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ファンタスティックfool

 そして、翌日の夕方ごろ。ようやく、俺たちはクラインの自宅へと帰り着くことができていた。


 アンナやハンスさん、フリーダさんへの挨拶は済ませられたものの、農作業をするというような時間でもなかったので、俺もそのまま直帰していたのだが……。



「狭いな……」

「せまいですね……」



 この山小屋に四人というのは、流石に息が詰まりそうになるほど狭かった。

 当然にと言うべきか、どことなく責めるような視線でこちらを見るミリアムのことは……気にしないでいられないだろう、やっぱり。



「……なので、ちょっと増改築しようと思うんだけど」

「考えてはいたのですね。少し意外です」

「ンミリアム殿ォ!! そのような物言いは不敬ではないのかとこの私は思うのだが!!」

「ちょっと声落としてくれオスヴァルト」



 そもそも、ミリアムのお小言というのは大抵はこちらへの注意喚起だったり、基本的には何かしら考えることを促すためのものだ。わざわざそれを不敬などとは思えない。俺だってそんな立場でもなし。


 ともあれ、列車に揺られて数時間。列車に乗るだけでも一苦労だったのだから、家に帰って来てからのことを考えずにはいられなかった。

 結果、まあ当然……家の中も手狭になるだろうということ、加えて、これから先に訪れるだろう問題については行き付いてはいた。



「一応……俺たちの目的は魔族という種族そのものを復元……いや復活……させることなんだけど、そのためにはどうしても数を増やさなきゃいけなくなる」

「そうですね。少なくとも、『楔』としての役割を果たすことができるだけの数は確保していただかないと」

「……まあ、そうなんだけど」

「何かあったんですか、リョーマさま?」



 何か、というか……既に問題は一つ、思い浮かんでいる。



「対外的に、うちには俺とミリアムとレーネの三人しかいないことになってる」

「オスヴァルトのことは言われなかったのですか?」

「そうだな」

「ぬァぜです!?」

「説明し辛いからだよ。単調な嘘じゃすぐバレる。あともうちょっと声落として」



 レーネの時はまだ土砂崩れという理由づけができたから、まだここに置いておくことにはそこまで違和感は無い。事故のトラウマと出自のおかげで、俺たち以外の他人とあまり関わりたがらない――と、先んじて説明もしているし、同情はされても疑念を抱くことはそれほど無いはずだ。


 対して、オスヴァルトのことを説明しようにも、理由がどうしても捻り出せない。

 ミリアムと同じように従者と説明するのは構わないが、じゃあ何で同じく従者であるはずのオスヴァルトが、国境をまたいでフリゲイユまで行っていたのかという話になってくる。


 俺がフリゲイユに行っていたのは、ヨナスの伝手を辿って仕事を斡旋してもらうためだ。アンナたちにもそう説明しているし、猟師なんてやってるだけあって、アンナ自身も洞察力は高い方だ。「偶然昔の知り合いに会った」なんて真っ赤な嘘が通じるようにも思えない。



「だから、この山小屋それ自体は、『三人しかいない』ように見せたい。けど、それとは別に、これから先増えていくであろう面子にも配慮した生活スペースも作る」

「となると……地下に?」



 ミリアムの問いに、頷いて答える。

 結局のところ、そのくらいしか選択肢は無いだろう。


 ありきたりではあるが、ありふれているというのはそれだけ確実な手法だということでもある。まして、こんなボロボロの山小屋に地下室があるなど、誰が考えようか。



「とはいえ、絶対にバレないわけじゃない」

「人間の好奇心というものはどうしても誤魔化せませんからな! 故に知識を追求するのは甘美なことでもありますがぁ! ン実に! 追及『される』側にとっては恐ろしいことこの上ない!」



