第65話「意識の中の世界4」
よく見ると、腹部当たりに檻のような隙間があり、中に入っているのは…。
夢麻「あそこにいるの、ここちゃんじゃない?」
葵「何でここにいるんだ!?」
なお「言ったでしょ。ここは本人の意識の世界って。あくまで意識の中の本人だけど居てもおかしくないわ。…けど」
なおは見上げた。
なお「いくら精神的に追い詰められたとは言え、ここまでこんなになるなんて、アタシ達が知る限り初めてだわ。今に思えば、今までここちゃんを見かけなかったり、この世界が墓だらけになっているのも頷けるわ」
巨大な母親のゾンビが、唸り声を上げながらこちらをにらみついている。
リコ「こぉぉぉぉこぉぉぉぉぉぉ!!」
こぶしがこちらに向かってきた。
なおとるな・夢麻とユウリが剣と斧で受け止める。
今度はもう片方のこぶしが来た。
のん「お姉ちゃん達は間に合わない!葵、連射で行くわ!」
葵「わかった!」
銃を構えて連射する。
上手く軌道が外れたようで空振りした。
のん「今のとさっきの軌道、亜子と巫女に向かっていた気がするけど…」
葵「確か前に言ってたわよね?娘達を恨んでいるのを書いた遺書があるって…」
なお「えぇ。…あの様子じゃ、2人を狙われ続ける。りおやしゃるがいるとはいえ、アタシのようにまだ契約されてないから守るしかないわ。けど、あの巨体じゃうまくダメージを与えられるかはわからないけど」
るな「地道に攻撃するしかないわね。みんな!ここを傷つけずに攻撃するわよ」
6人は、武器を改めて構えた。
なお達が必死に戦っている中で、りおとしゃるは優香達を守りながら見守っている。
亜子と巫女は、耳を押さえながら怯えている。
ここ程では無いが、2人もここと同じ風になっていた。
亜子「何で?何で聞こえない声が聞こえてくるの?」
巫女「いや!私達を責めないで!」
りお達には聞こえないが、2人には幻聴が聞こえるようだ。
今思えば、大量のゾンビが現れてから2人の顔色が悪くなり始めてたようだ。
るなとユウリは、斧で拳を抑えながら後ろに押されている。
リコ「お前たちは私の研究を邪魔する鬼子だ!お前達がいなければ!時間を削られることもなく、発表できたのにっ!」
研究の発表?「天使と悪魔」の研究の事を言っているのだろうか。
リコ「死ね!死んでしまえ!お前らは嫌われ者だ!」
少しずつ押されていく。
他の4人は羽根のカッターの追尾で援護に向かえない。
葵「このままじゃやばすぎない?!」
のん「ここは、自分達がお母さんを殺したと、そして自分達が死ねと思い込んで…」
だからこんな世界ができてしまい、意識の中の彼女がゾンビの腹部にある鉄格子のなかに…。
ユウリ「亜子先輩に巫女先輩!それとここちゃん!他の家の事情はよく知らんけど、よく見るんや!あんな化け物がお母さんなわけやいやろ!」
るな「そうよ!あれはここの弱みを付け狙った魁天魔が作り出した化け物よ!」
亜子「だって…」
夢麻「それに虐待なんかしてないハズよ!竜二郎のマスターが『ひとりで頑張って育てた』って」
勿論これはこの場を何とかするためのハッタリだ。
なおはそのハッタリを自分達がつかんでいる情報につなげるために口を開いた。
なお「貴女達は、誤った記憶を刷り込まれたじゃないの!?」
巫女「誤った…記憶…」
また聞こえてくる大人達の声。
黒服の男達が娘達のせいで、死んだ。そう言ってきた。
姉妹「「お、お母さん…私は…」」
抑えていた拳に耐え切れず、るなとユウリは吹き飛ばされ、姉妹に向かってくる。
姉妹「「!!」」
すると、姉妹の前に優香が両手を広げて涙ながらに立ちふさがった。
夢麻「優香ちゃん!危険よ!逃げて!」
優香は、涙ながらに口を開いた。
優香「イヤッ!ずっとみんなに頼りぱなしで守られてばかりで!居場所のない私の為に居場所を作ってくれた!だから今度は!私がみんなを守るんだから!!」
るなとユウリは立ち上がったが、距離的に間に合わない!
