第2章第24話「悪夢の裁判3」
次に法廷に現れたのは、ニット帽をかぶり、サングラスを付けた女性だった。口元は…お世辞にもキレイとは言えない外見だ。
ユズ「では、名前と職業を」
?「岩井洋子です。マスクを販売する会社の外回り担当をしております」
ユズ「証人。被告が事件の犯人だと証明できますね」
洋子「もちろんです。この目でハッキリ見ましたから」
裁判長「と、言いますと?」
ユズ「事件の当日は外回りの為に現場近くを通ったらしく、そこで事件を目撃したそうです」
裁判長「では、証言を。貴女は何を見たのかははっきりと」
洋子「あれは事件の日。次の取引先に向かっている時に通りかかり、何となく庭を見てみると、パーティ客の中からフードを被った被告が現れ、ポケットから利き手でナイフを取り出し、被害者を刺したんです」
裁判長「うむ…確かに決定的ですな。では弁護人。反対尋問を」
ナルホド「では証人。被告がポケットから利き手でナイフを取り出した。それは間違いないですね?」
洋子「間違いなわよ」
ナルホド「具体的にはどうやってですか?」
洋子「もちろん右のポケットから取り出して」
ナルホド「利き手って、どちらの手で?」
洋子「勿論取り出しやすいように右手で…」
ナルホド「意義あり!その証言、おかしいですね?」
事件当日の防犯カメラの映像では、犯人は、ナイフを左手で持っていたんです。どうして右と左を間違えたんですか?」
洋子「そ、それは言い間違えただけで…」
ユズ「意義あり!弁護人。言い間違いはよくある事です。慣れてない場で証言しているので間違えて当然です」
裁判長「意義を認めます。証人。以後は気を付けるように」
ユズ「証人。被告が犯人なら、顔を見たんですね?証言してくれませんか?」
洋子「先ほど言った通り、犯人はこの女で、フードを被り、赤のマスクをしていました。逃走するときに玄関から出てきましたが、同じ人でした」
ユズ「つまり、2度確認したことでいいですね?」
洋子「はい。間違いありません」
ナルホド「意義あり!証人。被告は赤のマスクをした。間違いありませんか?」
ユズ「弁護人。被告は2度も見たので間違いは…」
ナルホド「おかしいですよね?同じ録画映像ではピンクのマスクでした。2度も確認したのに何で間違えるのですか?」
洋子「に、似たような色だから」
ユズ「べ、弁護人!証人は…」
ナルホド「証人は2度も確認した。なのに間違えている…。先ほどの証言と言い、今の証言と言い、偶然間違えるとは出来すぎてます」
裁判長「確かに。証人。今度ははっきりと証言してください。段々と怪しくなりますからね」
洋子「は、はい。すみません」
成歩道は何やら考えており、しばらくして口を開いた。
ナルホド「桃山検事。1つ聞きますが、先ほど被告がマスク会社からマスクを盗んだと言いましたよね?」
ユズ「それが何か?」
ナルホド「おかしいですよね。変装に使うマスクなら、わざわざマスク会社のマスクに盗みを働くのですか?市販のマスクを買えば良いのですし、家にストックされているマスクを使うのも良い話ですけど。それになぜ自宅の近くで変装道具を捨てたのでしょうか?まるで自分が犯人ですと言ってるようなものですけど?」
ユズ「そ、そんなの被告の勝手じゃ…」
ナルホド「桃山検事。一度振り返ってみたらどうでしょう。犯人は販売前のリバーシカラーのマスクをしてフードを被っている。証人の職業はそのマスクを売り出している会社の社員。それにこの場で口元以外隠している。何か違和感がありませんか?」
ユズ「そ、そんなのが何の意味が…ま、まさか…」
ユズは何かに気付いた。
ナルホド「証人。サングラスとニット帽を取ってくれませんか?」
洋子「な、何の権利があって…」
ナルホド「何か都合が悪い事でも?ただサングラスとニット帽を外してほしいと頼んでるだけです」
裁判長「証人。外さないとまるで自分が事件の犯人のような見方に見えます。サングラスとニット帽を外すように」
しばらく沈黙がし、諦めたようにそれらを外す。
何と、顔の上半分が夢麻にそっくりだった。
夢麻本人や法廷内のほとんどがどよめきだした。
ユズ「し、しかし似ていたからだと言って、被告の無罪には…」
洋子「もういいです!」
ユズの言葉がさえぎられるように洋子は大声を出した。
洋子「もういいです…。疲れました…。私…昔からウソをつくのは下手なんだから…」
裁判長「では、貴女は被告の無罪を証明できますのかな?」
洋子「えぇ。弁護士さんの想像通り、私が犯人です。この子は関係ありません…」
ナルホド「一体どうして?」
洋子「私と中岡は不倫の関係なんです。外回りを口実に利用してこの数年間ずっと…。けど、数か月前、小さな事で大喧嘩になり、彼に殴られて、マスクが外れてしまってこの素顔をさらされてしまった。生まれつきこんな顔の私を見た彼は『俺を何年も騙したのか!?クソ女め出てけ!近々慰謝料を請求する』と言われ…。先に誘ってきたのはあの男なのに…」
泣き崩れる洋子。彼女もある意味、今回の事件に振り回された被害者なのかもしれない。夢麻はそう思った。
ユズ「し、しかし!凶器のナイフから被告の指紋が…」
ナルホド「桃山検事。先ほどこう言いましたね?『被告がマスク会社から販売前のマスクを盗んだ』っと。どこからの情報ですか?」
ユズ「それは捜査資料に…」
ナルホド「誰が調べたんですか?」
慌てて確認すると、確かに夢麻がマスク会社からマスクを盗んだと書かれていたが、誰がそれを書いたのかは名前は書かれていない。
ナルホド「洋子さん。念の為に聞きますが、貴女が犯行を考えたのですか?」
?成歩道は何を言っているのだろうか。
洋子「いいえ。ある人物に持ち掛けたんです。『他の人に罪を擦り付ける完全犯罪計画を教える』っと。凶器を渡されて…」
ナルホド「僕…その人物に心当たりがあります。この男でしょうか?」
成歩道は写真を取り出し見せた。
洋子「は、はい。この人です。…けど何で貴方が…っ」
すると、洋子が倒れ、血があふれ出た。
法廷内は悲鳴が上がった。
???「やれやれ。せっかくナオ・グリーンスカイのマイパートナーの地位を落とせると思ったのに使えない奴め」
天井から誰かが下りてきて、洋子を蹴り飛ばした。
ユズ「な、何なの!?」
ナルホド「やっぱりお前の仕業だったな、魁天魔の3幹部の1人『アゲロス』!」




