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「ゆいちゃん、一緒にお昼食べよ」


 昼休み、琉花が俺たちの教室に訪れた。


「それに耀くんも」

「いいけど、俺は今から昼飯を買ってくる」

「それなら、耀君の弁当もあるから問題ないよ」


 琉花はバックから3つの弁当を取り出した。その中でもひときわ大きな弁当箱を俺に渡してくる。


(昼飯は素直にありがたいけど、こんなでかい弁当食べきれるか?)


 朝飯と同様、弁当を作るのは時間もないため、学食や購買で済ませようと考えていた。

 少し出費は大きいが、貯金はあるので特に金に困るようなことはない。

 仕送りは実家からはないが別の奴から送られているので、割と金はある。


 俺たちの机をつなぎ合わせ、琉花は近くの席を借りて、食べ始めた。


「それで、部活動オリエンテーションを見て、気になる部はあった?」

「私は特にありませんでした」

「耀くんは?」

「俺はあったけど、お前らが入りたい部ではないと思う」


 ハーレムを募集しているとかいう、意味不明な部に入りたい女なんていないだろう。


「もしかして、三文部?」

「三文部?」

「文学文系文化遺産の略称だよ。なんか有名みたいだしね」

「へぇ~でも、よくわかったな」

「だってあのオリエンテーションで一番異彩を放ってたから、ほかの部なら入部希望者は少なからずいるだろうけど、三文部は入部希望者居ないと思うよ。それにもし文学に興味あるなら文学部もあるからそっちに入部するはずだよ」


 そう、この高校には三文部とは別に文学部がある。文学部の発表はまぁ良くも悪くも普通だったからこそ、小説などに興味があるやつはそっちに流れるだろう。


「でも三文部かぁ~」

「琉花は目ぼしい部活はなかったのか?」

「う~ん、まず私たちの事情を考えるとあまり学校には長居したくないから、部活動に力を入れてるところはダメかな。必然的に下校時間も遅くなるだろうから。だから活動時間が短いところがいいんだけど」


 オリエンテーションでは部活動の内容は説明する部が多かったが、活動時間について説明している部は少なかった。


「それを知るには、実際に部に出向くしかないだろうな」

「そうだね。とりあえず今日の放課後でも耀くんが気になってる三文部に見学に行ってみようか」

「今日?いきなりだな」

「早く決めた方がいいからね。それにほかの部も周ってみたいから」


 確かに、三文部だけに決めておくより、ほかの部を見学できれば気持ちの変化もあるかもしれない。


「まぁ今日の放課後は用事があるから無理なんだけどな」

「そうなの?」

「ちょっとな」


 あまり内容を話しても面白くはないので深くは話さない。


「でもお前らを送っていた後だからそこは問題ない」

「そっか。うん、また違う日に三文部に見学に行くってことでいいかな」

「それでいい」


 琉花の提案に結奈は頷く。


「そういえば、友達出来た?私は出来たよ」


 琉花が話題を切り替える。

 スマホを取り出して、できた友達の写真を結奈と俺に見せてくる。

 少し大人しそうな子だが、綺麗な子だった。


「今度二人にも紹介するね」


 そうして、二人と昼休みを過ごした。

 瑠花が作った弁当は正直腕としてはまだまだだったが久しぶりの他人の手料理に心温まるものがあった。





「明日からは本格的に授業があるからそのつもりでな」


 教師は教室を出て行く。

 教師が出て行くと生徒はそれぞれの放課後を楽しむために教室を後にする。


「行きましょうか」


 結菜に声をかけられ、集合場所の校門前へ二人で歩く。

 どちらかの教室で待っていれば良さそうなのだが、瑠花が校門前の方がなんか良いとか言い出したために仕方なくそうなった。

 俺的にはわざわざ目立つ校門前でなくてもいいと意見したが、一蹴された。


「じゃあ、帰ろうか」

「そうだな」


 先に着いていた瑠花と合流し、3人で帰路につく。


「耀くん、放課後の用事って何があるの?」

「別に伝えるようなことじゃない」

「いいじゃん。教えてくれても」


 瑠花は俺の前に立ち止まり、行く手を阻む。


「ただ、知人に会いに行くだけだ」

「知人?」

「世話になってる人だ。今一人暮らしってのは言っただろ」

「うん」

「その一人暮らしの手続きとか色々してくれた人だよ。入学して落ち着いたから顔を出せってな」


 とは言われたが、前に会ったのは10日前くらいだから、そんなに日は経っていない。

 二週間に一回は絶対顔を見せろとの命令を受けているので仕方なく、会いに行く。

 高校生の一人暮らしを心配してくれるのは素直にありがたいが、子離れ?してほしい。


「でも、一人暮らしって大変じゃないの?私はできないな〜」

「私も一人は嫌です」


 一ヶ月前まで中学生だった奴が一人暮らしをするのは一般的に難しいものがあると思うのは当然だ。

 実際俺も不安はあったが、実家を出て行きたいことが不安を大きく越していたから行動に移せた。


「全部自分でやるだけ」

「それが出来ないんだよ」


 結菜もうんうんと頷いている。


「私たちは今一緒に住んでるけど担当があるからなんとかやれてるけど、それを一人でって考えただけで」


 瑠花はげっそりとした表情を浮かべる。


「共同暮らしにも大変なことはあるだろ」


 主に性に関して。


「それはそうだけど、一人じゃないってのは心強いよ」


 その言葉は力強く真に迫るものがあった。

 瑠花も大変な思いをして俺を頼った。だからまぁ、受け取った報酬分はしっかり働いてやる。



「じゃあ、また明日な」

「うん、またね」


 瑠花たちと別れて目的の場所に向かった。









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