表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/19

ー第1話リスタート



ー第1話リスタート

昭和55年8月岐阜県岐阜市北部



あれから2年。

雨屋で行方不明になった末次清美は、17才の高校生になった。

プロポーズされた竹山透と共に、自転車で北に1時間かかる、県立高校に通っている。

小谷刑事の息子である利治は、2月で3才の誕生日を迎えていた。

45才の竹山と戦った分部豊は、裁判で3年の実刑を言い渡されて、2年目を刑務所内で過ごしていた。


分部が収監されている岐阜刑務所は、岐阜市北部の…現在のメモリアルセンター北側に建っていた。この刑務所は、網走刑務所の次に重い刑の囚人が収監される施設で、高さ10m以上ある厚いコンクリート壁に囲まれていた。

岐阜市は、真ん中の長良川を挟んで、通称川南かわみなみ 川北かわきたと呼ばれる。初期は、街の大半は川南にあり、この刑務所が建設された頃は人家など無い場所だった。

しかし、昭和55年頃には周囲を民家が取り囲み、この広大な敷地とコンクリート壁は街にそぐわない景観となっていた。


分部は、この刑務所の中で、ある事件をそのまま実行しようとしていた。

分部は元々45才の竹山の世界の人間だった。その世界で、この刑務所は脱獄事件を起こしている。

その脱獄の詳細を、分部はネットのサイトで詳しく知っていた。岐阜刑務所は、この脱獄事件により数年後閉鎖・移転される事になる。


独房は、大きなホールの両側に並んでおり、北側に大きな鉄扉がある。その向こうに看守の詰所があり、2重に鉄格子の扉で仕切られている。

この建物は昭和初期に建設されたもので、幾つか改修された部分がある。

それは、ホールの天井に沿って通っている配管だった。

問題は、この配管が北側の鉄扉の上のコンクリート壁に穴を開けて、外に出ている事だった。改修の際、開けられた穴は塞がれるはずだった。しかし、15mの高さの配管に取り付く方法がないという理由で、穴は塞がれず工事は終了してしまった。

配管は詰所の天井裏を通り、建物の外に出て、コンクリート壁の外に立つ電柱へと続いている。

分部はサイトで見た通り、競馬好きの看守と親しくなり、暑い夜にホールで寝られるよう、独房の鍵をはずしてもらう事に成功した。


午前0時の巡回の後…南側の明かり取りの、天井まである鉄格子の入った窓枠をフリークライミングの要領で登ると、配管に飛び付いた。

サイトの脱獄犯同様、分部も密かに指を引っ掛けるだけで登る訓練を、2年間密かに積んでいた。

フリークライミングなど見た事のない、この時代の人々にとって、それを想像する事など出来なかった。

そして、新しい配管は軋みもせず、分部の体重を支えて、鉄扉の上まで導いた。

詰所の天井裏をくぐり、ポッカリ外に開いた穴から、コンクリート壁まで1mを飛び移る。

そこから電柱に飛び移り、ズルズルと滑り降りると…分部は暗闇に姿を消した。

彼の独房の床には、便箋に書かれた文字が残っていた。


ーまだゲームは終わってないぞ 老いぼれ小谷ー

と。


こうして、分部のカウンターアタックのボールが、昭和の岐阜の街に蹴り込まれた。

岐阜県警捜査1係 小谷こたに 晴朝はるともに向かって…。




ー第2話コンペティション エリアにつづく






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