『廃墟に残るモノ』 リーベシナリオ part3
リヒャルダの温かな心がリーベを優しく包み込む。
トラウマを植え付けられた地で、折れる事無く前を向いているのは
リヒャルダの存在が大きい。
しかし、言葉にはしないがイェンの存在も大きい。
彼がリーベをオシラのメンバーとして迎えなければ
リヒャルダと出会う事も無かったのだから…
此処で他の反帝王都組織の連中と合流する予定らしい。
メガネが難しい言葉を並べて色々と説明してたけどわかったのはそれだけ。
興味が無いわけではない。私には関係ないからほとんど聞かなかっただけ。
イェン「リーベちゃん。お疲れ様~♪」
ご飯の準備と片付けしかしていない私に対してお疲れ様って…馬鹿にしてるのか。
イェン「あれッ…なんかおっかない顔…怒ってる?」
リーベ「別に。それよりいつまで此処に居るの?私、早くあの人を探したいんだけど。」
イェン「はいはい。青髪の人ね…リーベちゃんの気持ちは十分わかってる。だから、明日まで待ってね~。」
まるで私を子どもの様に扱うコイツはやっぱり好きになれない。
イェン「どうやら、その人の事を知ってる人が明日、此処に来れるみたいなんだ。」
なんだコイツ。やっぱり凄い奴なのか。
リーベ「そ、それなら待ってあげる。」
私はイェンに会う前の数年間、一人で探し続けて手がかりすら掴めなかったのにコイツはたった10日程度で何かを掴めるのか。
青い髪の人に会えるかもしれない。そう思うだけで体が熱くなる。
恥ずかしさと期待で落ち着かない。まだ会えるとわかったわけでもないのにこの浮遊感に似た気持ちが私を満たしていく。
イェン「でも、覚悟も必要かもね…」
急に冷めた声でイェンがぼそりと言う。
リーベ「ちょっと、それどうゆう意味?」
イェン「おっとゴメン。いや。良く知らない僕から言うベき事ではなかったね。とにかく明日を楽しみにしててよ。僕はまだ仕事があるからまたね。」
イェンはそう言って皆の元に歩いていく。
アイツの言葉が少し気になったけど、それ以上に私は明日が待ち遠しくて仕方がなかった。
日は暮れ、夜になり森の中では急に冷たい風が吹き始める。
私はピンク色のパジャマに着替えて寝る支度を整えるが今日も眠れそうにない。
昨夜とは違うお祝いの前日の様な高揚感が冷めないのだ。
少し水を浴びたいと思い川へ向かう。
そこにはイェンが居て顔を洗っていた。
イェン「ふぅ…」
溜息をついて空を仰ぐその姿は明らかに疲れを語っていて、消えてしまいそうな蠟燭を思わせた。
リーベ「自称天才さんでも終わらない仕事があるのね。」
イェン「うわぁ!」
イェンの跳ねるように驚く姿は小動物っぽくて滑稽だ。
イェン「…リーベちゃんか…はは。そうだねー。…仕事が終わらないからフラフラさ。」
やはりおかしい。普段なら
イェン「問題が解決してないのは僕の所為じゃない。まだ時間が来ていないだけ。
問題そのものは解決済み。細工は流々、仕上げを御覧じろってね。」
っとか意味不明な言葉を並べて、次には軽口をたたき始めるのに…
リーベ「酷い顔。」
私はそう言って座っているメガネを見下ろすが、メガネは鼻で笑って話を変える。
イェン「…。此処にはもう慣れましたか?」
余裕なんて無いクセに…コイツはいつも他人を優先する。弱いくせに。
リーべ「まぁ、それなりにね。」
イェン「それは良かった。
いい機会だから謝らせてくれるかい?」
メガネは背筋を伸ばして真っ直ぐに私を見つめて来る。
リーベ「ぇ…?」
不意を突かれて私は少し戸惑いを覚える。このメガネごときに…不覚だ。
イェン「この組織にもっと力があれば君を前線で戦わせずに守れたはずなんだ。
それが出来ず、君の力を借りているのは、僕の力不足だ。ごめん。」
コイツは何を言い出すのだろうか。元々そうゆう話のはずだ。
私は青い髪の人の情報を求める。代わりに、こいつらの闘いの助けをするって。
それなのに謝るなんて…
…そうか。コイツにとって強い弱いは関係ないのかもしれない。
戦場に女である私やリヒャルダが出て命を危険にさらしてしまう事を悔いているんだ。
弱いくせに…ムカつく。
リーベ「こうゆうのは向き不向きっていうんじゃない。貴方は頭で戦ってるんでしょ。
だいたい貴方の細い腕で剣を握ったって、腕ごと切り落とされるわよ。」
イェン「ははは。そうかもしれないね…」
そう言ってイェンは立ち上がり、残っている仕事を片付けると戻って行った。
なんだかモヤモヤする…そう…まるで悪い事をしてそれを隠しているような
…そんなモヤモヤだ。
せっかく、妙に熱くなった体が冷えたのに今度はメガネ如きの事で眠れない。
全部メガネの所為だ。一言言ってスッキリして今日はもう寝よう。
そう心に決めてメガネのテントの前まで来た。
来たが…。
私は何を言えば良いのだろう。
「えっと…さっきは言い過ぎた。ごめんなさい。」
在り得ない。私がメガネに謝罪をする?そんなの夢の中ですら認めないわ。
えっと…じゃ~…その…あぁ~…。わからない。
私はガバッっとテントの布を払って一言ヤツに言ってやった。
リーベ「はや…早く寝なさーい。」
心臓はバクバク言っている。この私があのメガネに謝罪したのだ。私はちゃんと謝った。
ほらっ私は謝ったわよ。これで満足でしょ。何とか言いなさいよ。
でもメガネは口を開けて呆けている。私がせっかく謝ったのに何も言わねぇのか
このメガネ!
リーベ「ッ馬鹿野郎!」
そう言って近くの岩を全力で叩き割り、私は自分のテントに戻った。
その後は意外な程、気持ちよく眠れた。
はい。
オシラのリーダー、イェンさん。
カッコイイですね。
精神的支柱でオシラの頭脳。正にリーダーという感じなのですが…
リーベさんの心の声が聞こえない彼の苦労には涙を禁じ得ません。(泣)