 長ぇよ。


 しかし、一応ミリアムはこちらの意図を理解してくれていたらしい。長々と続きそうなオスヴァルトの言葉を意に介さず、こちらに向けて告げる。



「地下の居住空間に行くまでに、何か別の空間を挟むのですか」

「そんなところかな」



 そもそも、疑問を持たれるような怪しい態度を取ること自体が好ましくないのだが、魔族のこととなるとどうしても普通の人間には言えないことばかりになる。当然、「何か隠し事をしている」ことは容易に察せられるだろう。


 だから、そこに至る前に好奇心を満足させる「何か」を置く。

 例えば金庫。例えば高価な魔石。例えば人に見せることの憚られるような書物。何にしろ、最終的に本命に辿り着かせさえしなければいい。



「でも、どうするんですか?」

「金庫でも設置しますか? 効果があるとは限りませんが……」

「別に、一つに限定する必要は無いんだ。いくつかの案を同時に使おうと思う」

「と、申しますと……」



 思い当たるものはいくつかある。が、一つだけでは心もとないのも確かだ。どうしたって万人に共通して興味を惹くことができるようなものはないわけだし。


 高価なものというのは最も安易、かつ分かりやすく人の欲望を刺激するが、金に執着しない者というのもやはり、一定数はいるものだ。それだけでは不十分というのも間違いない。



「魔法の訓練場。倉庫。貴重品と食料の保管庫……とりあえずはこの三つを同時に」

「頭おかしいんですか?」

「初めて直接的な罵倒に来たなミリアム」



 俺も割とアホなことを言っているとは自覚があるが。

 そもそも、不可能なことならそもそも言ったりしない。



「一応理由はあるんだ。まず、魔法の訓練場にする、っていうのは分かりやすく『危険』だと主張するため。危険な場所なら近づきたがる人間も多いだろうけど、『案外大したことない』なんてことが分かれば途端に興味を無くすものだから」

「ンなァるほど!! 確かに! 期待外れ! というのは興味や好奇心そ削ぐのには実に有力! 僭越ながら私オスヴァルトも生前に経験したことがありまして! まずもって精霊術の効力の見積もりをいささか間違えたことが」



 そこまで聞いてないぞ俺は。


 つらつらと、水が流れるように語り続けるオスヴァルトを尻目に、俺の方も続ける。



「で、俺はそこで、冷気の魔法を訓練するつもりだ。あるよな、氷の魔法って」

「ええ、まあ。私は熱の魔法をお勧めしますが――」

「ごめん、そっちはいいや。料理に応用できる程度に使えればこと足りそうだし」



 拒否を示すと、ミリアムは露骨に落ち込んで見せた。

 そこまで落ち込むようなことだろうか。前冥王が熱の魔法を使っていて、ミリアムにはその印象が強い、とかだろうか。


 はっきり言ってしまうと、そういう固定観念を持たれ続けるのもいい迷惑だ。俺には俺のやり方と方針がある。ミリアムにも悪いし、口にはしないけども。



「で、氷の魔法を練習して、地下室を冷蔵室にする。これで食料も少しは長期保存できるようになるだろうし」

「あ、それで食べものの保管庫、って言ったんですね」

「そういうこと。最後は本当に取って付けただけだけど、適当に場所を取れば倉庫代わりにもなるんじゃないかって」

「本当に取って付けただけですね」



 事実とはいえもっと手心を加えてくれないだろうか。



「でも、この山小屋のその辺にホイと置いておくよりはマシだろうし……」

「どちらにしても、後になって燃えてしまったとか凍って取り出せないとか、そうならないよう気を付けてください。流石にそこまでは対処しかねます」

「分かってるよ」



 最低限、例えば術式の構築のいろはであるとか……そんなことを教えてはもらうつもりだが、俺自身で気を付けるべきことにまで気を回してもらうつもりもない。


 問題は、やはり俺の魔力操作の習熟具合か。列車での移動の最中にも、練習代わりに武器の形成と魔力へのあ還元を繰り返していたが、それでも十分な成果が得られているとは思えなかった。



「でも、リョーマさま。どこかに、穴を掘るんですよね」

「ん? うん、そうだな。どうかしたか?」

「すごく時間がかかりませんか? スコップとかも、ボロボロなものしかないですし……」



 手で掘るんだよ!


