きょうだいのいろ
きょうだい二人、手を取り合って生きてきた。
二人だけの世界に、別の色が混ざったのはいつだっただろう。
姉さんの様子が少しずつ変わっていたのに、俺は気づいていた。笑う回数が増えた。声が明るくなった。物静かな様子は変わらないものの、前よりも魅力的になっていた。
恋をした、と聞いた。それは他ならぬ姉自身の口からの言葉だった。
俺はそこでようやく気づいたんだ。姉さんを、好きだと。姉としてではなく、女性として。
泣いたって仕方がない。気づくのが早かろうと遅かろうと、結ばれない恋であることに変わりはない。
ある日のことだ。姉さんが泣きながら帰ってきた。曰く、処女は面倒臭いから嫌いだ、と。
俺はまず、そこまで進んでいたのかとショックを受けた。次に、怒り。俺の姉さんが想ってやっているというのに、なんという言い様。
けれども次の姉の一言によって、その怒りは大量の水でもかけられたかのように不気味に静まり返った。
抱いてほしいの、と、彼女は言った。
抱く。何を?素知らぬ顔で尋ねる俺に、彼女は自らの体に俺の手を這わせた。
姉を。どうやって?許されぬものだと諦めていた心に、小さく火がついたのを感じた。
方法なんて、わからなかった。ただ、ただ貪るように彼女を抱いた。
姉は、最後に、ありがとうと言って気を失った。
翌日の晩のことである。姉さんは例の男に会いに村のはずれに向かった。俺は、未練たらしく後をつけた。
俺が見たもの。それは、売春婦として攫われる少女たちの姿だった。
面倒臭い、の意味がわかった。それは姉に向けてのことではなく、ただ商品に向けての感想だと。
俺はもしもの時のために日頃から持ち歩いているナイフで男の腹を刺した。
赤い手で彼女の白い手を引っ張り連れ出した。村で評判の男が刺されたと聞けば、村には居られない。家にも戻らず無我夢中で走れるだけ走った。
気づいたら繋いだ手は黒ずんでいた。
これが、俺たち二人の新しい色。ずっと消えない、秘密。