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九天の高みへ -世界を殺す毒- (旧)異世界で堕ちた英雄  作者: トリ丸
一章 異世界で堕ちた英雄編
5/39

―5

「アイツらって誰のことだ ティナ?」


「詳しいことは存じ上げていませんが『 紅い鱗 』と呼ばれる。 世界を竜によって統治すべきと考える反国家主義者の集団だと聞いています」


 そんな奴らがいるのか、魔族と戦っているのにこの国は一枚岩じゃないって不安すぎるんだけど……


「早く参りましょう国王様がお待ちしていますので」



 ・・・・・



  昨日の玉座に来るまでの経緯は割愛しておくが、少し遅れたせいで黒崎の付きメイドである眼鏡を着けた委員長キャラのにお小言を受けた。


  玉座に入った時、俺たちは昨日まではなかった5つの(ひつぎ)に目が釘付けになった。


「よくきたな英雄たちよ、昨日はよく眠れたか?」


 下卑た物言いに加え家畜同然の肥太った体、近寄りたくもない匂いがしそうなこの国王の話に俺はうんざりしながらも目を合わせることなく話は進んでいった。

 どうやったらこの王からあの普通に綺麗なお姫様が出来るのか不思議で仕方がないな。


「まぁよい、目の前の棺に入っているのは貴様らの武器だ…………もう喋るのしんどいから後、話しておいてグリゾネ」


「かしこまりました、国王様」


  豚王は後ろに控えていたローブ姿の男に命令すると、その体型からは想像も出来ない軽やかな動きで執事とメイドたちと一緒に玉座から出ていき部屋には護衛の騎士数名とメイドたちとグリゾネという魔法使いっぽい奴と俺たちが部屋に残っていた。


 グリゾネは豚王が出ていった後、ローブを脱ぎそれを腰の辺りに括りりつけた。


「今の季節にローブは暑いですね」


 ローブを脱いだグリゾネは先ほどの声とは違ってとてもフレンドリーな優しい声をしていて、外見は眼鏡をかけた気弱で真面目そうな特に目立つ所のない長身の男性だった。


「さて、はじめまして英雄くんたち私の名前はグリゾネ。グリゾネ・ヴァンフォーレンチです。よろしくお願いします」


「はじめまして、私は宮本だ」


「私は秋月 禊といいます」


「ん、早川 鈴」


「僕は黒崎です。 よろしくグリゾネさん」


 ひとつひとつ真面目に対応する所や言動は根は優しそうだ、豚王よりはいいかと思いとりあえず当たり障りのないような挨拶をする。


「俺は中村 悠祐」


「よろしく ユースケくん」


 俺たちはグリゾネから自慢とも言える冒険者時代の話や王宮魔法使いの話を聞いた。

 和んだ所で外の修練場に移動し即席でグリゾネが作った椅子に座りグリゾネからこの世界のことを色々教わることになった。


 ・・・・・


 グリゾネは自前の教卓や机を作り青空教室的な感じでグリゾネの授業が始まった。


「では、今から授業を始めます 私のことはグリゾネ先生か、気軽にゾネ先生と呼ぶように」


「はい先生質問でーす」


「何かなクロサキくん」


「なんで先生って言わないといけんないんですかー?」


「それはですね……私のテンションが上がるからですかね」


 そんな話で盛り上がっている間に俺はグリゾネと同期で騎士になったルールフという男を見ていた。

 この国の騎士のなかで一番強いらしい、性格は猪突猛進。所謂筋肉ダルマというやつで頭にすぐ血がのぼるタイプ、グリゾネとの仲は気持ちが悪いくらい息の合ったコンビで信頼出来る相棒だと紹介された。


「あんまり話していたら日が暮れちゃうので、ちゃちゃと説明します。 いや~、国王様の気まぐれのお陰で無駄にならずに済みました、まずはこれを見てください」


 ――――――――――――――――――――


[1]武器を確認しよう ~相棒との対面~


[2]自分の魔法の属性を確認しよう ~自分の中に眠る力~


[3]この国の歴史 ~何故魔族と戦うのか~


[4]スキルカードの存在 ~神の気まぐれ~


[5]戦技(クラフト)の使い方 ~自分だけの必殺技を作ろう~


[6]初めてのモンスター討伐 ~自分の実力を知ろう~


[7]自分の方向性を決めよう ~自分がどうなりたいのか~


[8]現在の実情 ~魔族意外の敵~


 ――――――――――――――――――――


 指を空中に滑らせると虹色の文字が浮かび上がってくる。

 これも魔法の一種だろうがいかんせん副題が痛い、痛すぎる。この世界にもちゃんと真面目そうな痛メンは存在していた……腹痛てぇ。

 黒崎は笑うのを堪えるのに必死なのがここからでも伝わってくる位に体が震えていた。


「授業はこの順番で進めます、皆さんの師については[7]の方向性が決まった時点で私が連れてきますが皆さんが見つけてきた方でも全然大丈夫なので……」


 やっと笑いが治まってきた頃ようやく前置きが終わった。


「さっそく授業の[1]を始めます。今さっき見てもらった棺の中には武器が入っているのですが、どれが君たちの武器かはこちらでは全く分かりません。君たちなら多分こうピピピっと直感的に分かるはずなので、さっさと開けて来てください」


 ピピピ? といわれましてもというツッコミは心の中に留めておくとして、俺はさっきの棺の所へとさっさと向かった。


 他の奴らは最初はピピピが分からず思案顔で棺の周りを回っていたが3週目あたりから犯人を暴いた探偵のような晴れ晴れとした顔になり、それぞれの違う棺の所に立った。


 俺が着いた時には棺は余りものしかなく、近づくと感覚が鋭くなり心臓が今まで経験したことのない位に跳ねた。 確かに言われてみれば他の棺じゃないことは、はっきりと分かるこの棺の中のもんが俺を求めているのが感覚で分かる。 俺は棺を愛でるように優しく撫でた。


 待ちわびたのか痺れを切らしたのかルールフ怒声が響いた。


「何をしているお前ら、早く開けろ」


「あ、僕の言葉取らないでくださいよルールフさん」


 その興ざめ言葉を期に俺たちは先生が言う相棒とやらの顔を拝むため一斉に棺を開けた。

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