表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

1話

 

「・・・理由を聞いてもいい?」

「今日会ったやつから突然そんなこと言われるなんて怪しいから」


 まぁ、それとは別に面倒というのもあるが口には出さない。


「そっか〜・・・」


 目の前の少女は目に見えて落ち込んだ表情を見せた。やめろ、周りからは俺が悪いことをしたみたいに見えるだろう。

 正直、この子は可愛い。俺以外の男子にでも頼めば、下心満載のやつは快く了承してもらえるだろう。なんで俺なんだろうか?

まさか変態に思われたのか!出会って時間も経っていないのにそんなことわからないか。ふぅあぶねぇ

まぁどんな理由で俺に頼むのかは知らないが、下手に理由を聞くと希望を持たれそうなので聞きはしない。


「もう、帰って良いか?」

「待ってください」


 俺を呼び止めたのは意外にも結菜だった。教室でクラスメイトと話していたときと違う雰囲気を出していた。


「登下校を一緒にするだけなら、あなたに損はないはずです」

「あるに決まってるだろ。一人の時間が減る。それと、裏がありそうと」

「裏というか、理由は瑠花を守って欲しい、それだけです」

「SPでも雇え」

「そんなお金はありません」


 守ってほしい?何か変なことにでも巻き込まれているとかか。とにかく話が長い。

ここ最近面倒なことに忙しくて全然リフレッシュ出来ていない。入学初日くらいゆっくりさせて欲しい。

 

おそらくだが、こいつらは引く気がない。どうにかして諦めてもらいたいんだが、正直こんなことは言いたくなかったけど諦めてくれるならなんでもいいか。


「こっちの条件を呑んでくれるんなら、やってもいい」

「その条件は何ですか?」

「結菜、今から10秒以内に俺の口にキスできたら、やってやる」

「ええっ!」


 瑠夏と呼ばれていた少女は驚いて、俺を見ている。それはそうだろう。こんな条件出す奴は最低な男だからな。

 これならこいつらは諦めて金輪際近づいてこないだろう。俺はそう確信していた。だって変態と一緒にはいたくないだろ。俺自身がそうだからな。


だが、俺の予想は裏切られた。


「んぅ!」


 結菜が俺にキスした。どうせキスなんてされないと油断してた。俺は目を見開いて目の前の結菜の顔を見た。恥ずかしくて目を瞑っているのではない。俺の目をしっかりと見据えていた。やけっぱちにキスしたわけではないと思わせる、覚悟をもった目をしていた。


 時間にして数秒だっただろう。すぐに結菜は俺から離れた。無意識に俺は自分のくちびるを指でなぞっていた。


「これで引き受けてくれますね」

「・・・なんでそこまでする」

「瑠花のためになるなら」


 他人のために自分が穢されることを容認する。そんなことできるやつは普通じゃない。こんなやつと関わり合いたくないんだが、



   俺は約束を破れない。



 もっと無茶な要求にしておけば、こんなことにはならなかった。数分前に戻ってやり直させて欲しい。

だが時間というのは残酷だ。戻りたくても戻してくれない。

 俺は大きなため息をつく。


「はぁ、そいつと登下校すればいいんだろ」

「そいつじゃないよ。私は林瑠花。これからよろしくね」

「ちなみに私も一緒です」


 それは聞いてない。今日一緒に登校していたので薄々そうだろは思っていたけど、恋人でもないのにキスしたやつと俺は毎日一緒に登校しないといけないのか。

ちょっと気まずさというか、具合が悪い。


「はやく、帰りたいから行くぞ」


 この場を早く去りたい一心で俺は足早に駅へと向かう。


「待ってください、速すぎます。瑠花に速度を合わせてください」

「・・・了解」


 俺は2人の後ろを歩くことにした。そうすれば、速度をあわせやすいから。


「ゆいちゃん、さっきのはやりすぎだよ」

「キスで済むなら、いい。それに、処女を要求されないだけ、まだましです」


 この女は体を差し出すことに抵抗ないのか。と言うよりかは、瑠花に対して、盲信的なまでの感情があるのだろう。


「理由聞かなくていいんですか?」


 瑠花と結菜が振り返る。


「ただ、登下校を一緒にするだけだろ。別に他に思惑が絡んでいようが、俺から聞くことはねぇよ。お前らが話したいなら、聞くだけ聞いてやる。そのあとなにするかわかんねぇけど」

