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「二人とも話長かったね?」
「そんなに時間経ったか?」
「一人だと時間って早く感じるからかも」
琉花のことだから大方どんな話をしていたかは予想できてると思う。
変に何を話していたか聞かない当たり、間違いない。
「それで本題に入るんだが、お前ら俺の家に住む気はあるか?」
「耀くんの家?」
「ちょっと古いがスペースは十分にあるからお前らの部屋も用意できる。嫌ならどこか自分たちで探してくれ」
結奈に啖呵を切った手前、手は差し伸べる。それでも選ぶのはこいつらだ。
「それって耀くんと私たち二人で同棲するってこと」
「そういうことだ」
「じゃあ、お願いしようかな」
「・・・は?」
早すぎる返答に俺は困惑する。
「男と同棲するんだぞ。もっと考えたりするもんだろ」
「でも私たちが今起こせる最善の選択が耀くんの家に住まわせてもらうことだよ」
「それはそうだが、結奈に無理やりキスさせた男だぞ?危ないだろ」
「耀くんなら大丈夫だよ」
無責任なまでの信頼を置かれてしまう。
そこまで信頼されるほどの関係を築いてはいないんだが。
「でも引っ越しはいつすればいいかな?」
「できるだけ早い方がいい。できれば今日から移せるものは移しておきたい。いつ不動産会社にばれるかわからないしな」
「なら今日の放課後から耀くんの家に泊まってもいい?」
「今日からか?」
「うん」
「まぁいいか」
布団は2つしかないけど、とりあえずは我慢してもらおう。
「一旦、家に帰って、少しづつ荷物を持って行くね」
「りょうかい」
こうしてこの日から二人が俺の家に泊まることになった。
そして放課後、いつものように校門前に集合して、駅に向かう。
学校から駅までの道の傍らには三車線の道路があり、この時間は渋滞しているわけではないがひっきりなしに車が通り過ぎて行く。追い越していったバスの中に、うちの生徒らの姿が見えた。
バスが信号待ちをしていると、バスの中から視線を感じる。おそらく、瑠花と結菜のことを見ているんだろう。
今日から一緒に住むことになるが、こいつらはとびっきりの美少女だからな。視線を向けてしまうのもわかる。
中には俺のことを訝しむ目で見てくるやつもいるが、そんなのは無視だ。てかもういい加減慣れてきた。登校と下校の時には大体の男どもがこいつらに目を向ける。二人は慣れているのか特に何も思っていないようだが、俺は最初この視線には慣れなかった。なにより性的な目で見ている奴がいるから、気持ち悪い。
「じゃあ、一旦ここで待っててね」
瑠花たちの最寄駅につくと、二人は荷物を持ってくるために家に向かう。
俺は二人を待っている間暇なので駅で本を読むことにした。
30分ほど本を読んでいると、小走りに駆け寄ってくる足音が2つして、俺は本を閉じた。
「ごめんね。結構時間かかっちゃったね」
瑠花と結菜は走ってきたようで、少し息を切らしている。
少し汗もかいていて首の汗が胸元に滴っている。見るのは悪いと思い、俺は視線を外した。
「そこまで時間はかかってないから気にするな」
それから二人を俺の家まで案内する。
駅から十分ほど歩くと俺の家についた。
「ここが俺の家だ」
鍵を開けて二人を招き入れる。
見た目は古いが何度か改装工事をしているので中は意外と綺麗だ。
「今日からここに住むんだから、適当にくつろいでくれ。使っていい部屋はまたあとで伝える」
二人をリビングに通して座らせる。
俺は冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップに注ぎ二人に出す。
「ありがとう」
二人は素直に受け取り、麦茶を口にする。
あまり上等なものではないが、結構うまい。
「本当にありがとうね。私たちを住まわせてくれて。本当なら私たちで住む場所を探さないといけないんだけど」
「お前らの事情を考えるとそれは難しいから仕方ない」
だからこそ俺に頼っている。
「でも私たちが言える立場じゃないけど、この家を耀くんが借りれたなら、その借りる手伝いをしてもらった人に頼めば借りれたんじゃない?耀くんが無理して同棲するより」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
俺はすぐにスマホを取り出し真由美に電話する。
「おい」
「いきなり電話なんてしてきてどうしたの?もしかしてもう何かあった!もしかして泊めてくれるお礼とかもらちゃったりした?お金はないから体で払ってもらった?そんなプレイしたことないから興奮しちゃった?いつもよりいっぱい出しちゃった?」
