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第8話 強くて賢い美仁香ちゃん

「おらおら、文句あんだろ?コラ」

「はっきり言わないと、俺ら分かんねぇよ?」

「・・・今日の晩ご飯は・・・カレーにしよう・・・あ、それから赤い福神漬けも添えて・・・」

俺達は窮地に立たされた。小学生相手でも手加減しない不良三人組。つーか三人目よ、さっきから何を言っている?お前不良じゃないだろ。


「ひ、ひっく、ぅっ。うぇぇぇっ。お母さ~ん!」

「びぇぇーっ!た、助けて~っ!」

不良の威嚇にビビる二人。他の通行人はそれを見てオロオロするばかりで一向に助けたり、助けを求めたりもしない。

「泣いてるばかりじゃ分かんねえよ!」

「言いたい事ははっきり言いなさいってママから言われなかったのか?ガキ」

「・・・あぁ、ごめん。今、アメ持って無かった・・・あ。キャラメルがちょうど三つあるよ・・・食べる?あ、そうか・・・知らない人から何かを貰ったらいけないって習ったか・・・」


三人は眉間にしわをよせ更に威嚇し、それによってまた大きな声で無く二人。そして、不良の三人目よ。どうしてお前は優しいんだ?意味が分からん。

「ん?お前だけは泣いてないな?むかつくな」

「ははっ。お前の顔が怖くないからじゃね?」

「・・・いないいない・・・ばぁっ。・・・ほら、笑った。クスクス・・・」

二人は泣いてない俺を見て更に眉間にしわをよせ威嚇。それから度々すまんが三人目よ、お前のキャラが濃いからどう反応したらいいか分からん。


ふ、と不良である二人のポケットを見るとタバコが入った箱らしき物を発見。キャラが濃い不良三人目のポケットを見ると・・・何故か大きく膨らんでいる事は分かるが、全体像がポケットに隠れていて何が入っているか分からない。が、きっと想像も出来ないモノでも入っているだろう。うーむ、何故か気になる。


「泣かすぞ!コラぁ!」

不良が突然俺に殴りに来た。こいつ、殴りにきたぞ?ならばっ!

てん!」

てん

腕を使った防御特技でヒジや肩で小さな円を描くように腕を回し敵の格闘攻撃を弾きそらす技である!

「うわっ!?」

不良の攻撃を無効化し、更に追い討ちをかける。

冲捶ちゅうすい!」

冲捶ちゅうすい。腰に構え、身体を横に向けながら放つ威力重視の突きである!

その突きを鳩尾みぞおちにクリーンヒット。パワーやスピードはやはり落ちたままだったが、持ち前の柔軟性を活かしパワーもスピードもそれなりに上がったので威力は十分にあった。

不良はその場に倒れ込む。それを見た残った不良二人は

「く、くっそ~っ!うらぁっ!」

「・・・わぁ、強っ。勝てないねコレ」

拳を高らかに伸ばし、俺にパンチをするぞと言いたげな隙があるので、俺は全ての攻撃を震脚しんきゃくで避け、不良のポケットの中に入っていたタバコをスった。

「ダメだよ。タバコは」

「!!?いつの間に!?」

「・・・今度は俺のターンだよ?」

タバコをスられた事に気づいていなかった不良。そして、次はキャラが濃い不良の真骨頂が見れる時が来たようだ。それからまたまた申し訳無いが、これはカードゲームじゃないんだからターンとか無いぞ?

「・・・ふんっ」

俺に向かって真っ正面ならパンチを繰り出すキャラが濃い不良。この攻撃も震脚で避け、不良の何かが入っているであろうポケットに手を突っ込んで何かを手に握った瞬間。

『へぇ~』

「!!?」

合成音声が聞こえた。何で!?何でなんだ?!

俺はキャラが濃い不良からスったモノを見ると、ボタンを押すと『へぇ~』という言葉しか出てこないキーホルダーらしき物が俺の手にあったが・・・なんだコレ?

