第2章44話「退却」
黒い影がなおとユズを素早く救出して、すぐに空へ飛び立った。
シャドウ「逃げられたか…。まあいい。仕掛けはした。後はそれが発動するまでだ…」
人気の無い路地裏にユズを抱えたなおが黒い影と話をしていた。
なお「良い所で来てくれて助かったわ。おかげで彼女が助かった」
???「3人がかりとはいえ魁天魔相手に手こずるとは、腕が落ちたな…」
なお「ちょっと油断しただけよ。それで、願いの石が会場にもしかしたらあるの?」
???「そうらしい」
なお(なるほど…連中がここに居ても不思議じゃないわね…)
お姫様だっこをしているユズをおんぶにして、なおはホテルの方に向いた。
なお「ともあれ連中が大人しくしていると思えないわ。彼女を密かに部屋に戻していくから。明日の本戦により強く警戒するわ。あと…」
???「皆まで言うな。こっちも油断はしない…」
なお「よろしい。もしもの時は頼むね」
同日午後7時 ホテル
未だにユズの連絡が取れないキザクラは部屋に戻っているところだ。
キザクラ「一体どこで何をしているのかしら?」
ブツブツ言いながらドアを開けると、ベッドでいなくなったハズのユズが眠っていた。
それを見たキザクラは、起こりながらユズのほっぺを叩いて起こした。
キザクラ「ユズ‼人が心配しているのに部屋で寝るなんて‼何度電話をしたと思ってるの?」
ユズ「あれ?キザクラ姉さん?おかしいな?トイレから戻るときに誰かに…」
キザクラ「何を寝ぼけてるの?おかげで今日も加納夢麻に近づけなかったじゃない‼」
ユズは確かに誰かに襲われたが、その時の記憶が曖昧で思い出せない。
キザクラ「仕方ない。今日はもう遅いから食事に行くわ。明日がラストチャンスだから…」
ユズ「え?えぇ…」
出ていく姉を追いかける。
一瞬だけ目が赤く光っていることに気付かずに…。