第3話 お出かけ
美仁香が住んでいる県を長崎県という設定を無くしました。
物語はそう変わりはありませんので、心配ご無用。
「あら美仁香ちゃん、おはよ~。今日はママと一緒に散歩できて嬉しい~?」
「うっ、うん」
只今、俺は絶賛拷問中である。
母親と出掛けている所を近所のおばちゃん達が発見し、俺の周りに集まりアメやらスナック菓子とかを俺に与えてくれるのだ。
まぁ、それはいいよ?でもさぁ・・・
「あ、ありがとっ」
「あら~、ちゃんとお礼ができるのね~えらいえらい」
俺の事をえらい子供扱いしてくるのだ。まぁ、見た目は小学一年の子供だからそういう扱いするのは当たり前かもしれないけどさ・・・
ようやく、近所のおばちゃん達に解放され散歩の続きを始めるが、母親はさっきの俺の態度の事でニヤニヤしているのを目撃。クソ腹立つな。
「あれれー?どうしちゃったのかなぁー?まさか、元の美仁香ちゃんに戻ったのかなぁー?アメ食べるー?うふふ♪」
「・・・後々、めんどくさそうな事が起こりそうだったのであんな風な態度をとりましたが・・・」
「えー?何でぇー?何でかなー?うふふ」
「いい加減にしてくださいよ!恥ずかしかったんですからぁ!」
「あらあら、ダメだよ~女の子がそんな大声を出したらっ。めっ、でしょ?うふふふふっ」
この人完全に俺の事をおちょくっている・・・もしかしなくてもこの人はサドだな。
俺はキョロキョロと周りを見渡し地理を覚える事に専念する事にしたのだが、いかんせん知らない土地だった訳でかなり心細くなってしまった。が、この世界もファンタジーだとか科学が発展して空飛ぶ車だとか猫型ロボットと名乗る狸みたいなロボもいる訳もないし、変な化け物だとか幽霊や妖怪的な存在も見当たらない事を俺は心の底から安心した。
だってさ、小説や漫画の主人公みたいにビビリながらもその存在に対抗するなんて事は不可能なんだよ。八極拳が使えるとしても化け物に効かなきゃ意味無いし、それに俺の身体は小学生だから力も半減してしまう。
あ、そうそう、言い忘れていたが、俺の顔とか身体のスタイルを目にしていない。たくさんの小説や漫画の主人公は女体化した瞬間、すぐに身体の異常を察知して鏡を見る方法やら身体を触って女であることを確認している作品も多いのだが、こんな風に異常事態が起きても何らかの異常で頭を混乱状態してしまっては自分が女になっているなんてそうそう気づくはずもないのだ。
それに声も何回か出したのだが、自分の声が大きく変わったとしても風邪か何かの病気だと自己完結する筈だし、あまり気にしないのではないだろうか?うーむ、謎が謎を呼ぶ・・・。
「美仁香ちゃん、あそこが明日から通う小学校よ」
「そ、そうですか」
「で、あそこが公園。あ、ブランコに乗りたい?乗ってもいいわよ~うふふ」
「・・・遠慮しておきます・・・」
俺は近所の地理を把握した。どうやらここは日本のどこからしい。まぁ、日本語だし分かってたけどね。
ところで、ここは何県なんだ?そんな疑問を母親に尋ねると・・・
「XXX県よ。あ、そうだ、方言とか分かる?私達の家族は全員標準語で話すから大丈夫だけど・・・」
「え?ま、まぁ・・・方言は使わないんすけど、多少分かる程度です」
俺の実の父親が生まれも育ちもXXX県だったのでたまに方言っぽい言葉を喋ってきたので俺はちょいちょい方言の意味を聞いていたので割と大丈夫という訳だ。意味を聞いただけで方言は使わなかったがな。
「そっか~、でも安心して。近所の子達にも少し喋る機会があってね、その子達も方言は使わないから。まぁ、その子達もまだ小学生だから方言とか分からないかもしれないけど・・・」
「はぁ・・・でも、成長してだんだん方言とか使ってくる事もありますよね?まぁ、僕も多少分かるので困りはしないのですが」
「そうよねっ♪だって、私の子だも~ん」
「・・・はぁ・・・」
娘想いの母親は俺の顔を見てご機嫌がよろしい。傍から見たら仲の良い親子で微笑ましい光景だろう。会話の内容を聞いていたら・・・驚くだろうね。賢すぎて親に敬語を使う小学生だもんな。
ーーーーーー
散歩も程よくこなし、ある程度は土地鑑は覚えた。後数回散歩をこなしたら大体大丈夫な域に達していたので安心した。
「あ、ちょうど昼食の時間ね。ファミレスに行きましょうか」
「あ、はい。何だかお腹が空きました」
近くのファミレスへと母親と一緒に入店。でも、知らない人に奢らせるのは少しばかり遠慮してしまう。いくら俺が西園寺美仁香という存在でもその母親と食事をとるのは釈然としない。俺の言いたい事は分かるだろう?
「禁煙席お願いします」
「かしこまりました。奥の方へどうぞ」
店員に案内してもらい四人テーブル席へと着席し、早速メニューを母親を見るのだが・・・俺も頼んでいいものだろうか?
