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第6話 これからどうするよ?

早朝。

目が覚めると隣に父親と母親がすやすやと寝ていた。いつの間にか父親が帰ってきたので、若干ビビった。今は五時で多分兄妹も寝ている事だろう。

俺は二人を起こさないように部屋を出てリビングへと向かう。

そうそう、言い忘れたがこの家の間取りは三階建てで一階のフロアは父親の書籍や車が入るガレージがある。

そして二階のフロアはリビングやキッチン等の普段の生活をする十分なスペースを持ち、広々としたスペースがあり窮屈な気持には一切無いだろう。それに和室も備わっていた為、俺と両親はそこで布団を敷いて寝ている訳だ。

三階のフロアには兄妹達が寝る為や勉強する為の部屋がいくつかある。まだ二~三室空きがあるようで、多分そのどれかが俺の部屋になるであろうと思わせるが・・・それがいつになるか知らん。


とにかくすごい家なのだ。広すぎる・・・この事でいじめにあわなければいいのだが・・・まぁ、なんとかなるだろうな。

そんなこんなで広いスペースを見つけ日々やっている八極拳の練習をやる事にした。


「すぅ・・・はぁ・・・」

傍から見たらとんでもない光景だろう。妙な体操を朝っぱらからやる少女がいて、その体操の内容は八極拳なのだから。

「ふんっ!」

とりあえずただの突きをやったのだが、いかんせんスピードもパワーの格段に下がっていた。これはまずいな・・・絶対にこの練習を欠かさないとマジでいざという時に役に立たない。

「せいっ!」

蹴りをして柔軟性を確かめる。これは女の子だからなのか男だった時よりも身体が柔らかいような感覚を覚えた。これが嬉しくて少し技を試してみたくなったのでいったん深呼吸して構える。

今回は大声を出さないように心を落ち着かせ・・・


震脚しんきゃく」 

震脚しんきゃく。八極拳独特の攻撃の命中する瞬間に、地面を強く踏みつける発勁はっけいの用法。威力分だけ攻撃の威力を増すが、高い蹴りや跳躍技、投げ技には用いられない技である!


活歩かつほ

活歩かつほ。「震脚」を踏んだ後、地面を氷の上を滑走するように滑りながら移動、一瞬で間合いを詰めてしまう特殊な歩法である!


ただの歩法だったが・・・めっちゃ嬉しい!すげぇ!身体が軽い!ひゃっほー!

「何をドタバタしてるの?美仁香ちゃん・・・」

今の技を見ていたのか母親は眠り眼を擦りながら俺がやった修行に文句を言ってくる。確かに、朝からドタドタうるさかったかも・・・

「ご、ごめんなさい。コレ毎日やってたので、つい・・・すみません」

「そうなの。次からは静かに準備体操でも何でもしてなさい」

母親はそれだけを伝え朝食の準備へととりかかる為、キッチンへと姿を消す。はぁ、次からは地面を叩いたりしないで突きとかでもしておこうか・・・


「ふあぁぁっ。おはよ、美仁香。さっきさ、ドタバタって音してたけど、お前か?」

父親が目を覚まし、その頭には寝癖がハネ飛んでいた。うーむ、やはり基礎練習と突きのみだな今後の練習方法。

「は、はい・・・」

「昨日は忙しくて聞かなかった事があったけどさ・・・聞いていいか?」

「い、いいですけど何か?」

父親はリビングへと移動し、俺を手招きしてソファーに座らせ重大な話をすると顔をシリアス風にキリッとさせ俺に質問を浴びせていく。

「美仁香さ・・・武術やってる?ほら、昨日俺をぶっ飛ばしたじゃん」

「うっ!す、すみません」


昨日、頭を混乱させ誤解が誤解を生み出し、これからお世話になるだろう人をぶっ飛ばしたのだ。これはちゃんと謝らないと・・・もう一度反省の言葉を伝え、父親の質問に答える事にした。

「一応、八極拳を少々・・・」

「八極拳?あの中国拳法の?」

「は、はい・・・」

「・・・どうやって習った?」

「近所に八極拳を教えている道場が無くて・・・独学で学びました」

「近所?って事は、お前はどこかに住んでいたのか?ここじゃなく・・・どこかに」

「え、えと・・・XX県のXX市です。あ、ここはXXX県でしたっけ?」

「・・・そうだ。そっか、なるほどな・・・」


父親は俺の何かを分かっているのか顎に手を添え、ふむふむと自分が得た情報を頭に叩き込んでいるようだ。でも、正直に答えすぎたかな?はぁ、少しうそを交えたほうが良かったのかな?でも答えてしまったので後戻りはできない。


「あ、あの・・・か、母さんから聞きましたが、あ、あの・・・父さんは医者でしたよね?何か分かりました?」

「確かに医者だ。が、精神関係は専門外なものでこればかりは・・・ただ病名とかその対応とかはある程度知ってるだけで、治すってのは無理だな」

「や、やっぱり、僕って精神関係の病気なんですか?」

「それは・・・ちゃんと調べないと分からないな。ただ脳とか調べても何の異常も見当たらなかったら・・・手も足も出せん。ずっとそのままかもしれないし、自然に治るかもしれない。医学ってものは奇跡と偶然の紙一重だからな。何が起きたっておかしくは無いだろうな」


