『検体97番』 ヒルダシナリオ part4
α実験体には個性の強い者が多くいます。
検体6番は通称「ロウ」悪戯好きでいつも周りを騒がせています。
検体7番は通称「博士」知識が多く頻繁にドクター・ジャンの研究室に
出入りしているのを知っています。
検体8番は通称「臆病」いつもビクビクと何かに怯えています。
彼ら最初の検体を調整し基となる素体を厳選されて私は生まれました。
ドクター・ジャンの悲鳴が施設内に響いてから数日後。
私はドクター・ジャンとヴァレリー所長の居る検査室に呼び出されました。
ヴァレリー所長は珍しい植物を手にしていて、指先でクルクルと回す
たびに、その植物はリズムよくツンツンと頭を振るので、私の爪は痒くなるのでした。
ジャン 「では、所長…」
ヴァレリー 「あら、私に話させてくれるの?ドクターも随分軍の規律を理解されたのね。
嬉しいわ。」
不機嫌そうにするドクター・ジャンとは対照的にヴァレリー所長はとても上機嫌に話を
始めました。
ヴァレリー 「先日α実験を次のステージへ移行することが正式に決まったわ。
個体差の大きいαでは自我が強い者も多く兵士としては不適切。
よって我々は、自動学習装置テスタメントの制作に取り掛かり、
つい先日、施設内に間抜けな悲鳴が響いた日にコレは完成したわ。
完成と言っても、未だ試作機。コレが私たちの思い通りに動くか保証は出来ない。
そこで、貴方に協力を頼むことに決まったわ。」
ヴァレリー所長は不思議な植物を私に向け高らかに宣言するのです。
…ふ、不思議です。
私はこの植物を見ていると…尻尾と爪が反応して…目が離せなく…なって…
ヴァレリー 「先日、此処での一件は正にそのテスタメントの適性を見ていたの。
状況に合わせて自身の行動を制御できる上に高い学習能力を有し、
瞬時に思考、発案、行動の取れるアリフはそう多くは無いわ…
って聞いてるの?97番」
検体97番 「ふにゃ!」
ジャン 「所長…ちょっとそれを。」
そう言って、ドクター・ジャンは不可思議な植物を手に取り私の前で躍らせるのだ。
検体97番 「ふにゃー♪」
手…手が…勝手にコレを捕まえようと…っ。今は話を聴かなければ…しかし…止まらにゃい
ヴァレリー 「この子、猫素体だったかしら。」
ジャン 「ですから、外の物を勝手に持ち込まれては困ると以前から申し上げていましたが。」
何でしょう。この取れそうで取れない…ふわふわして爪に掛かりません。
面白いです。不思議と顔がほつれて…
ヴァレリー 「む。随分と強気ね。副所長…。」 」
そう言ってヴァレリー所長は何か掌に入る程、
小さいの紙をひらひらと顔の前で仰ぐように動かすのです。
ジャン 「ぐぁ…。」
ヴァレリー 「なんなら今此処で朗読しましょうか。」
ジャン 「よーし。検体97番」
ドクター・ジャンが立ち上がり、もふもふのふわふわを机に置いてしまいます。
あれはドクターの新しい発明でしょうか…我を忘れてしまいました。
自分の体が落ち着き安心すると同時に、もふもふが止まってしまった事に対して残念な気分になりました。
ジャン 「これからテスタメントの試運転を開始する。協力してもらえるか?」
検体97番 「はい。」
私は問いに対して、間を置かず簡潔に答えます。
それが最善の方法であることを理解しているから。