第4話 西園寺家の母親
買い物を済ませ、母親は早速夕食作りに励んでいる中、俺はというと・・・
「よし、これでいいな」
風呂掃除とかリビングやら部屋の掃除を行っていたのだ。一宿一飯の恩義を何かで返したいという俺の気持ちを母親にぶつけたら母親は
「ううっ・・・あなた、美仁香ちゃんはいい子に育っているわよっ!」
電話で父親に感動した表情で今回の報告を行っていた。はぁ、良かったな出来のいい子でさ。
「疲れたー」
掃除を済ませたがやたらと疲れた。スタミナが無くなっていたのだ。はぁ、少し鍛えないとなぁ・・・まだ疲れているけど八極拳の練習でもするかな?毎日やればおのずとスタミナは付く筈だし。
「すぅはぁ・・・」
とりあえず深呼吸。あ、忘れてた!顔の確認を・・・まぁ、いいや小学生の顔なんて興味無いしロリコンじゃないしな。
まずはヒンズースクワットみたいなもの。
足を肩幅ぐらいに開いて、背筋を伸ばしてまっすぐ立ち、アゴを引いて背筋は上に伸ばしあまりそらないように・・・まず息を吐きながら腰と膝を曲げながらヒンズースクワットの下がる方をして、その時にヒンズースクワットのように最後まで腰を落とさない。膝が90度程度で背筋のばして何秒か停止。下がる時、停止している時に息を吐き続ける。
そして息を全部はいたら今度は停止状態のままで息を吸い始め。息を吸い始めてからしばらくして立ち始める。そして立ちきった時に息を全部吸い込むのではなくて立ちきってしばらくして息を全開まで吸い込むようなタイミングに調整。
自分のリズムで、徐々に動きや停止時間をゆっくりして心が落ち着くように。そして息の吸いと吐きを逆にして、下がる時に吸い、上がる時に吸うほうも同じ程度だな。
手は基本的に自由。頭上に伸ばしたり、横に広げたりして停止させておくか、上下の動きに合わせて動かす。
息と体の連動を感じたら、足を肩幅ぐらいに開いて、腰をちょっと落とし、腰の落とし具合は自分で調整。背筋を伸ばしてアゴを引いて顔を右に向けて、つま先は前方に向ける。
ゆっくり体を少し左に傾けながら、右ひざを30度ぐらいまで曲げて右足をゆっくりあげ、左に傾けるのは左足に体重を移し左側に力を貯めるといった感覚。このときに腰を落としていたら難しいので腰はちょっと落とす程度で。なれても10cmぐらい腰を落とす。
体重が移行したら、今度はすばやく右側に体重移行しながら、右足をさっきあった場所から半歩ぐらいの真右の位置で(片足だけカニ歩き)の地面につけ、足を地面につけるときに地面にたたきつけるようにする必要は無し。まだその段階では無いからだ。
このときの呼吸は、息を吐きながらすばやく右へ体重を移動し(声をだしてもいい)、地面につく瞬間に息をとめる、または地面をけった後も全開まで一気に吐きつづける。
吸いながら片方に『力を貯めて』、地面をけりながら息を吐き『力を一方にむけて開放する』と言った感覚を身に着けるのが目的。
息を止めるのと吐きつづけるのは、力の使い方が違う事で、弾くようにするか、押し続けるか、の違いで、実際に腕を移動するほうに伸ばして腕は動かさず、上記の動作だけで物をおすと体が勝手に反応して、吐く息によって力の伝わり方が違うのが分かるのだ。
足や息などは人によってどの程度動かすのかが違い、自分で楽に力が出るタイミングを見つけて、また動きもご自分で柔軟に考えて少しづつ変える方がいい。慣れれば体重移動がなくても息の使い方で、かなり力強く押せるようになるのだ。
「はぁはぁ・・・マジで体力無いなぁ」
基礎練習は常日頃行っていてもあまり疲れなかったのだが、いかんせん練習すらもやたら疲れてしまった。う~む、毎日軽くジョギングでもやってしまおうか?
