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憧れの悪役令嬢は男キャラだったようです  作者: 椋星そら
第1章 どこかおかしなこの世界
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03 魔法騎士団

さあ憧れのキャラ達を拝もうと決意した後、まず何をするかを考えたが、考えるまでもなかった。クロディーヌ様の取り巻きを目指すためにすることというのは単純明快で、ルクシェラ軍に入隊することである。


ルクシェラ軍は魔法騎士団とも称され、軍とは言っても日本でいう警察のような役割を担っている。基本的には国の秩序を守るために働く存在だ。戦争に駆り出されるとか、そういうわけではない。ただ、この世界には魔法があるだけあって、魔物という人間に害をなす生き物も存在している。魔物は強力なので、対するには魔法が必要不可欠である。ということで、一番の目的は魔物から民衆を守ることである、と私は推察している。


そんな目的もあることから、軍に入隊するには魔法が使えることが必要不可欠となる。魔法というのは全員が使えるわけではなく、使うには素質や訓練が必要となる。そうして才能を開花させて、はじめて魔術師となれるのだ。そんな要素もあり、また、学力も一定程度必要とされることから、隊員は貴族出身が殆どである。貴族ばかりといっても、軍では軍での上下関係が優先されるので、貴族の身分は関係ない。とはいっても、貴族とはプライドが高い生き物だ。さすがに平民となると嫌に思う人が多い。そういった風潮から平民からは敬遠されているが、そんな平民は、ただ武力だけがあれば良い通常の軍や、騎士団に所属することが殆どだ。


軍人――日本的表現をするなら警官――は、戦いに駆り出されるわけではないが、魔物という危険があるとはいえ、軍で手柄を上げれば特別な褒美もあり、なかなかに人気の職といえる。部隊の副隊長、隊長クラスになれば生活には困らない。特に、家を継がない者にとっては、良い職だろうと思う。だからこそ、毎年入団試験はそこそこの倍率となる。



そして、ルクシェラ軍は女性も普通に採用している。というのも、軍内で二つの職に分かれるからだ。まず、一つは魔法職。こちらは魔法メインで後衛を務めたり、治癒などの補助に回ったりなどする。もう一つは、騎士職。こちらは武術メインで魔法は攻撃の補助として使い、前衛を務める。騎士職に関しては、さすがに女性は少ないが、魔法職は女性でもできるとのことで、特に性別で差別されたりすることはない。ひかこいでいうと、ニコル、フランシス、ナタン、クロディーヌが魔法職。シルヴァン、カミーユが騎士職だ。全体でいうと、魔法職の方が振り分けられる仕事が多いので、騎士職の方が数は少ない。


そんな騎士職と魔法職の数がバランス良くなるように部隊に振り分けられて、日頃は小集団で任務をこなす。例えば犯罪者を捕まえにいったり、街や市外地の巡回をしたり。魔物が出た時は、勿論駆り出される。事務作業もしなければいけない。そんな部隊は、第一部隊から順に、第二部隊、第三部隊と、第四部隊――……と、数字で振り分けられている。数字が若い方が花形の部隊だ。例えば第一部隊は軍で一番のエリート、実力者が集う部隊。そして、第二部隊と第三部隊は、若手エリートや、彼らが見込んだ若い者が配属される部隊となり、この二つの部隊は一緒に仕事をしたり、何かと絡みも多い。ゲームでメインとなるのは、第二部隊と第三部隊だ。第二部隊にフランシス、ナタン、シルヴァン、ニコルと主人公サイド、第三部隊にクロディーヌ、カミーユ、シャルルと悪役令嬢サイドが揃っている。


カミーユが悪役令嬢サイドなのは隠しキャラであることと、あと彼はクロディーヌの友人であることが関係しているだろう。幼い頃からの仲らしい。カミーユの登場条件が、クロディーヌから出される試練という名のミニゲームで好成績を出すことからもお分かりいただけるだろう。クロディーヌを負かす面白い子がいる、とカミーユにちょっかいかけられるのが始まりとなる。シャルルはよく分からないけど、クロディーヌの側近的ポジションから察するに、同じ部隊のはずだ。


……そういえば、主人公サイドだけど第三舞台のキャラがいた。わ、忘れていたわけじゃない。乙女ゲームにお約束の、お助け友人キャラ、『エリーズ・ヴィトリー』。彼女は主人公の友人でありながらも、第三部隊に所属している。情報通で、プライドが高いというよりはただ気が強いだけの子。私のゲームをしていた頃は、彼女になにかとお世話になった。



ちなみに、第二部隊の隊長は『隊長』と呼ばれたり存在をにおわせることはあれど、立ち絵や名前は出ていないモブ的存在である。そして、副隊長はフランシス。第三部隊の隊長はクロディーヌで、副隊長はカミーユだ。平均しても20代半ばになる、とても若い部隊になる。



さて、私が最終的に目指すのは、クロディーヌ様と同じ第三部隊だろう。さすがにいきなりは難しいかもしれないけど、軍に入ってから成り上がるしかない。ただの取り巻きだと媚を売っていると捉えかねられない。だから、きちんと私は相応の実力も持ち合わせたい。


私は、運動は人並みなので、無難に魔法職で入隊するのが良いだろう。魔法の才が無ければ考え直さないといけないけど、まずは試してみないと分からない。




まずは親を納得させることからだと意気込んだが、私が次女であること、手柄を上げれば家の益にもなることから、あっさりと承諾――むしろ、応援される形となったので拍子抜けした。危険だしと反対されるという心配は杞憂だったようだ。……そんなところに、日本人的感性が出ているのかもしれないと少しだけ思った。


軍の入隊試験には、筆記試験と実技試験がある。実技とは魔法のことで、これは親が雇ってくれるといった家庭教師さんとの練習や、私の才能に左右される。ただ、筆記試験はいける。今までの記憶を辿るに、この国の学力は日本よりも低い。つまり、前世の知識をフル活用すれば、そこそこ好成績を残せるだろう。無論、魔法に関することやこの国の地理歴史は頑張らないといけないけど。乙女ゲームの世界に転生といっても私はモブだし、これぐらい転生特権でうまみがあっても罰は当たらないと思う。


使える魔法には属性があり、珍しい属性持ち―――光と闇は、軍の方から直々にスカウトが来ることもある。が、そんな事例は極めて稀なので、私のようなモブはせっせと勉強に励むしかないのだ。光と闇まではいかずとも、氷や雷など珍しい属性持ちだと入隊に有利になる節はある。ただ、試験免除まではいかないけど。



軍の入隊は15歳から、いつでもできることになっている。勿論、試験に合格できれば、だけど。平均は18歳ぐらいからなので、私はそのあたりを目指し、勉強を開始することにした。



家庭教師は10日後に来てくれるそうなので、一旦実技のことは置いておいて、さっそく今日から筆記試験の対策を始めた。

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