医者の言葉はずんと心に響く。さりげに怖い事もさらっと言われたが、本当に何が起きても不思議ではない医学。うーむ、奥が深いなぁ。


「おはよ~」「おはよ」

寝ぼけた兄妹も登場し各自顔を洗ったり学校に行く準備をしていて、母親が用意した朝食を時間をかけてゆっくりと口に運び、登校時間になってどたどたと兄妹は我が家を出ていき、残った俺達はそれを見送り、今度は俺が準備する番だ。


「あなた。仕事の方にはちゃんと休むって言ったの?」

「ああ。後の仕事は部下に任せておいた」

「あ、そうか。小学校に行くんだった」

俺は忘れていた。今日から小学生という事を。はぁ、何故こんな目に遭うんだ・・・幼馴染と一緒に遊園地行って変な黒ずくめの二人組を見つけ尾行したら、もう一人の黒ずくめのやつに気づかなく、後ろからバットで殴られて気絶させられ、その黒ずくめに変な毒薬を飲まされた訳でも無いのに・・・そんな事するやつ全身真っ黒だもの~、腹の中まで黒ずくめだもの~。


閑話休題。

両親とまだ小学生である麗香と小学校へと向かい、近所の保護者やこれから通う小学生もちらほらと見受けられ、また一からやり直しかと思うと・・・絶望。この一言しか思いつかない。

「ほら、着いたわよ。えっと、会場は体育館だっけ?あっ、アレじゃない?」

母親はある場所を指し、その目線を辿ると大きな体育館。どこにでもある普通の体育館。普通としか表現できん。

「頑張れよ、美仁香」

「私もいるから安心してねっ」

「・・・善処します・・・」

父親と麗香からのエールもいただき、受付とかも済ませ入学式が始まり校長の話とかその他諸々の話を適当に流し、時は過ぎたーーー。


ーーーーーーーーーー

入学式は終了。保護者やその子供達は各自我が家の方へと向かっている最中、俺達西園寺家は校長室へと足を運び、まずは校長がいるのかを校長室のドアに向かってコンコンと扉を叩く母親。


『どうぞ』

部屋の中から優しそうな男性の声が聞こえた。声は低くも高くもない。何故か安心感が伝わるようで、心に少し余裕ができた俺。それと両親一向。

「失礼します」

扉を開け、俺達は校長室へと入り校長に席の案内をしてもらい、両親は静かに座っていたが俺はというと・・

「失礼します」

一言校長に言ってしまった。面接試験ではこういう風にしないといけないと散々耳にしてしまったので無意識に言葉が出てしまった。くそ、これは面接試験じゃないのに!


「!!?あ、ああ。は、はい、かけてもいいですよ」

校長はかなり焦っていた。両親は何事もなかったようにただただ校長を見つめるだけであった。

ようやく話を進める展開なので父親から話を切り出した。

「・・・昨日からこの調子なんです。とても小学生とは思えない立ち振る舞い。まだ脳を調べていませんが、凶暴な性格じゃない事は確かです」

「そ、そうですか。確かに先日奥さんから電話の方で大体の話をお聞きしました。申し訳ありませんが、正直信じていませんでしたが・・・今、はっきりと確信しました」

「あ、あの・・・私達の子供を・・・美仁香を・・・どうか正式にこの学校に入学していただきませんか?今、入学式を終えたばかりで今更遅いとは思いますが・・・お願いします!」

母親は頭を深く下げ、それと同時に父親も下げてくる。それに驚き身体の反応が遅れ俺も深々と一礼。


「分かりました。西園寺美仁香ちゃんを我が校の生徒として認めますので頭を上げてください。」

「「「あ、ありがとうございます!」」」

校長先生からお許しが出たことで盛大に喜ぶ俺達。だが・・・校長はとんでも無い事を俺達に言いやがった・・・

「ただ、いくら頭が良くても飛び級はできませんから」

校長が言うには、高等学校以下の学校では(小学校・中学校の義務教育)生徒は平等に扱わなければならないという観点から、いかに優秀であろうと年齢による標準的な学年上限を飛び超える飛び級は絶対に認められないという社会的ルールが規定されているので飛び級は不可能だという。


「わ、分かりました。いいよね?美仁香ちゃん」

「は、はい。あ、その・・・ちょっと質問いいですか?校長先生」

「ん?何ですか?」

俺がこの小学校で正式な生徒として受け入れてくれるそうなのだが・・・少し確かめたい事がある。それは・・・

「他の教員達にもこの事を話すんですか?後、できれば全生徒には話さないで欲しいです」

この事は校長と俺達家族のみしか知らないで、こんな風に教師達と接していたら教師達は驚くだろう。

すごい賢い子供だということを。

後、他の生徒がこの事を知ったらやたらと俺をいじめてくるかもしれない。八極拳を使えるとはいえ、いじめに暴力で対抗するのはダメだろう。いじめがいじめを呼んでしまい、いじめの連鎖が止まらないからだ。


「そうですね。私の方から全教員に話しますから安心してください。それからこの事が生徒達の耳に入らないように注意しておきます」

「どうもありがとうございます!」

俺は社会に認められた。俺は居ていい存在だという事を。認められた場所で俺は学生として勉強していく事を心から決意したのであったーー。











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