「どうしたの?美仁香ちゃん。どれでも好きなの頼んでいいわよ?あ、お子様ランチでも頼んじゃおうかしら~」
「あ、あの・・・いいんですか?頼んでも」
「それはそうでしょう、というか頼んで頂戴。私だけ食べてたら他のお客さんとか店員さんに誤解させられちゃうから。娘をいじめる母親、みたいにね」
この母親の発言は尤もだ。それはそうだろう、小さい子供に見せびらかすように母親らしき人物が食べていたら俺だって誤解してしまうだろう。俺はめぐりにめぐって西園寺美仁香という存在なのだからこの母親に甘えてもいいだろう。
「で、では、日替わり定食を・・・」
「あ、私もそれで。すみませーん」
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俺達が食事をしている時に近所のおばちゃんの家族に遭遇。小さい子供を連れてバッチリと出会ってしまったのだ。おばちゃんと母親は会話をするのに夢中で俺達をほっといていたので小さい子供との二人の奇妙な空間を作り出したのであった。
「こ、こんにちわっ」
小さな子供は少年。見た目的にも小学生ぐらいで多分明日から一緒に通う事になるだろう存在。というか、誰だ?こいつは・・・とりあえず自己紹介だな。
「西園寺美仁香。よろしく」
「・・・」
こいつ感じ悪いな
。俺は少年と目を合わすのだが、少年は怖いのかおばちゃんにすがりよって助けを求めていたのだ。はぁ、人見知りなのかな。
「あらあら、どうしたの有ちゃーん」
「お、おばあちゃんっ」
まるで俺がいじめている扱いじゃないか。俺にはいじめる理由も目的も無いのだが・・・
「えーと、お名前は何かな?ボク」
「・・・」
母親も少年の存在に興味を持ったのか名前を聞くが、やはり人見知りなのかおばちゃんの影に隠れてしまう。
「もう、この子ったら。明日から小学生なのに」
「え、そうなんですか?うちの子もですよ」
「そうなんだぁ。君、お名前は何かな~?」
おばちゃんは俺の目と合わせニコニコとした笑顔で俺の名を求めているので、仕方なく名乗ってやることにしたのだ。
「西園寺美仁香です。明日から小学生になりますので、今後ともよろしくお願いします」
「・・・・・・」
俺は名乗ってこれからお世話になるだろうから一言付け加えさせたが、まずかった。とても小学生が言える内容では無かったのだ。もう、後戻りはできない。
「あ、あ~。そ、そうなんだ。美仁香ちゃんって言うのね。よろしくねっ」
おばちゃんは何かを気づいているようで気づかないフリをする為なのかアタフタと慌てていた。やはり、すごく大変な騒ぎになるのな。たかが敬語とかちょっと丁寧な言葉を使うだけでもこんな風になるのだから、素の俺の態度を見てたらとんでもない事になってしまうかもしれない。
だってさ、おばちゃんの噂話はやたら早く近所中に回るから俺の事なんてすぐに広まるだろう?どこのおばちゃんでも情報網がやたらと・・・はぁ、そっとしておこう。
「この子は見ての通り少し人見知りなんだけど・・・私から言っておくわね。この子の名前が九重有君。よろしくね」
「・・・ぅ、よ、よろ・・・しく」
少年の名前は九重有という事が判明し、おばちゃんの苗字も九重ということが分かったのだが・・・九重という苗字カッコいいな~。
「じゃ、私達はこの辺で。これからもよろしくね西園寺さん」
「ええ。九重さん、また後程」
俺達は別れ、それぞれ目的地へと消えていくのであったーーー。
ーーーーーー
家に帰る途中、スーパーにも通い母親の買い物の手伝いをしていると・・・
「あらっ、美仁香ちゃんえらいわ~お手伝いしてる~」
またまた近所のおばちゃん登場。このおばちゃんは九重さんではなく違う人物だ。このおばちゃんの苗字は・・・
「そうなのよ~、一文字さん」
一文字おばちゃん。この人の娘も明日から小学生だという事を聞き、更に驚く俺。こんなに都合よく、ほいほいこれからお世話になるであろう人々と出会ってしまったのだ。う~む、これは運命なのか?
「欲しい物でも買ってもらいなさい。こんなにえらいんだから~」
「う、うん・・・」
一文字おばちゃんは俺の頭を撫でまわしてニコニコと笑顔を見せ、俺は何とか笑顔を作り一文字おばちゃんに感謝の意として送ったのだ。はぁ、女になりたいとは思ったもののこんな筈じゃなかったのに・・・
「ばいばーい」
「ば、ばいばい」
一文字おばちゃんと別れを告げた後、母親はまたも邪を感じさせる笑顔をニヤニヤ。いやニタニタと表現した方がいいだろう。ともかく嫌な笑顔だ。
「欲しい物でもあるのかな~?お菓子?おもちゃ?」
「・・・夕食のおかずとか、明日の分のおかずでいいです・・・」
「はーい♪うふふふふっ」
こうしてサドな母親と仲良く買い物を済ませていたのであったーーー。