人間流れ星
「う~ん・・・いないなぁ~・・どっちも」
あれから一週間が経った。 私は相変わらず流れ星を探すのに必死だ。
でも、もう一つの流れ星も探している。
「確かあの辺で会って・・・」
あの男の人だ。 いや、もう「人間流れ星」と言った方がいいのかもしれない。
毎晩、夜空を見上げるたび、人間流れ星にまた会えないかと思ってしまう。
「人間流れ星?!」
「・・そうだけど」
今日は玲美と図書館で勉強をした後、いつものカフェで雑談。
玲美にこの間のことを話した途端、玲美は爆笑しはじめた。
「えっ、そんなにおかしい話だったかな・・ってか、バカにするなっ!」
「いやっ・・話はおかしくないけど・・そ、その・・ネーミングセンスが・・・フッ」
爆笑しながら話す玲美を見て、私まで少し笑ってしまった。
「玲美おかしすぎるよ~!」
「いやいやっ・・真子の方が・・っ・・」
おなかをかかえて爆笑する玲美と、それを笑っている私。
・・・・なんか気持ち悪く見えて、私は笑えなくなった。
玲美も笑いが収まったのか、テーブルにあったコーヒを一口飲んだ。
「はぁ~・・面白かったぁ・・」
「れ、玲美、そんな爆笑する?」
「当たり前だよ! だって真子のネーミングセンスなさすぎだもん!」
「・・・・あ、そっち?」
笑いすぎて、一瞬だけ話の内容を忘れてしまった。
「で、その人間流れ星には最近会えました・・?」
「会えてない・・・ってか、会えてないから話したんじゃん!!!」
「あぁごめんごめん」
でも、心の中で会えないと思う自分がいた。
流れ星は、そんなに何回も現れない。
「あ、でもさ、もう1回会うかもよ?」
「何言ってんの玲美~・・・」
「真子、「流れ星」は2回見たんでしょ? じゃあ人間流れ星も2回会えるでしょ~」
「・・・・えっ、何その予想! めっちゃ子供~」
「・・・あんたに言われたくないね」
この時は、まだ軽い気持ちで思っていた。
―また会えたら、今度はどんな話をしよっかなぁ―
でも、その気持ちはいつしか変わっていく。
大学生活が始まった時から・・・・
大学の入学式を終えて、もう5日が経った。
今日は、初めての授業だ。 今まで休みだったので、少し緊張している。
「(なんていったって・・・玲美いないし)」
人見知りではないが、友達がいないと、なんだか不安だ。
大学の駐輪場に自転車を置き、少しうつむきながら私は歩いた。
空は雲一つもない快晴。 だが、風が強い。
手には、今日授業をする教室の資料を持っている。
「(はぁ~・・・頑張ろっと)」
心の中でそう思った私は、歩きながら深呼吸をした。
「(この大学広いんだよなぁ・・・)この道まっすぐいって・・・」
♪~~~~~♪~
カバンの中から、かすかに着信音が聞こえた。
私は、資料を持ちながら、不器用な手つきでカバンの中にある携帯を探した。
資料を持っていると、なんだか探しにくい。
その気持ちが私の手を動かしたのか、手から資料が離れてしまった。
資料が地面にバラバラと落ちた。
「あーっ・・・」
少しイライラしながらも、私は資料を一枚一枚とった。
「(最後の一枚・・・っ!!!!)」
少し遠いところにあった最後の一枚をとろうとした時だった。
風がふいて、紙がどこかに行ってしまった。
「・・・えぇーっ!」
もっと遠いところに行ってしまった紙をとりにいく私。 でも、とりにいく私の足はすぐに止まった。
「・・・これ君のー?」
私は言葉が出なかった。
あの身長、あの声、それに・・あのショルダーバッグ・・・。
その人は走ってこっちに向かってくる。
「これ、君のだよねー?」
嘘でしょ? 玲美の言った通り・・・
―流れ星だ―