第41話「マスター」
マスター「今から8年位前だ。亜子と巫女の父親は、ある科学者の女と結婚し、その1年後にここが産まれたんだ」
夢麻「じゃあ、ここちゃんって」
マスター「腹違いの姉妹だ。父親はここが産まれる前に死んじまって、アイツらの母親…璃子は女手一つで3人を育てたんだ。ここは勿論、亜子と巫女は璃子には懐いてた」
葵「さっき、科学者って言ったよな?上司から聞いたけど、天使と悪魔の研究をしているって」
マスター「彼女の直接の助手と数少ない知人である俺以外は誰にも相手にされなかったがな。アイツ曰く、大昔には天使と悪魔が実在し、人間達と共存していたとか言ってたな」
……本当の事だが、話せばややこしくなりそうなので今は黙っとこう。
マスター「アイツは研究と家庭を掛け持ちして必死に頑張って来た。アイツは研究がひと段落したらしばらく娘達にかまってやると張り切っていた。だが、そんな5年前のある日、アイツは突然の事故死した」
葵「それも聞いたわ。アイツらの目の前で道路に飛び出して車に轢かれたって…」
マスター「突発的な自殺だったらしいが…、俺には少なくともそうは思えねぇ。実は、アイツが死ぬ前に、飲み屋で俺に言ってたんだ。『近い内に自分は妙な死に方をするかもしれない』と。そん時は二人共酒を飲んでいたし、俺は真に受けずに聞き流してたんだが…」
夢麻「事故死したと…」
マスター「その時は俺は思ったんだ。酒の時に言ってたあれはSOSだと、そして殺されたと。あの時相談に乗っていれば、璃子は死なずに済んだのかもしれない…。けど、警察は取り合ってくれもしないし他殺の証拠もない。そして俺は責ての罪滅ぼしとしてアイツらを養子として引き取り、逃げるように上京してここで隠居暮らしだ」
夢麻「そうだったのですか…」
葵(てか…アイツら、マスターの養子だったの?!)
マスター「アイツらの心は今も傷ついているが、特に重傷なのはここの方だ。実の母親が殺され、しかも研究の協力者と名乗る連中達から、酷い言われ方をして、今も心を閉ざして引きこもっているんだ。しかも、どうやって知ったのか、ネットでその事が拡散されていて、アイツらにとっては居場所すらないんだ」
夢麻「そんな事無いです!亜子と巫女はちょっと変わっているけど、面白い人で、良くゲームの話をしているんです!」
夢麻は立ち上がってそう言った。
夢麻「それに、私の上司が言ってました。そのお母さんはの事故死には裏があるって」
マスター「裏があるって…。アイツらはゲーム会社に入ったって言ってたが…」
夢麻「勿論ゲーム会社です。少し普通じゃないですが…」
マスター「…良く分からないが、その上司はそれを調べてくれるのか」
夢麻「なおさん達には不可能は無いです!…多分」
葵「いや、多分って…」
マスター「…そうか。ならその上司に伝えてくれないか。『あいつらの事をよろしく頼むが、何かあったら訴える』とな」
夢麻「大丈夫です!とても頼りになるので」
そして亜子と巫女が降りて来た。
亜子「りゅうじろう。いつもの出して」
マスター「あいよ」
そう言って冷蔵庫からレモン風味のコーラを取り出した。
葵「りゅうじろう?」
マスター「俺の名前だ。そう言えば紹介が遅れたな。名前は『有原竜二郎』だ。さっきも言ってた通り、こいつらを引き取っている」
葵「『有原』って、養子になった時に変わったのか」
夢麻は、姉妹の方に近づいた。
夢麻「ここちゃんの容態は?」
巫女「…ぼちぼち」
竜二郎「おい!ちゃんと答えろ」
夢麻「いえ。それで、私達。ここちゃんの為に元気づけようと思って、どこか連れていこうかなと」
姉妹は驚いたような目で夢麻を見た。
葵(私まで入れているのか?!)
夢麻「どこか行きたいところある?」
亜子「…お母さんが死ぬ前にここは行ってみたい遊園地に行きたいって…」
巫女「仕事一息ついたら家族みんなで楽しもうと喜んでいたから…」
夢麻「なら、なおさんに相談してそこに行こう!」
竜二郎「おいおい。そんな事言って大丈夫なのか?」
夢麻「なおさんはこう言う事には頼りになるのです!電話で相談しよう。姉妹全員で大きな市場に行っているって言ってましたが…」




