魔王様
短いです。携帯で打つの大変ですね。
魔王様視点難しい。
何かが呼ぶ声が聞こえた。
その声は雲のように酷く柔らかで浮わついていて、そしてとても不安気で曖昧な印象を抱いた。
「ん…」
ぼんやりした意識が、覚醒する中で今度は先よりもはっきりと声が聞こえた。
「こんな所で寝ていたら風邪をひきますよ」
聞き覚えがないのに何故かすとんと耳に馴染むその声と、それが存外近くから聞こえたこと、そして躊躇い無く余の肩に触れる華奢な手に驚いて言葉が出てこなくなった。
気配には鋭い。夜這いをかける馬鹿な女や命を狙ってくる愚かしい者共に気を張り生活をしている。疎いはずがないのだ。
それを声をかけられるまで気付かないことなんて、あり得ないはずだった。しかし…
その手を見つめ、辿るように少女を観察する。
髪と目が、黒い。色の濃い者は内包する魔力が強いと言うのだが。
成程、確かに『匂い』が無い。ルドルフが拾った子どもはコレか。
大きな瞳を丸くする子どもは、余が地面に腰を下ろした状態でようやく目線が合う、それほど小さかった。子どもは外套をとった余を見て何を思うのか。
他者に、何の作為も無しに触れられたことはあれが初めてだった。が、しかし
阿呆な女と同じように容姿と権力に惑わされ、多くの臣下と同じように自らの保身の為に媚を売るのか。
血溜まりのように赤い不吉なこの瞳を見て、魔力に圧迫され、恐怖に震えるのだろうか。
ぐっと握りしめた拳を解き、外套をとる。
しかし子どもは変わらずに余を見つめ続けた。