「・・・それ、あげるから見逃して・・・ほら、皆行くよ・・・」

「あ、ああ」

「くっ、覚えてろよっ。くっ」

不良三人組は捨て台詞を言いその場を退散。


俺の手にはタバコが入っているだろう箱と『へぇ~』と鳴るキーホルダーを持っていたが、他の歩行者が見たら誤解してしまうかもしれないからコンビニのゴミ箱に両方とも捨ててやった。

「「・・・」」

二人はいつの間にか泣き止み、キョトンとしていて俺をただただ見つめていた。し、しまった!俺の八極拳で暴力をする事を覚えてしまったか!?まだ幼い子だし、変な風に八極拳を誤解しないで欲しい。

すると二人は

「か、カッコいい~っ!ね、有君」

「う、うんっ!ボクもカッコいいと思った!スゴい!」

憧れの眼差しで俺を見つめ、その二人の笑顔から八極拳を悪い方向に受け取っていない事が分かり、俺は心の底から安心した。


すると、他の歩行者が警官を呼んだのか警官が俺達のもとへ駆け寄り、警官は焦った表情で周りに不良がいるのかを見渡し、その存在が見当たらないのか首を傾げた。

「あ、あれ?え、えーと、君達、悪い人達に会わなかったかな?」

警官は俺達の目線に合わせるように腰を落とし、笑顔で俺達に尋ねる。二人はさっきの八極拳を見たせいなのか興奮しすぎて

「あ、あのねっ!こう、ばーんっ!て!ね!ばーんって!」

「そ、そうっ!で、悪い人がこう、ねっ?」

何かを伝えたかったが、小学生レベルのトークスキルでは警官も二人の言いたい事が全然分からず警官は途方にくれていた。それを見かねた俺は警官の目の前に立ち、俺が説明してやる事にしてやったのだ。


「すみません。僕が不良達を追い出したので、不良達は今はどっかに逃げてますから」

「へ?!!」

警官は目を丸くして驚きの声を出し、さっきの会話が目の前にいる小学生とは思えないのか辺りをキョロキョロと見渡し、額に冷や汗をたらりと流す。

「僕ですよ、お巡りさん。こっちこっち」

「へぁ?!あっ、ああ。ごめんね?あ、そうか。君が追っ払ったの?すごいね~って、ええ?!それは本当なのかい?」


警官は俺の言葉をまるで信じていない。俺だって信じたくは無いさ、だって女の子でしかも小学生なのだから誰かの活躍をまるで自分の活躍かのようにしてしまっているという事に思いたくもなる。

警官は、俺の言葉を信じずに『また何かあったら僕が助けてあげるよ』と俺達に伝え、自分の持ち場へと姿を消した。

はぁ・・・まぁこれはこれでいいだろう。後々、校長とかにバレたら困るからな。


「ほら二人共、帰ろうか」

「「うん!」」

俺は最後まで九重有と一文字ことみを守りながらも我が家へと歩き続けたのであったーー。

ーーーーーー

帰宅。


俺は赤いランドセルをリビングに置き、ソファーに座りぼけっとしていると。

「うっ?!」

尿意が現れたので、トイレに向かい便座の前に立ちズボンとパンツをある程度下げたら・・・

俺の長年付き合っていた相棒がそこには居なかった。あ、あいぼーーーーう!

とりあえず便座に座り、尿を放出。

尿を放出しつつ、ふとある事を思い出していた。それは自分が女である事を。

だってさ、小学生からやり直しで混乱してるんだよ?それで頭がいっぱいいっぱいで他の事なんて考えていなかった。強いて言うなら八極拳の事しか考えていない。ただの格闘技バカだ。

「ふぅっ・・・」

溜まっていた尿を全て放出し、女としてやってはいけない行動を俺は知らずにやってしまったのだ。それは・・・

「うわっ?!な、何で?!」

ティッシュで女の大事な所を拭かなかったせいで、ショーツが濡れたのだ。

俺はよく分からず、アタフタするしかなかった。

とりあえず、母親にショーツが濡れた事を報告し、母親はサド気味な笑顔を浮かべ俺にこう言い放った。

「あれれ~?お漏らししちゃったのかな?いい子だから泣かないでねぇ~」

くそっ!くそ腹立つー!


