第2章37話「その頃のお姉さん方」
なお達が四矢ヒロキに出会った同時刻。その頃とあるカフェにてユウリの姉2人であるキザクラとユズはある事でイラついていた。
去年の暮れに起こった加納夢麻の裁判に起こったあの一件。有原竜二郎が養子にしている姉妹の虐待疑惑の一件。そして先日起こった某会社の社長の一件。
この数年起きた不可解な事件。裁判は例の怪物化騒ぎの後にいつの間にか無罪で終わり、有原ここの虐待疑惑の調査は『虐待の実態は事実無根』という報告で打ち切り。そして女社長の土下座騒動。
裁判だけではなく、その2件も必ず加納夢麻が近くにいるか目撃情報があって必ず絡んでいる。
…しかし、いずれもこれといった証拠は全く無いまま終わってしまった。
全く何も出来ずに2人はイラついていた。
その時に若い後輩刑事が来た。
刑事「ストレスは美容に良くないですよ?」
キザクラ「これが落ち着いていられる?」
ユズ「先日の土下座騒ぎで我々警察と検察局が無能の税金泥棒呼ばわり!落ち着く方が無理よ」
刑事「その被疑者(容疑者)って、確か『天使のような悪魔のような女に消されそうになった』って意味不明な自供しましたよね。お2人が気にしている加納夢麻とは何の接点も無いように思いますが…?」
キザクラ「今年の春に入ったばかりの貴方には知らないとは思うけど、私達は関係性があると思っているわ」
刑事「まさか、その女性が天使か悪魔だなんて言うんじゃ…」
ユズ「そんな馬鹿な事を考えてないわ。けど、この事件から事が始まっているわ」
パソコンに映っていたのは、『ホーリーズ社長盗作事件』の資料だった。
刑事「これって、3年くらい前の事件ですね…。これが何か?」
キザクラ「私達は担当してないけど、そのゲーム会社の社長が、新作発表の時に発表用の映像が、社長の盗作の証拠映像にすり替えられ、それを機に盗作容疑で逮捕されたって…」
刑事「それと加納夢麻との関係は何なんですか?」
キザクラ「詳しい事は書かれていないからよく分からないけど、この事件の被疑者の供述に『天使と悪魔』。そして、新卒社員に加納夢麻がいた事…」
刑事「それって…」
ユズ「それだけじゃないわ。この3年の数件。似たような供述や目撃情報が確認されているわ。偶然にしては出来すぎているわ。少なくとも彼女が何か大きな関係を意味しているわ。何か大きな陰謀が…」
刑事「加納夢麻って、あの裁判の後に、厳重なボディーガードを雇っているって…」
キザクラ「そうよね。今の所他の罪状が無いとはいえ、うかつに近づけられないわ」
ユズ「…けど、近づく手がないわけではないわ」
ユズが見せたのは、とあるサイトで、そこには、『スマシス最後のDLC配信記念 トーナメント大会』と書かれていた。
数時間後 レストランanbura
先日の一件で店は現在改装中で、オーナーであるセレッサが理想のバリアフリーに仕上げる為に、自ら出向いていた。
セレッサ「これはこっちで、これはあっちよ」
図形図を確認しながら工事関係者に指示をする。
すると、背後から気配を感じ、振り向くと、なお達がいた。
セレッサ「あら、お久しぶりね。悪いけど今はお店改装中で…」
なお「今日はお客じゃなくてアンタを紹介してくれって人を連れてきたのよ」
セレッサ「私に会いたいって?」
なおの隣にいるヒロキが前に出る。
ヒロキ「貴女が『セレッサ・アンブラ』さんですね?」