ー第10話分部射殺命令
ー第10話分部射殺命令
ゴーケアフォーナカジマ岐阜店は、大騒ぎになっていた。
社長の中島勝義はプロバイダーに電話をかけたが、サーバーダウンの原因が不明の為、復旧のメドが立たないと言われていた。
小谷利治は三ツ矢と肩を落としていた。その横で、セイヤとミクが済まなさそうにしている。
「気にするな。お前らのせいじゃない。」
小谷利治は中学生を責めても仕方ないと云う感じで言った。そこに小谷晴朝が戻ってきた。
「利治、やられたな…何故パソコンが消えてる?。」
「原因は不明です。復旧のメドも立ってません。」
「そうか。するとネットカフェは消える訳だな。分部の拠点から…。」
店の外に、サイレンと共にパトカーが集まってきた。
利治の上司である三橋が駆け上がってきた。
「小谷。分部は?。」
「すいません。逃げられました。」
「バカヤロー…。」
まで言って、三橋は小谷晴朝を見た。
「えっ!。小谷さん?。でも、若い。」
小谷晴朝は、それが誰か分かった。竹山透の身辺警護をさせていた三橋達哉だった。ちなみに、三橋未来は娘で、そっとブースの陰に逃げて行った。
「三橋か!。元気そうだな!。」
「はい。でも…利治これは?。向こうから?。」
「ウチの親父です。年はマイナス30才です。」
三橋は、急に新人刑事のようになった。
「お久しぶりです。またお会いできて嬉しいです。」
小谷晴朝はおかしかったが、笑わないようにした。
「混乱させてすまん。三橋、息子のミスは俺が代わって謝る。」
「いえ。そんな。自分の指導力の無さです。」
「三橋。指導力なんてものを信用するな。刑事の仕事は自分でつかんでゆくしかない。教えられるなどと自惚れるな。チャンスを与え、成功するようにバックアップする。それだけだ。ミスは個々の人物の責任だ。間違うな。」
「はい。それは、何度も言われておりました。肝に銘じます。」
「それで良い。」
「それはそうと、事態が急変しています。」
「指揮系統の話か?。」
「さすがですね。…実は、警視庁の2部がこの件に出張ってきてるんです。」
「2部?。」
「30年前なら、特別編成班と言ったら分かります?。」
「諜報関係で、警視庁が発足させるヤツだな…。令状なしで家宅捜索でき、犯人を部の判断で射殺できる権限もある。諜報関係で何が起こってる?。」
「小谷さん。今は2部に適当な部署の名前を付けて、常設されてるんです。今の名前は警視庁生活安全課2部を名乗ってます。…実は、小谷さんに判る名前だと…県営グランドの地下に、旧陸軍の施設が有りまして、その中に旧ドイツから盗まれた核弾頭が眠っていたとの事です。分部が、その施設のスペアキーを持って中に侵入したのを発見した為、包囲したんですが…ここに分部が居るとの一報が入った為に、2部が日本中のサーバーをダウンさせました。つまり、パソコン通信を出来なくしました。」
「情報汚染か…。核弾頭の情報を流すだけで、社会は崩壊する。」
「それで…2部が時間を切って来ました。明日朝6時までに、県警が分部を確保すれば、分部を小谷さんと共に向こうに帰すと…。」
「出来なければ?。」
「2部が動いて、射殺も含めて分部の破壊活動を阻止すると…。」
「何故、6時まで猶予を?。」
「2部は、雨屋事件の詳細を知っています。そして、2部トップの白根刑事部長は、小谷さんに借りが有るとの事です。それを返したいと…。」
「なる程。俺は会った事も無いし、どんな借りかも知らんが…。こっちの小谷晴朝が、蒔いておいてくれた種だな。…あまり時間は無いが。無いよりはましだ。一度田島と打ち合わせなきゃならんな。」
小谷晴朝は、分部を想った。
「分部を死なす訳にはいかん。」
三橋も利治も三ツ矢も、その言葉にうなづいた。分部にとって、核弾頭は駆け引きの道具にしか過ぎない。しかし、彼以外の人間にとって、それは破滅を意味する。それに分部は、おそらく気づかない。手を打たなければ、確実に死が待っている。皮肉にも、小谷晴朝は全力で分部を救わなければならなくなった。
次話予告!
第11話長い夜の始まり
分部を救わなければならなくなった小谷晴朝と田島本部長…。妻の佐恵子に小谷晴朝が託した秘策とは?。