「話したくないので、やめておきますが聞くことはあなたの当然の権利だと思います」

「そう言われてもな、まぁ大方知ってるしな」

「「え?」」


 2人は歩みを止める。


「だから、別に聞かなくてもいいんだよ」

「知っているなんてありえないです!」

「世の中、知っている人は知っている。そして俺は知っている、ただそれだけだろ」

「嘘です!」

「嘘じゃない。そいつなら俺が本当のことを言ってるとわかるだろう」


 俺は瑠花に目を向ける。

 瑠花は驚いた表情の後に、小さく頷く。


「瑠花、本当なのですか?」

「私も信じられないけど」

「なら、なぜ引き受けたんですか!」

「それはお前が俺にキスしたからだろ。そういう条件だったろ。てか依頼主がそれ言うか」

「知っているなら、なぜあんな安易な条件で引き受けたんですか!」

「お前はそういうが、キスなんてそう簡単にできることじゃないぞ。それにお前みたいな美人のキスなら交換条件としては見合っていると思わないか」

「思いません!」


 結奈は激昂する。自分で要求してきたくせに変な奴だな。

 あと美人に何一つ反応なし。おそらく、美人などの言葉は耳にたこが出来るくらい聞いているだろう。


「もういいだろ。それでお前らが俺に頼んできた理由は俺が翡翠だからだろ」

「はい。そのとおりです」

「条件呑んだからには毎日付き合うが期待には答えられるかはわからないぞ?」

「いえ、あなたがいるだけで抑止力にはなります」

「俺如きで諦めてくれるやつならいいけどな」


 その後、駅につき電車に乗った。とくに何か起こることもなく、瑠花と結菜の降りる駅に着いた。


「送るのはこの駅まででいいんだな」

「うん。駅から徒歩1分だし、人目もあるから大丈夫」

「そうか。じゃあな」

「あ、ちょっと待って、連絡先交換しよ。その方がもし学校を休む時連絡できるから」

「了解。ほれ、お前がやってくれ」


 俺は瑠花にスマホを渡した。


「スマホを渡すことに躊躇ないんだね」


 すぐに俺のスマホは返された。見ると、チャットアプリに瑠花が追加されていた。


「ありがとうね。それと私のことは瑠花って呼んで」

「私も名前でお願いします」

「わかった、瑠花、結菜、俺のことは自由に呼べばいい」

「じゃあ、耀くんね。これからよろしく」


二人と別れる。

 それから20分ほどで俺は家に帰った。俺は実家を出たため二週間前からアパートで一人暮らし。

 1LDKだが家賃が安いので、このアパートを選んだんだが、入居してみると結構壁が薄く隣のテレビ音が割と聞こえる。

 昼飯は昨日の余り物を食べるとしてまだ腹は減っていない。

 となると本でも読むか。しおりを挟んだページを開き、読もうとするのだが、電話がかかってきた。

せっかく続きを読もうとしていたのに、気分が台無しだ。

腹が立ったし無視してやろうか。

電話を無視して本を開くんだが、何度も何度も電話が鳴り止まない。仕方ない、電源を切るか。

電源を落とすためにスマホの画面を見ると、見知ったやつからだ。

これ以上無視すると次会うときに面倒なことになりかねないから仕方なく通話ボタンを押した。


「はやく電話出なさいよ!」

「本読んでたんだよ」

「まぁいいわ、耀くん、入学おめでとう!」

「それはどうも、それで用件は」

「そう急かすことないでしょ。お友達できた?」

「用件を言わないなら切るぞ」

「もう、相変わらずせっかちだね。そんな所がまた可愛い!」


 電話越しにニヤついているのがわかる。体もクネクネさせてるんだろうな。容易に想像がつく。


「それで用件は」

「そんな怖い声出さないでよ。林瑠花と会ったそうね。手が早いこと」

「あんたも情報が早いことで」


 まだ、その騒動から1時間と経っていない。どこから聴いたのやら。


「それで、助けるの?」

「俺は一緒に登下校をするだけだ」

「なら登下校中は守ってあげるのね。それは彼女達も安心ね」

「別に危険なことなんて起こらないと思うが」

「耀くんにとってはね。でもあの子達は危ないと思っているからあなたを選んだんでしょ。頑張ってね、私も無関係ではないんだから」

「善処するよ」


 その後、たわいもない話を少しした後、通話を切った。


 入学早々面倒なことになってしまったが、まぁなんとかなるだろう。




















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