ーーーーーーーーーーー

ショーツを替え、濡れていた大事な所も乾いたのでもう気持ち悪い感触は消え去ったのだ。

そのおかげか、終わった後はティッシュで拭かないとまた大変な事になりかねないので、終わったらティッシュで拭くと脳にインプットさせ今後は以後気をつけるように心掛ける事にしたのであったーー。


「ただいまー」「わっ、大きい家だ」「すごっ」

長女である麗香が帰宅したらしい。が、やけに玄関先が騒がしいのだが、何なんだ?

「「お邪魔しまーす!」」

客人だ。母親は家事とかで色々忙しそうなので俺が出迎えをしてやる事を決心し、俺はパタパタと走り玄関先へと向かい客人の目の前に立ち

「こんにちわ」

頭を深く下げ、笑顔を浮かべ玄関の近くにあった客専用のスリッパを腰を下ろして人数分出し、立ち上がってからまた笑顔を浮かべた。俺のこの行動に気付くやつは気付くのだが、俺は人と交わる事が好きだ。

だからこの行動がスムーズに出来るのだ。

そんな俺を見ている麗香の隣にいる二人の女の子はというと・・・

「キャーっ!すごーい!よく出来る子!すごっ」

「そ、それに・・・かわいい・・・」

頬に朱を浮かばせ自分の世界へトリップ。

俺の出番はもう無いのでリビングへと向かうが、一人の女子に腕を掴まれ俺の行く手を阻む。何だ?俺の持て成しが不服というのか?


「ちょ、ちょっと、一緒に遊ぼう?ね?」

「わ、私もっ。いいよね?麗香ちゃん」

「う、うん。私はいいけど・・・」

麗香はチラチラと俺に目線を配るのだが、いかんせん何を伝えたいのかは分からん。あ、多分ちゃんと小学生らしくしてろという意味か?しかし、小学生のフリをするにはかなりの演技力がいるしそんな演技力は俺は持ち合わせていないので素の俺のままで対応していく事にしたのだ。


「え?皆さんは麗香に誘われてこの家に遊びに来たんでしょ?だったら・・・」

「!!?すごいっ!すごくハキハキしてて賢い!何で?!どうして?!」

「わ、私よりもちゃんとしてるかも・・・けど、そこがまたかわいいっ」

二人はかなり俺に興味を持ったようだ。そんな二人を麗香は落ち着かせ俺の耳元に顔を近づかせそっと耳打ちするようだ。

「(ち、ちょっとっ、小学生らしくしてよ。友達が面白がって学校に言いふらすかも知れないからっ)」

「(ご、ごめんなさいっ。じゃ、今からでもするからっ)」

麗香の脅迫は俺の心にグサっときた。それはそうだろう、麗香の言う通り俺を見たいが為に複数の人間がこの家に押し寄ってくるかもしれない。よし、今からやろう。


「わっ、わあいっ。お、おままごとっ。し、しよう?」

「へ?」「は?」

急に子供らしくなった俺を見てキョトンとする麗香の二人組の女友達。これを待っていたのか麗香は友達の腕を引っ張り自分の部屋へと無理やり引っ張り、三人は麗香の部屋へと消えていった。

はぁ~・・・助かった~・・・


ゾクッ!


後ろから邪を感じさせる視線を感じたので、上半身と下半身を捻り腰を落として順手を腰に、逆手を肩の前に構えて振り返り、その視線の主は・・・母親だ。

「うふふふっ♪そっか~、おままごとしたいんだ~。ほらっ、やりましょ~?」

「・・・急にやる気を失ったので遠慮しておきます・・・ホントに・・・」

「そぉ~?うふふっ、うふふふっ」

まだまだ邪のオーラを出しつつキッチンへと姿を消す母親をまだ箭疾歩せんしっぽの構えを解けない俺はただただ動けなかったのだーーーー。

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