 ……と言いたいところだが、そんな無茶なことは流石にしない。させられない。

 穴を掘ったり土を運んだりというのは、単純な力技だけでどうにかなるものでもない。運び出す土の量など莫大なものになるだろうし、多分、ちゃんとした道具を使わなければ話にもならない。



「ンフフフフハハハハハハハ!! それこそこの私にお任せを!!」

「ふぇ?」

「は?」



 オスヴァルトの掲げたその手にごく単純な――しかし、巨大な術式が現れる。

 唐突なオスヴァルトの言動に意表を突かれて呆けてしまっている俺たちを尻目に、オスヴァルトはその腕を術式ごと床下に向けて突き出して――――。



「ちょ」



 まったくの想定外だったのだろう。あるいは、少なくとも今すぐやることは無いとでも思ったのかもしれない。ともあれ、制止させようと伸ばしかけたミリアムの腕は空を切る。


 次の瞬間、僅かな揺れを感じた。


 地震……とは、少し違う。横揺れ、というか細やかな振動。機械で地面を均し、掘削するような鋭い振動が発せられた。



「ひゃっ!?」



 突然の出来事に驚き、俺の服の裾を握るレーネ。

 元々日本にいた俺からすると、この程度の地震は大したものとも思わないが……超大陸という関係上、こちらの世界の地層は安定しているのだろう。もしかすると、今までに地震というものを経験したことが無いのかもしれない。


 他方、どうやら「それ」の出来が満足いったのだろう。両手を振り上げこちらに向き直るオスヴァルトの顔は、非常に満足げなドヤ顔だった。


「ンハハハハハフフハハハハハハハハハ!! エ゛フン! この私は元来霊魂! ではありますが――『精霊術師の』霊魂であります! 魔法と精霊術は出力(アウトプット)の方法の違いによって呼び分けが為されているもの、よってその組成を組み換えさえすれば地下室を作ることなどこの通りイ゛ッッ!!」



 高らかに、台本を読み上げるようにつらつらと紡がれる言葉の最中。

 オスヴァルトの頭頂部にミリアムの手刀が突き刺さった。



「何なんですか貴方は!? 何を許可も得ずに勝手に術式を構築して発動してるんです!?」

「ミリアム、許可得ずに俺をこっちに呼び出したこと引き合いに出していい?」

「それは本当に申し訳ありません」



 本当に一刻を争うことだったのだろうし、術式自体も不安定で呼び出す人間も完全にランダムだったのかもしれない。


 ともあれ、状況が違うことも確かではあるのだが。



「ともかくオスヴァルト、今のは勝手が過ぎます。今の魔法のせいでこのボロ小屋が崩れでもしたらどうするつもりだったんですか」

「……ふむ……。私の術式は完璧なものと自負しておりますが……そうですな、その時は誠心誠意、謝罪をしておりました」

「あのう。補償は……?」

「できませんな! ンフフハハハハハハハハハゴッ!!」



 その瞬間、再びミリアムの手刀がオスヴァルトの頭に叩き込まれる。



魔力に還元(ころ)しましょう。今すぐに」

「落ち着けミリアム! 悪気があったわけじゃないんだから、な!?」



 気持ちは分からないでもないけども、いくらなんでも早計に過ぎる。初対面からの印象がそれほど良くないというのも確かだろうが。

 逆に考えると、何も教えずにこれだけの魔法を扱えるというのはすごい才能なのではないか。何せ教えられても未だ習得の糸口しか見えてこない俺みたいなのもいるんだから。


 考えれば考えるほど出来が悪いな俺って。



「リョーマさま、悪気が無ければ何してもいいわけじゃないと思います」

「レーネは俺より冷静だな……」



 女の子は男に比べると精神的な成長が早いと言う。

 言うが、そもそもこれは、レーネがオスヴァルトのことをあまり好きじゃないということだと考えるべきだろうか。クラインに戻る前も、結果的にミリアムとレーネの二人にオスヴァルトの相手を任せてしまったわけだし……あのうるささを考えると、辟易してしまってもしょうがないか。


