第31話 スカートに慣れよう
文化祭が終了して翌日の休日。
俺達西園寺三兄妹は、母親の言いつけにより仲良くデパートやら洋服屋とかに行けという命令により、商店街の街へ歩を進めているのだ。
何故急に、このようなイベントを仕向けてくるのかは、俺と兄妹との仲をより深めたいという母親の希望で、俺達三兄妹はそんな我が子を想っての案を断る訳にもいかなくて、結局賛成というしか無かったのだ。
「な、何買う?麗香?美仁香?」
手に入りやすくて着回しの効くベージュ色のチノパンをベースに、ダンガリーシャツを合わせたワーク系の簡単な着こなしを衣装にしたイケメンっぽい透が俺達に質問していく。
「え?べ、別に・・・あ、映画とかは?」
薄いピンク色のシャツでスカートは膝上10センチ程の短いスカート。髪型は姫カットで、どこかのお嬢様と思わせる麗香は案を出していく。
「え、映画?どういう映画があるのか知らないんだけど・・・」
ジーパンにパーカーを着こなし、三つ編み姿の俺は麗香の情報を聞いてみる事にした。
「へ?え、えっとぉ~・・・何だっけ?」
麗香は首を傾げ、可愛らしく微笑む。
「さっきな。母さんからメール来たんだけど、美仁香の可愛らしい服を買えってさ。スカートとか、ワンピースとかってさ」
透は黒色のスマートフォンを持ち、眉を顰めて画面を睨む。透は中学卒業したら父親から黒色のスマートフォンを買って貰ったらしい。
「え?!そ、そんなの買っても恥ずかしくて着れないよっ!」
俺は透に抗議。だが、そんな抗議を透に言っても仕方がないと思うのだが、でもとりあえずは発言。
「あ、あのねぇ・・・中学になったらイヤでもスカートを穿かないといけないのよ?」
「な、なんでさぁ!」
麗香の言っている事が分からなかった。いいや、分かりたくなかったと言っていいだろう。何故、俺が中学生になったら強制的にスカートを穿かないといけないのだろうかと。そう、それは
「バカねぇ・・・美仁香は女の子でしょ?だから中学生になったら制服として穿かないといけないのっ」
「うっ!!せ、セクハラだ!学校側のセクハラだ!誰かの陰謀だ!」
俺が女という事実は変わらないのだ。戸籍を男に変えたり、性転換手術を行ったりしない限りずっとだ。
「だから今のうちに慣れようよ。そんなに短くしないから。ね?学校の規則は少しだけキツいからスカートの丈は膝に当たるくらいだよ。それぐらい、いいでしょ?」
「うっ!で、でも、それでもスカートはスカート!恥ずかしいんだ!」
俺は必死に抗議。抗議するしかないんだ。でも、麗香は
「なんで恥ずかしいのかな?分かる?透」
首を傾げ、キョトンとした表情で透に質問する。
「そ、それは・・・アレだろ?美仁香。なんだか、女装しているみたいで恥ずかしいとかそんなんか?」
「そ、そうだよぉ!ず、ズボンの制服がある学校に行きたいっ!それならなんでもいいっ」
透は俺の気持ちをよく分かっていらっしゃる。同じ男の子?として当然だ。
「えぇ~・・・そんな学校あったけなぁ。都会にありそうだけど、引越しとかしなきゃダメでしょ。そんなのお母さんが許してくれなさそうだよ?」
麗香の発言は尤もだ。たかだか一人の娘のワガママで家族はこの地域から出なければならない。そんな事は俺だってイヤだ。
この地域には、九重有や一文字ことみ。宮川綾にクラスメイト達。それに警官の大原さんや菜々子さんについでに安藤さん。そして、最も大好きな存在である爺さんがいるのだ。そんな人達とは絶対に別れたくないのだ。
「い、イヤだっ!引越しとかっ!うぅぅっ。ふぇぇぇっ」
俺は涙腺が爆発し、涙が出るわ出るわ・・・前はこんなに泣き虫ではなかったのに、今は女だからなのか泣いてしまう。ドラマで女優がよく泣くシーンがあるのだが、その涙腺が弱いからあんなに泣けるだろう。よく言うだろ?涙は女の武器だってな。
「わわっ。泣かないのーっ!ご、ごめんねっ?よしよしっ。絶対に引越しとかしないからっ。ていうか、させないからっ!ね?透」
麗香は俺をあやす為なのか、頭を撫でている。
「おう。もし、そんな事が起きたら爺ちゃん連れてきて、力づくでも阻止してやるさ」
「ちょっ!他力本願?!男らしくないね!」
「お、おまっ。今は美仁香をあやすのに必死に考えてたのに!」
「それが全力?!ありえないんだけど・・・あーっ!そ、それより、本当に引越ししないからっ!ね?」
麗香達は漫談して、ようやく俺の存在を思い出したようだ。その忘れられた俺は両手で涙を拭き、俺より身長が高い麗香と透を見る為、見上げる。
「ほ、ホントぉ?」
俺の目は赤く涙をウルウルとして麗香達を上目遣いのように見つめる。すると
「はぅ?!!」
「!!!」
麗香は俺を見て頬に朱を染めて自分の世界にトリップ。透も顔を真っ赤にさせ、そっぽを向いてしまう。
「れ、麗香?と、透?」
俺は二人の訳の分からないリアクションに首を傾げる。な、なんだというのだ?この兄妹は・・・
「・・・はっ!そうだっ、あの店に寄ってみよう?かわいい洋服があるからっ」
「おっ、おう!お、俺は荷物運びでいいわっ。あの店は女物しかないからなっ」
兄妹は自分の世界から脱出し、近くのドーナッツ専門店へと足を運ぶのだが、そんな所に服なんてあるのか?
