穏やかな今と
さくさく進みすぎてしっとりが迷子。ある人が登場しますよ
そういえば、ルドルフさんは何故か私を一目に晒そうとはせず、使用人でさえ会ったことがなかった。…まあ、遠目で見たことならあるけど。
あれは見事な金髪でした。私は髪の毛真っ黒だから羨ましい。
……コホン、まあつまり今回初めてルドルフさんとあの人拐い以外の人に会うわけだ。
気にならないと言ったら嘘になるな。一体どんな人なんだろう。
あれだけ用心して私のことを隠してたのに紹介するということは、その人のことをよっぽど信頼しているのだろう。
さくさくと屋敷に続く道を進んでいた時 、本当に、何故かはわからないんだけど、ふとなにかが気になって辺りを見回した。
「んー…?」
どこにも変わったところは無い。
自分で自分の行動に首をかしげながら再び進み始めようとした時、
「うぶっ」
強い風が吹き、私の長い髪が舞い上がって顔面に直撃した。
ああもう鬱陶しい。今度からは髪を結っておこうか…顔面に直撃した髪を耳にかけ、何気なく風の吹いた方向に顔を向けると
「あ」
いた、なんか木陰で気持ち良さそうに寝てる人が。
外套を被って顔を伺い知ることは出来ないが、体格からして恐らく男性だろう。
太い木の幹に体を預け微動だにしないその様子は死んでいるのではないかと疑いたくなる。
……本当に死んでるんじゃないんだろうか…?
…まさか、ね
「…………」
やばい、ちょっと心配になってきた。様子だけ見ようかな
足音を忍ばせながらそっと近付くが、先程と同じく身動き一つしないその様子から生存確認は出来なかった。
大体顔が見えないくらい深く外套を被っているから、息をしているのかもわからないのだ。
「…あの〜、すみませーん、生きてますか?」
「ん…」
お、反応した。良かったー。生きてた〜
「こんな所で寝ていると風をひきますよ」
先程のルドルフさんを真似たようにもう一度声をかけ、今度は軽く肩をたたく。
そうすると俯き加減だった頭を僅かに持ち上げて、その中から覗く瞳を何度も瞬かせた。
その様子に安心し肩に置いていた手を離し、男性に合わせ屈めていた体を伸ばした。
暫く、その肩に触れていた私の手を呆然としたように見つめていたが、自身が被っていた外套を取り去るとこちらを真っ直ぐと見返してきた。
あ
綺麗だ
そう思った。
真っ黒なその髪はしかし私とは違い首辺りまで隠れ、きっと枝分かれなんて無いのだろうと容易に想像がつく。それであるのに顔立ちは東洋人のそれのように幼く見られるものではなく、むしろ驚く程整端で、浮世離れしているとさえ感じるようだった。
「お前は……余が、恐ろしくないのか?」
私を見つめる、憂うように、寂しげに細められたその瞳は、純粋な緋色だった。
あれでしたね。もうルドルフさんがフラグ臭ちらつかせてましたもんね。