 一つ息をつき、三人を見渡せる場所に位置取る。



「……あのさ、オスヴァルト。まずは少し自重してくれ」

「しかし、王よ!!」

「オスヴァルトの能力の高さは充分に分かった。けど、せめて……こう、俺たちの住む場所なんだし、周りに影響が出るようなことなら、俺かミリアムに言ってからにしてほしい」



 特に今回はミリアムも言う通り、下手をすればこの小屋が壊れていたかもしれないような状況だ。

 オスヴァルトも絶対の自信を持っていたようだが、万が一ということもある。オスヴァルト一人が被害を受けるなら……最低、俺も同じように被害を受けたとしても、「まあいいか」程度で済むが、これがレーネやミリアム……もっと言えば、偶然この小屋にやってきたアンナが被害を受けるかもしれないとなると、一言注意しておくのが道理だろう。



「は……! 申し訳ありません、王よ……!!」

「けど今の俺じゃ、魔法すら使えないし……使えるようになったとしても、オスヴァルトよりも上手くは扱えなさそうだしさ。頼りにさせてくれるか?」



 せめてフォローを一言入れておくべきだ。そう考えたからこその発言だったのだが、どうもミリアムの表情は「言っちまったコイツ」とでも言いたげなものだった。

 レーネの表情もどこか複雑だ。そうする必要があるとはいえ、俺がオスヴァルトにフォローを入れたのが不服なのだろう。短い間だったとはいえ、元々この家にいたのは、俺とミリアムとレーネの三人だけだ。いくら男よりも精神的な成熟が早いとは言っても、唐突に降って湧いた異物を許容するのは難しいだろう。


 対照的に、オスヴァルトはひどく感激したような様子、ではあるのだが。



「……で、どうしたんだミリアム」

「いえ、少し気になることと言いますか」



 一方でミリアムの態度が気になった俺は、軽く耳打ちしてその懸念について尋ねてみることにした。



「フォローを入れるのはいいのですが、タイミングが絶妙すぎませんか?」

「やっぱり……?」

「自覚してたんなら自重してくださいよ」

「いや、俺がフォロー入れないと……ずっとオスヴァルトに対して辛辣なだけじゃ、それこそいざって時に敵に回られたりするんじゃないかって」

「それは……そうですが、これはこれで、忠誠心こじらせて暴走しますよ。経験則ですが」

「経験則」

「先代の」



 先代冥王の配下にそういう魔族がいたのだろう。思えば日本でもそういった話は、創作上でも歴史上でもよく聞くものではあった。

 忠誠を誓うべき相手に自分の勝手な理想を押し付けて、それと反する行動を取ったら勝手に幻滅するとか。周りに相談もせず勝手な行動をしでかして味方に大損害を出すとか。どちらにしろ善意だからタチが悪い。



「それってどんな……」

「独断先行だったり、思い込みで味方を後ろから攻撃したり……」

「お、おう……」



 オスヴァルトの方へとこっそり視線を向ける。

 大仰なポーズに、欠片程度には見える反省と、それ以上に感じるこちらへの忠誠。成程、ミリアムが危惧するようなことが起きても何らおかしくはない。



「配下とはいえ、あまり信じすぎてもいけませんよ」

「分かってるよ」



 分かってる。

 本当に、分かってはいる。


 どんなに親しい間柄でも……たとえ、一時(いっとき)は愛を囁き合ったような間柄であっても、一時の感情と気分と利害によっては、簡単に裏切ることができるのだと。


 だから、俺の父は死ぬことになった。だから、俺は――。



「……分かってる」



 だからこそ、俺は「信じたい」という気持ちを止められない。


 理解している。そんなものは、ただの思考停止を良い風に解釈しただけの言葉だと。

 オスヴァルトだけじゃない。突き詰めてしまえば、ミリアムにしろレーネにしろ、疑いを向けることができる要素はいくつもある。


 レーネが本当は人間から遣わされたスパイだったら、とか。オスヴァルトは、本当は俺たちを滅ぼすつもりで潜り込んだのだとしたら、とか。ミリアムは、実は人間を滅ぼすつもりでいるのだとしたら、とか。考えれば考えるほどに、不安は湧いて出てくる。