拳が3人に目がけて…!
???「私達を忘れては困りますわ」
3人の前に立ちはがったのは、りおとしゃるだ。
バリアみたいなもので拳を抑えている。
だが、なお達契約者とは力が違うのか、ヒビが入っており、今にも破られそう。
るなとユウリは斧で拳を吹き飛ばした。
るな「無茶するじゃない。3人共」
りお「優香の勇気に比べたら、どうでもありませんわ。それより、しゃる。さっきまでずっと黙ってましたけど、まさか、気絶したりなんか?」
しゃる「…想像にまかせるよ」
しゃるは姉妹の方に向いた。
しゃる「有原亜子に有原巫女!思い出すんだ!自殺したのはキミ達のせい。研究を邪魔したから」
姉妹はしゃるの目を見つめた。
しゃる「…なぜ、お母さんが自殺したと思った?」
亜子「…遺書…」
しゃるはうなづいた。
しゃる「黒い服の大人達に見せられた遺書…。何が書かれていた?」
巫女「私達への…恨み…」
しゃる「君達はつらくて、ショックで目をそらした。だけど、黒い服の大人達は延々と読み上げた。大勢の親戚やマスコミの前で」
僅かのハズだが長い沈黙が続いたと思われる。
しゃる「よく考えるんだ。あの遺書は、本物と思う?本当に大好きなお母さんが書いたと思う?あんな酷いこと、1度でも言われた?」
姉妹はしばらく沈黙し、静かに立ち上がった。
亜子「…ない。私達がワガママ言ったときは怒られたけど、すごく、優しかった!」
しゃる「なら答えは1つ。あの遺書は…」
巫女「真っ赤なニセモノだ!」
しゃる「君達は利用されたんだ。遺書を捏造し、死をなすりつけて、幼い心を傷つけ踏みにじった」
しゃるは2人に向けて指さした。
しゃる「怒れ!君達を利用した大人達を!弱みを付け狙いここちゃんを苦しめ続けた魁天魔を!絶対に許すな!」
2人は拳を強く握りしめた。
亜子「私達が…自分自身とお母さんの死と、ちゃんと向き合わなかったせい…」
巫女「けど、何で私達が、あんな事を言われなきゃいけなかったの!」
2人は巨大な母親のゾンビに向けて声を出した。
姉妹「「お前はお母さんじゃない!腐った大人達が作ったニセモノだ!絶対に…許すもんか!」」
すると、しゃるは姉妹に向けて何かを投げ渡した。
ふたつの輪がつながった腕輪だ。
しゃる「それはなおお姉ちゃんが特別に用意してくれた特別な腕輪。それさえあれば僕と『マイパートナー』としての契約ができるけど…」
亜子「答えるまでもない!」
巫女「アイツを倒せるなら、何も恐れない!」
すると、りおが拍手をした。
りお「そっちも結審したようですね。こちらでも結審しましたわ」
優香の手には、りおから渡された腕輪を持っている。
5人共うなづき、穴に腕を通した。
りお・しゃる「「我が先祖達よ。これにて、人間とのマイパートナーの契約をする。死が二人(三人)を分かつまで、共に戦う事を誓う」」
魔法陣が現れ、光に包まれる。
りおと優香は森の妖精を思わせるような青い服装で弓矢を構えている。
しゃると姉妹は、黄色い魔女の服装と帽子をし、杖を構えている。
姉妹の腕輪は2つに分かれている。
亜子「みんな手伝って!」
巫女「アイツを…お母さんのニセモノを一緒に倒して!」
全員はうなづき、巨大ゾンビに向け、空は、朝の陽ざしが薄暗い雲の隙間から差し込んでいた。




