偽物との戦いで手に入れた本物の僕が見上げる空だけはきっと偽物じゃなかった。

　十六歳の主人公、籠中（カゴナカ）は、高校にもロクに通わず、日々悪友と連む日々を過ごしていた。窃盗、押し込み、輪姦、強盗、楽しそうなことは全部やってみたし、そんな最高な仲間と一緒にいることは最高に楽しかった。
　でもそれは、ある日、突然失われた。
　突如として現れた、中川に、佐々木に、他の仲間たちに、そして自分と全く同じ顔の「奴ら」によって。
　次々と「自分自身」に食われる仲間たち。ただ一人、命からがら「自分」の魔の手から抜け出した籠中は、仲間たちの復讐を誓う。すなわち、偽物の「自分」と、「仲間たち」を殺すことを。

　しかし、事態は少年の思いつくようなものではなかった。
　「自分」の偽物が、一夜にして、世界中のあらゆる人間の元へと現れていたのだ。

　「偽物の自分」と一人戦う籠中は、その戦いの先に、何を見るのか。籠中を、何が待っているのか。
　それはこの世界ではただ、「もう一人の奴ら」だけが、知っていた。