 騙されたくないと……父と同じ轍を踏むことはできないと。けれど、そんな強迫観念じみた思いを抱き続けたままでは、いつまで経っても前には進めない。


 疑って、訝しんで、怪しんで、その上で(・・・・)信じるなど矛盾も甚だしいが、普通の人間というものはごく自然のうちにそれをやってのけている。なら、魔族という集団の長になろうという俺が、いつまでもそうすることができずにいていいわけがない。

 と、そんな考えが顔に出てしまっていたのだろうか。仕方がないといった面持ちで、ミリアムは続けて言う。



「――ま、言ってリョーマ様が聞くようにも思えませんし。仕方が無いので私が警戒しておきましょう」



 散々甘いのなんのと言っておいてこれである。


 元々の経緯からして、俺に対して引け目があることは、まあ間違いない。過保護になっても仕方がない気もするが、それにしたって一度あんなことを言ってこのセリフ。素直じゃない姉か母親か何かか。

 いや、年齢を考えると祖母すら遥かに通り越して祖先というくらいの域に入っているわけだが。

 亀の甲より年の功とでも言おうか。知識も経験もこの中じゃ一番なわけだし。


 ……歳考えろよ、と思わなんでもない。



「今失礼なことを考えませんでしたか?」

「いや何も」



 先人に対する敬意を再確認していただけで何も問題は無い。

 無いのだ。



「……ともかく、私の目の届かないときにはどうしようもありませんからね。その時はご自分でなんとかお願いします」

「ああ。なんとか、できればする」



 魔法……というか、術式について、俺よりも遥かに卓越した技術を持つオスヴァルトの暴走を、俺が止められるかは疑問だが。その時はその時で手を尽くそう。

 ミリアムほど徹底して割り切ることもできないだろうし、そもそも暴走とはいえ、俺の意に反することをされては相当ヘコむことだろうが。


 ……さて。



「……じゃ、この話は一旦やめにしよう。地下室のことについて考えなきゃ」

「そうですね。オスヴァルト、入口はどこに?」

「は!! ……は? 入口?」

「は?」

「ははははははは!! 作っておりませんでしたなぁ!」



 その瞬間、ミリアムの右手に現出した短刀がオスヴァルトの眉間へと――。



「ミリアムさん、待って! 待って!!」

「落ち着けミリアム! 今回のはただの失敗だ!」



 ミリアムの右腕にレーネがしがみつき、俺は俺で背後から羽交い絞めにして抑えつける。

 流石に懲りたのか、今回はオスヴァルトも全力で額を床に擦りつけていた。どうやらこちらにも土下座の習慣があったらしい。

 というか、頭を低くして「首を差し出す」ことが一つの礼義だと考えるべきだろうか。剣も魔法もある世界なのだから、騎士なんかの習慣が発展して市井に根付いたとしてもおかしいことではないか。


 ……というか、そんな考察をする前に。



「オスヴァルト! どこか適切な場所に、いいか、『適切な』場所に穴開けて入口を作るぞ! まさか嫌とは言わないだろうな!?」

「は、はァッ!! 我が身命を賭してでも!!」



 そこまで覚悟を決める必要は無い。


 ……この後、俺とオスヴァルトは一時間少々をかけて地下への入り口と階段を作り上げることになったのだった。


 なお、体面と反省の意味もあり、これからしばらくはオスヴァルトは地下室で寝泊まりすることになった。

 不憫ではあるが自業自得。かもしれない。

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