第1話 異変
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ぽつん。ぽつん。ザァァァ!!!
どこからか激しい雨音がする。
ーーーXX!!
どこからか俺の名を言っているやつがいる。誰だ?そしてここはどこだ?
ーーーひっく、ひっく、ぅぇぇん!
どこからか誰かが泣いている声が聞こえる。複数の人間の泣いている声が聞こえる。
俺は?一体どうしたんだ?えーと、今日は月曜日で金曜日までは学校だった筈だ。ああ、そいえばジャンプ見てないなぁ、あ、そいえば先週は合併号だったっけ?今週は出ないからコンビニ寄らなくていいや。
あれ?ここは夢かな?何も見えない。何も感じない。重力さえも。ああ、絶対夢だ。よし、あの方法を使おう。怖い夢でも楽しい夢でも脱出できる方法。それは、夢の中で寝ることだ。まぁ、だいたい目をつむれば現実に帰れる。ただ弱点は夢の世界に入った時に自分自身が夢だと自覚した場合にしか発動しないので、夢の世界で夢を見ている夢を無自覚で見ても現実には帰れない。
でも、俺は自覚した。
パチ、目を閉じた。夢の世界で二~三秒ぐらい目を瞑れば大体夢の世界で寝たことになるからな。一、二、三、四・・・あれ?現実に戻れない?いつもこれで脱出できるけどなぁ。
ーーXX!!
あれ?また俺の名前が聞こえる。少し怖くなってきたな。後十秒ぐらい目を瞑ろう。
パチ、目を閉じた。そして時が過ぎて二十秒もの時間が過ぎたような気がした。
あれ?この夢は時間という概念が無いというのか?ならば・・・ビームをだそう。
「おぎゃーーーー!おぎゃーー!」
ビームを出そうとしたら赤ん坊の泣き声が聞こえた。でも、世界は真っ暗。
しかし、声がはっきりと聞こえたかもしれない。
「よしよしいい子ねぇ!」
今度は女性らしき声が聞こえた。その時、俺自身に何らかの重力が働き浮いたように感じた。
「お前ら・・・妹ができたぞ!だから・・・お前らは今日からお兄ちゃんにお姉ちゃんだ!」
今度は男性らしき声が聞こえた。ああ、生命の誕生の夢か。
「お前は西園寺美仁香だ!」
男性の声は俺に語っているかのように言った。そうか、新しい家族ができたのか。いいね、そういう話。
「美仁香・・・ふふっ、私達の妹!」
「おぎゃーっ!!」
ぷつり。急に俺の意識は消えた。
ーーーーーー
「・・・ん???」
俺は目を覚ました。俺の目の先には見慣れない天井。どうやら俺はどこかで寝ていたらしい。
とりあえず、俺に掛けられた布団を蹴飛ばし身体を起き上がらせ周囲を確認すると・・・
「「すぅ・・・すぅ・・・」」
見慣れない若い二人組の夫婦関係らしき男女。誰だ?こいつ等?ああ、どうやら相当俺は寝ぼけているらしい。多分、俺の両親を寝ぼけて他人に見えているらしい。でも、小学四年辺りから両親とは一緒に寝ていない筈なんだが・・・
ふ、と自分の服装に異常を察知。ピンク一色のパジャマだ。こんなパジャマは見たことも着たこともないのにそれが身に纏っていたのだ。やばい、これは異常だ。
顔を洗いに洗面所に行こうとし、部屋のドアを開け廊下らしき場所へと足を運んだのだが・・・
「????」
見たことの無い間取りに一層驚く俺。俺の頭の中は?しか思い浮かばない。はぁ、とりあえず探検するか・・・
この家の全体図を確認するが、本当に知らない場所しか無い。俺の実家は二階建ての1LDKの家だった筈なのだが、この家は三階建ての1LDKの家らしいのだ。
「????????????」
部屋の中を見るのは少し怖いので見なかったが、俺の背より高すぎるキッチンにも驚愕してこの部屋頼んだのアホじゃね?と思えるほどの高さなのだ。俺の身長は160cmくらいだが、キッチンの高さは俺の背の約二倍ものの高さだったのだ。どうやって料理するんだ?アホ主婦・・・わざわざ台とか用意してに上って料理を?ますますアホだ。
「あーら、美仁香ちゃん。早起きね~」
「!!?」
先ほど一緒に寝ていた若い女性が現れ、ニコニコした顔で俺の元へと近寄ってくる。ってか、美仁香って誰よ?つーか、身長高っ!俺よりもずっとずっと高いぞ!?二メートル以上はあるんじゃねぇの?!
「ど、どなたですかー!!?」
俺は咄嗟に八極拳の構えをし、いつでも箭疾歩が発動できるようにしたのだが、女性はキョトンとしていた。ま、まさか・・・俺を誘拐か?!!
「あ、あなたの欲求は何ですかぁ?!」
「へ!?な、何言ってるの?!あ、そっかぁ~。ごっこ遊びね。母さんは何したらいいのかな?」
女性は遊びだと言った事に更なる疑問が生じる。俺を誘拐して俺の反応を面白がっているのか?しかし、何故一緒に寝ていたのだろう、でも・・・ええい!やつが犯人という事しか知らん!
