーンはエドガーにニックの情報と、先日店主二人に聞いた事情を話した。


「なるほどね。あの宝石が……」

「お前はまた危なそうなことに首を突っ込んで! はぁ~」

 アイリーンの話を聞いたアーサーが顔を顰めて、深いため息を吐いた。


「ご、ごめんなさい。……でも、お兄様、気になりませんか? 絶対に裏に貴族がいると思うのです」

「まぁ、確かに……」


 懲りないアイリーンに、妹に流されやすいアーサー。そんな二人を横目に、何事かを考え込んでいたエドガーが「アーサー、クラウスを呼んでくれ」と声を掛けると、アーサーは部屋を出ていった。


 二人きりになったところで、エドガーが切り出す。

「さて、君の報告は分かったよ。で、アイリーンはどうするつもりなの?」

「店主二人の出身地を治める領主を調べます。バッハ商会と関係があるのではないかと思っています」


「ふむ。一人で頑張るつもり?」

 エドガーが真剣な表情で見つめるので、アイリーンは落ち着かない様子で恐る恐る相談を持ち掛けた。


「その、出来れば……お力添えを」

「いいよ」

「え? いいのですか?」


 きょとんとするアイリーンにエドガーは笑みをこぼす。

「それが言いたくて来たんだろう? そもそも君を支援しているのだから、手伝うのは当然だよ」

「ありがとうございます。エドガー殿下!」


 嬉しくなったアイリーンが衝動のままにエドガーに抱きついた。

(くっ! 駄目だ、耐えろ、私!)

 彼女の行動が予想外だったエドガーは驚きで思考停止したものの、すぐに回復し、アイリーンの背中で行き場のない手を震わせる。


 彼の修行は、アーサーがクラウスを連れて戻るまで続いた。




 こうしてアイリーンは、マリンとボタンの二人が住んでいた地域の領主とバッハ商会についての捜査にエドガーの協力を取り付けることに成功。

 そして、領主がモリアーティ伯爵であることを突き止める。


 バッハ商会との関係は伯爵家が資金の出資をしていたということが判明した。また、ガーネットチルドレンからはバッハ商会についての情報を集め、立ち退き被害にあった被害者たちに会うことができた。

 状況を聞き、調べていくとバッハ商会の不正事実が見つかった。


 後日、アイリーンは、マリンとボタン、そして立ち退きやお金のトラブルがあった被害者たちから集めた証拠を持ってバッハ商会に乗り込んだ。

 ちなみに助手としてマギーだけでなくエドガーやアーサー、その他騎士多数も参加しており大人数となった。バッハ商会はその場で摘発されることとなった。


 事件後宝飾店パールラントを訪れたアイリーン一行に、マリンとボタンが涙を浮かべながら笑顔で礼を述べる。

「アイリーン様! 本当にありがとうございます!」

「そんな、私ではなくエドガー殿下のお陰よ」


「エドガー殿下にお会いできるなんて! 本当に何とお礼を言ったらいいのか……」

 エドガーは恐縮したマリンとボタンに、王子然とした微笑みを見せる。

「ああ、今の私は名探偵の助手だから気にしないでくれ」

「いや。そんな」


「そうだな、どうしてもというなら……君たち一族の家宝、買い取らせてくれないだろうか?」

「えっ!?」

「それは! 良いのですか!?」


「ありがとうございます! 王族の方に献上するという一族の長年の夢が叶います!」

 喜びの涙を浮かべてはしゃぐマリンとボタンを一瞥し、エドガーはアイリーンとマギーに先に店を出ているように伝える。

 店の外に出たアイリーンは首を傾げていた。


「一体何の話かしらね?」

「商売の話でしょうか? 店の今後についてとか?」

「うーん。まあきっと知らなくてもいいことなのよね。それより、お話が終わったらお兄様に美味しいお菓子を買ってもらいましょう」


 笑顔で頬の落ちそうなスイーツを想像するアイリーンなのだった。




 アイリーンの退出を確認したエドガーは、マリンとボタンに「二人にもう一つ、やってもらいたいことがある」と告げる。


「何でしょうか?」

「仕事を頼みたい。アクセサリーとドレスの作成だ。それとこれから話すことに協力してほしい。もちろん他言はしないこと」


 不思議そうに首を傾げる二人を見て、エドガーはある計画を話して聞かせる。

 驚きに見開かれた二人の目と、エドガーの笑顔にアーサーは胃が痛くなるのを感じたのだった。


読んでいただきありがとうございました!

次回から長めのシリーズです!

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