「うるせぇよ!」
興奮しているからかまくし立てるように早口で喋る真由美。
話していることが下ネタすぎてとてもではないが聞かせられない。幸いにも瑠花たちには聞こえていないようで俺の方をみて少し驚いているだけだった。
おそらく俺の怒鳴り声に驚いたんだろう。
「俺が聞きたかったのは、俺の家にこいつらを住まわせなくても、お前の名義を使えばあいつらに家を提供することくらいはできただろ」
「それはもちろん」
「なんでそれを教えなかった!」
「だってその方が絶対面白そうだったから、てへっ」
この女!次会ったら絶対に泣かす。
「今すぐこいつらの家を探せ」
「嫌よ。せめて三か月くらいは一緒に過ごしてくれないと、何も起こらないでしょ」
「何も起こらないためにそう言ってるんだろうが!」
「何を言われてもやらないからね。じゃあねぇ~」
「おい!」
つーつーとスマホ越しに電話が切れた音が鳴る。
再度真由美に電話をかけるが反応はない。
「あの女!!!」
「ええっと、大丈夫?」
琉花が俺の様子を心配して、近づいてきた。
俺はなんとか平静を保つ。
「まぁなんとかな」
「でも耀くんがそんなに感情を露わにするなんて思わなかったよ。まだ会って数日だけど怒ったりとか笑ったりするところ見たことなかったから」
確かに普段はよほどのことがない限り、あまり感情は表に出ない。
別に感情を外に出さまいとしているわけでもなく、気づいたらこうなっていた。
一応、近しい人には喜怒哀楽は出る。真由美もその一人だ。
ここまで怒りが溢れるのは初めてだけど。
「今、お前らに家を借りれないか頼んだがなぜか無理だったから、とりあえずお前らがここに住むのは決まりだ。まぁ飯くらいは準備するから洗濯物はお前らが担当してくれ。下着とか触られたくないだろ。洗濯機は外にあるからそれを使ってくれ」
こうなってしまった以上こいつらにある程度の配慮はする。
二人が風呂に入っている時は浴室には近づかないし、こいつらの部屋にも入らない。
できるだけ干渉しないことがお互いのためになる。
「家事全般は私たちがするよ」
「そう言ってもらえるのは助かるが、ある程度は分担すべきだ。お前らの疲労が溜まってストレスになると俺にも迷惑がかかるかもしれん。それに俺は料理をするのは結構好きだ」
それから二人と話し合ってそれぞれの役割を振り分けた。
俺は主に料理担当だが、弁当など朝の料理は瑠花に任せることになった。
その他の家事は結菜がしてくれる。
それから俺は晩飯の材料が足りないので買い出しに向かった。
この辺りの地理を知るためか結菜も俺についてきた。
スーパーに入り、食材を眺める。
この時間は夕方なので晩飯のためか主婦が多い。
「なぁお前らって食べれない物とかあったりするか?」
「私は特にないですけど、瑠花はトマトは苦手ですね。特に生は食べないですね。ケチャップなど加工すれば食べれますけど」
「りょうかい」
野菜コーナーに行き、良さそうなものを手に取る。
(この時期にしてはキャベツが安いな。野菜炒めとかでもいいんだが、一応こいつらに振る舞う最初の料理になるからもっとうまい料理をだしてやりたい)
食材とにらめっこをして何を作るか考える。
一応の引っ越し祝いもこめて少しは豪勢にしたい。
「今回は本当にありがとうございます」
にらめっこを続けていると隣から結菜が突然感謝を告げてくる。
「急にどうした?」
「あらためて感謝をしておこうと、もしあのまま瑠花のおじの家にいれば見つかっていたかもしれませんし」
かもではなく間違いなく見つかっていただろうな。
「感謝は行動で示せばいい。家事を手伝ってくれるんだろ?」
「それはもちろんしますがそれだけでいいんですか?あのときは・・・キスを要求しましたよ?」
「それはそういえば断ると思ってたからだ」
結果は予定とは狂いまくったせいで今この時を迎えている。
「もしお前が俺に感謝してるなら自分で行動して俺に何か返せ。何をするかは自分で考えろ」
話は終わりと俺はその場を離れて、別の食材を見に行く。
結菜はその場にとどまり、なにやら考えている様子だった。
その後買い物を済ませて、家へと帰った。
もしかしたら、2年前にかいていたメイドの執筆を再開するかもしれません。
気になる方はそちらも見ていただけると嬉しいです!
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