ー第9話ゴーケアフォーナカジマ岐阜店
ー第9話ゴーケアフォーナカジマ岐阜店
時間は午後4時を過ぎていた。
小谷利治は分部が潜伏しそうな場所を潰している所だった。東海3県に20店舗を持つ、ネットカフェの社長に確認の電話を入れる。
「…そうですか。引き続きお願いします。」
小谷利治は携帯を切った。メモリアルセンターの核弾頭の件は伏せられていた。ただし、ブースに入れない事は申し合わせになっていた。
「いませんか…。」
三ツ矢が疲れた顔でハンドルを軽く叩いた。するとガンダムのテーマソングが流れだした。
「…はい。小谷です。来た?…どこに?。岐阜店?。ブースに入れてないでしょうね?。5分でいきます。」
「先輩。どこです?。」
「加納二丁目のゴーケアフォーナカジマ岐阜店だ。」
覆面パトは走り出し、回転灯が回った。
「どうやって、メモリアルセンターを出たんでしょうね。」
「いつもの事だ。あいつは追い詰められるが捕まえられない。それでも行くしかない。」
「今度もオヤジさんが手錠をかけてくれますよ。」
「だと良いが。」
小谷利治は本部に無線を入れたが、最初に到着するのは自分達らしいとわかった。パトカーのほとんどがメモリアルセンターに移動していた。
「オヤジさんはどこです?。」
「セイヤとミクを連れて、これから行く岐阜店だ。」
「…恐るべしですね。名刑事ってのは、運まで引き寄せるんですか?。」
「呼び合うのかもしれん。あの2人は…。」
「じゃあそうなりたいもんですね。呼び合うなら、刑事なんてたやすい仕事だ。」
「俺達には無理だ。足で稼ぐしかない。」
「ですね。」
小谷晴朝はトリプルシートで、ネットカフェなるものをセイヤに説明されていた。隣りでミクがアイスクリームを舐めている。
「…。これは、使い方によっては世の中を破壊できるな…これ専門の部署が警察に無いと危ない。」
「有るんだな。オヤジさん。電算機犯罪課ってのがさ。」
セイヤは犯罪関係のサイトを小谷晴朝に見せていた。
フロントの方で、誰かが怒鳴っている声が聞こえた。
「でさ…。」
小谷晴朝は、セイヤとミクの口を両手で塞いだ。
2人がモグモグ暴れるのを押さえながら、シッーと2人を黙らせた。
「…分部だ…何を怒ってる?。」
ー待った。わかった。4番を使ってくれー
店員が大声を出しているのが、今度ははっきりわかった。
「2人共ここに居ろ…机の下に隠れてるんだ…。」
「なんで分部さ〜ウチらのトコばっかくんの?。」
ミクが泣き声になっている。
「セイヤ…ミクを頼む。」
小谷晴朝はセイヤの肩を叩いて、ブースを出た。4番ブースの位置を頭に描きながら、床に這いつくばって動いてゆく…。
分部は核弾頭のニュースをネット上にバラまくつもりだった。地下施設の地図に核弾頭を写した携帯の動画…。
「その前に、老いぼれ小谷に何をするか教えてやらないとな。」
4番ブースの中で、分部はニヤニヤしながらつぶやいた。
その声を小谷晴朝は、隣りの3番ブースで聞いていた。中で若い女性が居眠りをしている。
このまま、ブースの仕切りを飛び越えて、分部にダイブするつもりでいたが…その作戦に邪魔が入った。
ミクが大声で叫んで走ってゆくのが聞こえた。
「分部だよ〜タスケテ〜コロサレル〜。」
それに被さるように。
「ミクだめだよ。オヤジさんの作戦パーじゃん!。」
と言うセイヤの声に、小谷晴朝は思わず笑ってしまった。
「老いぼれどこだ?。」
と分部の声がして、立ち上がる音がした。さらに悪い事に、利治の声が聞こえてきた。
ー何番です?ー
ー4番です。ー
それに、ミクとセイヤの意味不明なしゃべりがBGMを付け始めた。
「息子もか?。」
分部はブースの仕切りをパソコンの台に乗って越えた。4番の向こうは廊下になっている。左3mでフロントになり、出口がある。
小谷晴朝も3番から飛び出た。小谷利治と三ツ矢に、パニックになったセイヤとミクが絡んでいる。分部はそれをユウユウかわして、出口の階段を駆け降りていった。小谷晴朝も、その背中を追った。
その瞬間。ネットカフェの全パソコンの画面が消えた。白根が最後の手段を使って、日本中のプロバイダーのサーバーをダウンさせたのだ。
もはや、事態は深刻になりつつあった。そして分部は、ビルの非常階段から非常階段に飛び移り…ついに、小谷晴朝の視界から消えた。
分部はまたも包囲網をシフトさせ、その間を抜けて行った。
次話予告!
第10話分部射殺命令
ついに2部は射殺を含めて、分部の破壊活動阻止を県警に通告してきた!。生きて昭和に帰さなければ…分部を死なすわけにはいかん。小谷晴朝は活路を見いだせるか!。