「身代金が目当てだとしたら、いくらすか?億は無理ですよ?」
「よ、よくそんな言葉知ってるわね~。テレビの見過ぎよ~?美仁香ちゃん」
こいつ、ぬかしよる!女性に手を出すのは俺の武士道に反するが俺の命が掛かっている為、八極拳の構えを女性に向ける。
「おーい、母さん。ってあれ?美仁香?何してんだ?その構え何だ?」
すると俺と一緒に寝ていた夫婦関係らしき男性も現れ、こいつも背が異常に高い。俺は窮地に立った。マジでやばいかも。
「あのね、美仁香ちゃんはごっこ遊びで私も巻き込んでいるけど・・・何が何だか・・・」
「うーん、美仁香ー。何の遊びしてるんだ?」
「あ、遊び!?」
男性も遊びという単語を言ってきやがった!こいつら、マジでイカれてやがる!もう手加減出来ねえ!
俺は 箭疾歩を男性に向かって発動させる事にしたのだ。
「すぅ、はぁ・・・」
俺は息を整え、そんな俺を見た二人は何事か?とキョトンとしていた。よし、隙が出たぞ。
「箭疾歩ぉぉ!」
「うおっ!?な、なな、な?」
俺は内心焦りすぎてバランスを崩したのか、男性への攻撃は届かず、俺と男性の位置は丁度真正面。
く、くそっ!落ち着け!こんな時はあの技だろ!
「梱鎖歩ぉ!」
梱鎖歩。超接近戦時に自らの足を相手の足に添え、外や内から押すことで相手のバランスを崩す足技の事である!
「う、うわっ!?」
男性はよろめいた。よし、今だ!
「双憧掌!」
双憧掌。両腕を揃え胸に打つ掌による攻撃の事である!
「うわぁ!?いてっ!」
男性はバランスを崩し更に追い討ちを喰らったのでぶっ飛んで尻餅をつく。流石だな八極拳。
「早く帰らせてくれないかな?」
「ち、ちょっと、ちょっと待って!美仁香ちゃん、お父さんに何て事するの!!それにあなたのお家はここよ!!!いい加減にして!!!!」
女性は家中に響く程大きな声を出し、俺は危険を感じ間合いを遠ざけ、構えをとく。
「へ?や、だから・・・」
「おい、美仁香。いや、お前は何だ?」
「ち、ちょっと、あなた!」
急に男性が眉間にしわを寄せ俺に質問してくる。いや、お前達が一体何者なんだ?
「や、あなた達はどなたですか?誘拐犯にしてはヒド過ぎますが」
「へ!!?み、美仁香ちゃん!?そ、それってどういう事なの!?ねぇ!!?」
「母さん!!落ち着け!」
男性は女性をリラックスさせ俺はただただそれを見守るしか無かったのだ。
「ど、どした?」「な、何があったの?」
またまた登場人物が登場。これもまた男女の組み合わせだ。見た目は学生だと分かるのだが、この大人っぽい夫婦よりは背がふた周りほど低いがそれでも尚俺より背が高いのだ。
若い女性は男性の頼みで今さっき来たやつを無理やり外へ連れ出し、今は男性と2人っきりだ。
「・・・質問だ。正直に答えてくれ。頼むから・・・な?」
「は、はい」
「今さっき来たやつも含め、この場にいる知っているやつは何人いた?」
「い、いませんが・・・」
「・・・今、何歳だ?正直に」
「ええと、再来週あたりから十四歳になります。中学二年生です」
「・・・分かった、信じないって訳じゃないが念の為、数学の問題出していいか?とりあえず中学一年生レベルで」
「え、ええ。」
男性は奥の部屋へ消え、数分後教科書を持ち更にこの家主である家族全員俺の元へ集まったのだ。
「む、無理じゃないの?だって美仁香は・・・」
「そ、そうだよ。算数だって無理な筈・・・」
さっき出くわした学生っぽい男女の組み合わせに何か俺に不満があるのかヤジを飛ばす。
「よし、早速ーーこれだ。答えは?」
男性は教科書の問題を指差し、俺に答えを求めてきたので答えるのだが・・・いくらなんでも簡単なものだな。
「これです」
「・・・次、これ」
二十問程簡単すぎる問題を次々と解いていき、四人の顔が一気に青ざめていった。
「全問正解。でも、どうして・・・」
「え?え?な、何で?ど、どうして?」
四人はお互いの顔を見つめ合い、そして俺をまるで信じれない物を見てしまっているように驚愕した顔を見せていたのだ。
「あの・・・僕、もう帰りたいんすけど・・・」
一人称は親友同士とか家族では「俺」だが、目上の人とか知らない人には「僕」だ。しかし、俺が僕と言った瞬間、更に顔を青ざめていく四人。
「多分、こいつ美仁香だけど美仁香じゃないな。これは・・・多重人格・・・かな?」
「「「多重人格!!?」」」
多重人格とは一つの身体にいくつかの人格を持つ事であり、ちゃんとした病気の一種。ちゃんとした病名があるのだが、気になる方はネットでググってみよう。
閑話休題。
俺が多重人格だと?そんな訳が無い。そもそもこれまで他の人格とか見受けられなかったのに、急に人格が増えるものだろうか?
「え!?じゃ、病院に!」
「ダメだ。美仁香自身の人格が消えかねない」
男性の言い分では俺という人格が美仁香という人物の人格を乗っ取ってそのまま美仁香として生きかねないからだそうだ。てか、その美仁香とやらの人格は俺には感じないのだが・・・
「とりあえず、今は様子を見よう。何か異常を見せたなら即、病院に行かせるから安心しろ。みんなもいいな?」
「「「う、うん」」」
家族は一致団結。が、俺は釈然としない俺のみが取り残されたままキョトンとするしかなかったのであったーー。
作中にあった夢を脱出する方法なんですが、個人差で夢を脱出できたり出来なかったりします。