「こ、こここ、これっ。似合うかなっ」
麗香はそのドーナッツ専門店の代名詞といえるドーナッツであるポン・デ・リングというシンプルの味ながらモチモチとした食感が老若男女に大人気の商品を指差し、透に聞いているが、似合うとかどういう意味だろうか。
「う、うんっ。シンプルでいいんじゃないか?こう・・・もちもちとした食感とかが・・・ってあれ?」
透はようやく混乱が解けたのか、ハッと気づく。もしかして、自分は焦ってはいないのかという事を。
「あっ。わ、私、何かおかしな事言わなかった?」
麗香もようやく混乱が解けたようだ。そんな兄妹は周りを見渡して客人達がクスクス笑っているのを見て、恥ずかしい思いをしたのか顔を赤らめてその場から逃げてしまったのだ。
「ま、待てぇ~っ」
兄妹がいきなり走っていったので、俺も三つ編みを揺らしながら兄妹のもとへと走っていくのであった。
ーーーーーーーーーー
「はぁ~・・・恥ずかしい思いしたっ。もうっ!美仁香のせいだっ」
兄妹は興奮のほとぼりが冷めて、近くの洋服専門店へと駆け寄り、入店。早速、麗香は文句を言うのだが、人のせいはいかんぞ?
「はぁ・・・とりあえず、服選べ。俺も見てやるからさ」
長男である透は俺達に指示して、あちらこちら店内を見渡し、麗香は早々と衣類を手に取っているのだ。
「はい、試着して。あ、あとコレとコレと・・・あっ、コレもだっ」
麗香は次々と俺の手にスカートやTシャツ等を渡すのだが・・・数は6~7着以上はあるぞ?まさかコレ全てを試着するというのか?
「まずはキュロットスカートで慣れようか」
「きゅ・・・なんて?」
初めて聞く単語なので首を傾げる俺。
「キュロットスカートね。股下があって、半ズボンと同様の構造をした女性用の衣類でね?本当の半ズボンと違って、裾に向かって広がって、ゆったりとした作りの為にね?一見スカートに見える訳よ。前から見ると巻きスカートのように見える覆い布があって、後ろから見ると半ズボンのようなスタイルのキュロットスカートをラップキュロットというんだ~」
「は、はぁ・・・」
つまりはスカートのようなズボンだな?とりあえず、それを着る為に試着室に入るのだが・・・
「待って。パーカーは脱ぎなさい。シャツはコレを着て。あと、髪は下ろしてよね」
次々と注文が多いな麗香よ。仕方なくパーカーも脱ぎ、麗香からフリフリのフリルの白いシャツや赤色のキュロットスカートを受け取り、試着室へと入り、とりあえずは三つ編みを解く。
「うぅっ。やっぱうっとうしい・・・」
髪がふぁさっ、と自分に纏わりつくので多少イラつく。はぁ、いつこの長い髪から脱出出来るのだろうか?それは神のみぞ知る。
「んしょ・・・んしょ・・・」
俺の口から可愛らしい声が出てしまう。何故だろう、余計に女の子らしくなってしまったような気がしてたまらない。
「終わったよ~」
俺はのほほんとした声で着替えたという報告を兄妹に言う。その報告を聞いた兄妹は試着室のドアを開き、俺の姿を見る。
「「・・・」」
二人は無言で俺を見つめるが、やはり似合わないのか?まぁ、それはそれでいいのだがな。
「か、かわいいっ!わ、私より似合ってるかもっ!ねっ?透」
「お、おぅ。さすがは俺達の妹だな。どこかのアイドルみたいだ・・・なんだっけ?あの人数がバカみたいに多いグループのアイドルの名前・・・とにかく、似合ってるよ?美仁香」
兄妹からベタ褒めだ。その褒められた俺は恥ずかしくて、顔を赤らめてしまい
「あぅ」
無意識に変な声を出してしまった。それもそうだろう、兄妹から可愛いだのアイドルみたいだのと言われたら恥ずかしいに決まっているからだ。
「み、美仁香は本当に心が男の子なのかな?今度さ、お父さんと一緒に相談してみない?透」
「う、うん。とりあえず、明日の朝相談してみようか。俺も混乱してきたよ」
そんな兄妹の話を俺は未だに恥ずかしそうに顔を赤らめていた聞けずにいたのであったーーー。
「あぅ」




