第2章第23話「悪夢の裁判2」
被害者の妻が証言台に立った。
ユズ「では、名前と職業を」
女性「中岡民子。専業主婦をしています」
ユズ「では、被害者である夫を殺害したのは被告であることを証明できますか?」
民子「勿論です」
ユズ「では証言を」
民子「あれは数か月前、の事です。フードを被り、ピンク色のマスクをしたあの女が、内容までは分かりませんが、別室で夫と何かの取引の契約をしていたようです。けど、何回か来日したある日、何か口論をしたような声がして、何やら殴られるような音がしました。あの女は赤いマスク越しで慌てて頬を抑えながら出ていきました。思えば、取引が破断か何かで夫を殺したと思います」
ユズ「そうですか。証言ありがとうございます。これで被告の動機が人として非道である事をわかりました?」
ナルホド「何らかの取引ですか?マスクならともかく、取引の商談に普通フードを被って行きますか?」
裁判長「確かに。まるで正体を知られないような格好ですな」
民子「そんなの知らないわよ。とにかく、あの女が夫との言い争いが原因で殺したんだから」
裁判長「うむ…。では弁護人、尋問を」
ナルホド「あ、はい。では証人。旦那さんが行っていた取引の内容はわからないのは本当ですね?」
民子「もちろんよ」
ナルホド「本当は取引の内容は知っているようですね?以前日常で仕事の話とかしていたとか」
民子「だから知るわけ無いでしょ。夫は普段家で仕事の話は基本的にしないのだから」
ナルホド「……ですよね」
証人以外の法廷内の人達がずっこけた。
なおが言っていた肝心な時に抜けてるってこう言うことなの?
すると、成歩道が突然分厚い本で叩かれた。
その主は成歩道と共に法廷に来た少女だ。そう言えば裁判が初めてからずっと彼の隣にいたようだ。
少女「もう!いつもずっこけるんだからしっかりしてよ!」
ナルホド「た、叩くことないじゃないでしょ」
少女「いーから!ちゃんと証拠品とか確認して!」
証拠品のリストの紙を顔面に投げつけた。
ナルホド「相変わらずだな…ん?」
リストを見て顔をゆがめた。
ナルホド「奥さん。先ほどこう言いましたよね?『ピンク色のマスクをしたあの女』って」
民子「それが何か?」
ナルホド「事件の日の前の最後に来た日もそうでした?」
民子「そうわよ。だからそれは何か?」
ナルホド「それをひとまず証言に加えてくれませんか?」
民子「まぁいいわ。どうせあの女の犯行で間違いないのだから」
ユズはそのやり取りをにらみつけた。
ユズ(あの男一体何を考えてるの?)
ナルホド「では、事件の前の数日前にピンクのマスクをしていたのは間違いないですか?」
民子「間違い無いわ」
ナルホド「だったらおかしいですね。先ほどの証言では『赤いマスク越しで慌てて頬を抑えながら出ていきました』と。何でピンク色のマスクが赤に変わってたのですか?」
民子「!?」
その詩的に傍聴人はざわついた。
ユズ「い、意義あり!そ、それは先ほども証言した通り、被害者に殴られたと。きっとその時に出血して…」
ナルホド「ですが、ここにいる被告はここ数か月の目立ったケガなどはした記録はありません。それに、頬を殴られると出血する程の地の量は、ピンク色のマスクじゃ殆ど目立たないと思いますが?」
裁判長「まさか。証人がウソをついていると?」
ナルホド「いえ。あの様子だとウソはついてないようです。何故マスクがピンクから赤に変わったのか…それは」
リストに載ってあるマスクを見せつけた。
ユズ「それは被告の自宅近くで見つけたマスク?」
ナルホド「このマスクは表と裏には色の違うマスクで、恐らく殴られた拍子にマスクが外れて慌てて付けたときに裏返しになっていた事を気づかなかった!」
裁判長「うむ…。それなら筋は通りますが、それがどうなんですか?」
ユズ「そ、そうよ!そのマスクは誰でも持っているマスクなんだから事件とは…」
ナルホド「それがあるんですよ。なぜならこのタイプの色は、一昨日発売されたばかりなんです!まだ発売されたばかりのタイプが被告が持っていると思います?」
裁判長「そ、そういえば…。孫も一昨日発売されたばかりの同じのを買っていました」
ナルホド「どうなんですか!?これでも被告が犯人とでも?」
すると、ユズはにやりとした。
ユズ「…私はそこまで頭が回らない程のバカだと思いました?弁護士」
ナルホド「何ですと?」
ユズ「公にはなっていなかったけど実は事件の数か月前にそのマスクの販売会社からマスク一箱が盗まれたのです」
ナルホド「な、なんだと?」
ユズ「それを次の証人に証言させてもらいましょう」