「今何やっていたの?美仁香ちゃん」
「!!?」
今の練習を見ていたのか母親はキョトンとしていた。それはそうだろう見た事も無い踊りみたいなものを目撃してしまったからな。
「え、えっと、準備運動?いや、体操・・・です」
当たらずといえども遠からずの答えを言い、母親はイマイチ納得していなかったらしい。
「あ、そうなの。程々にね~」
「わ、分かりました」
いや違っていた。あんまり興味が無かったらしい。まぁ、それはそれでいいんだけどね。
しばらく大の字で横になり疲れを癒していると、玄関先から兄妹の声が聞こえたのだ。
「「ただいまー」」
どうやら約束を果たしたのか兄妹は同時に帰って来たのだが・・・この家に門限とかあるのだろうか?まぁ、俺は早く家に帰るから門限は必要無いのだがな。
「み、美仁香っ、まだずっとあの調子なの??」
「それとも、元に戻った?」
二人の期待には応えられないが、まだこの調子なんだよ。治らないかもしれないし、治るかもしれないしな。
「ご、ごめんっ。まだなんだ・・・」
「そ、そうなんだ・・・」
「なんか・・・ごめん」
二人は若干気を落としていた。それもその筈、自分の妹が訳の分からない病魔に蝕まれていたらそれはそれは心配するだろう。俺もどうしていいか分からない。
「ほら、あなた達帰ったら手を洗いなさいって♪うふふ」
母親は常にご機嫌がいい。そんな母親の機嫌に疑問が浮いたのか西園寺透は口を開き
「な、なんで母さんはそんなにご機嫌なんだ?」
「だってー♪私の子が賢いもーん♪うふふっ」
「へ、へぇ・・・それは良かったね」
西園寺家の主婦は飲み込みが早いようで、我が子の異常を逆に楽しんでいた。はぁ、こいつくらいなものだろう俺という存在を即座に受け入れ楽しんでいるやつは・・・。
「もうそろそろ夕飯だから、手伝ってね♪美仁香ちゃん」
「はいはい」
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飯を食べ終わり、また一宿一飯のお返しという事で皿洗いもさせてくれと母親に伝えると・・・
「ううっ!!本当に優しい子っ!」
感動のあまりに泣いてしまう母親。が、俺の背ではキッチンには手が届かない。そういえば俺は小学一年だったなぁ・・・
ちなみに小学一年の平均身長は112センチ程らしいので俺の身長も似たり寄ったりの数値の事だろう。うーむ、急に背が低くなったから全然対応とかが遅れてしまう。
「だ、台とかありませんか?と、届かないので・・・」
「うふふふふっ。届かないの~?仕方ないな~」
母親はサド気味な顔で俺の事をおちょくっていた。絶対ぐれるぞ俺・・・
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皿洗いも済ませ、母親から感謝の気持ちとして俺を軽々しく持ち上げ、俗に言う高い高いを俺にしたのだ。
「ほーら、たかいたかーい」
「や、ややや、止めてくださぁい!」
母親はまたも嫌な笑顔で俺を面白おかしく弄び、もう満足なのか俺を降ろし、ようやく解放。
「そろそろお風呂に入ろっか、美仁香ちゃん」
「は?」
更なる事件が発生。そう、風呂だ。いくら子供の身体とはいえ女の子だ。裸にならなければならない。とはいっても、風呂に入らないのはイヤだ。
「じゃあ、着替えをください。一人で入りますから」
「へっ?何言っているの?危ないじゃない。私も入るのよ」
またもや異常事態。小学一年の子供を一人では入らせたら非常に危険という社会的ルールにのっとり母親も入ると言ってきやがった。ま、マジでか?
「た、多分大丈夫ですよ。だって、僕は中学生で・・・」
「ううん、あなたは誰にとっても小学生の子供なのよ。しかも女の子だからどこかに身体をぶつけて傷がついたらダメでしょ?」
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「美仁香ちゃ~ん、痒いとこはありませんか~?」
俺は非常に困っている。母親に無理やり服を脱がせられ、無理やり風呂場へと直行して俺の頭をシャンプーをつけてわしゃわしゃと髪を洗ってくるのだ。
更に、当然のように母親は全裸。目のやり場に非常に困るのだが・・・羨ましいと思っているやつがいるかもしれないが、マジで屈辱なんだぞ?切ないんだよ・・・
「あ、あとは自分でやりますんで・・・」
「ダメダメ~♪うふふふふっ」
母親に振り回され、主導権は母親のもの。俺にいつ主導権が来るのか・・・それは神のみぞ知る。
「次はぁ~、身体ね~♪」
「うわぁぁぁっ」
こうして俺は母親に弄ばれ、風呂から出たら母親の顔はつやつやだった事を、知らないフリをしてふてくされてやったのであったーー。
作中にあった八極拳の練習方法は個人差で効果が違いますが、パンチのスピードがめっちゃ速くなりますので、お試しにどうぞ。